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特集 小さな挑戦者たち−木更津社会館保育園−
「森・里山の保育−すがすがしい子供たち」
木更津社会館保育園園長 宮崎栄樹さん



子ども集団のリーダーたち


 NHK教育テレビ「里山保育が子供を変える」の冒頭の場面。小川に落ちたショックからなかなか抜け出せず、普段家族から受ける十分な介抱がないことで、すねて、いじける“コトミ”のシーンは世間にショックを与えたようです。何と杜撰(ずさん)で乱暴な保育か、と。
 ところが更に驚いたことに、保育士までもが、“コトミ”をきちんと介抱しない上に、彼女を仲間たちもちやほやしない。それ所か、みんながコトミをおいて先に行ってしまった。「どうしよう。泣こうか。追いかけようか」もはや泣く元気もわかない“コトミ”。追いかける気力もわかない。「先生は助けに来てくれるはずだけど…。先生に来られたら、自分は、赤ちゃんみたいだし。」と煩悶する“コトミ”。結果は…、友達の“シホ”が迎えに来てくれたのでした。2006年11月、NHK撮影班が撮影を開始した1日目の出来事でした。帰園した監督さんは、「まるでやらせの様な光景を今日撮影できた。信じられないことだ。「シホ」のような素晴らしい子どもがどのように育てられているのかとても知りたい」と仰っていたことを思い出します。
 里山の広大な余裕空間が私たちに、この様な、子どもの心を試し揺さぶるチャンスを与えてくれます。デパート、スーパーや動物園では、全くあり得ない繊細きわまりない心理劇を、あの幼い子どもたちがくぐり抜ける。じっくりと心と心とが繋がり合い、引き合い、時にずれたり、ねじれ合って、子どもたちの精神を成熟させてくれます。
 「すねる」という幼児性の残りカスを脱して人は少年になります。既に少年になっている“シホ”が、もう少しで幼児期を卒業する“コトミ”に語りかける、その呼吸の素晴らしさ。おもねらず、押しつけがましくなく、“コトミ”の自尊心を害することもなく、“コトミ”の心を動かす春風のような清々しさ。この子ども集団は、「シホ」のようなリーダーたちによって、支えられています。この集団性が、森の保育を可能にしています。大人が多すぎてはならない。子どもたちの精一杯の頑張りが吸い取られてしまう。が3名の大人だけでは、森の中の40名を超す幼児集団はたやすく分解します。




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