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お子さんが小柄である事が気になったら |
大阪大学小児科学教授 大薗恵一先生 |
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2.骨と成長 |
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骨は、通常そのままの形で大きくなるのではなくて、骨の端にある軟骨の部分で伸びて、それが骨に置き変わることで大きくなります。骨はX線撮影で白い影として写りますが、軟骨部分は写らず黒い線状に見えます(図1)。このことを、骨端線が開いていると表現し、子どもの骨X線像の特徴です。最終的には、骨端線の両側の骨が癒合し骨端線がみえなくなりますが、これを骨端線が閉鎖すると表現します。骨端線の閉鎖は、骨の成熟がおとなのレベルに達し身長の伸びが止まることを意味します。すなわち、おとなでは骨端線は閉じており、もう成長することはありません。骨端線閉鎖のメカニズムは、まだ完全に理解されていませんが、女性ホルモンが重要であると考えられています。
骨端線は、成長軟骨帯(成長板)と呼ばれる成長期特有の軟骨組織に相当します。ここで軟骨内骨化と呼ばれる軟骨が骨に置き換わる現象(骨化)がおこり、骨は長軸方向に伸びていきます。これに対して、横軸方向の伸長すなわち太くなることは、骨の一番外側にある骨膜が骨をより外に作っていく事でおこります。
成長軟骨が骨に置き換わる割合は年齢により異なり、これを骨の成熟度とよび、骨年齢として判定されます。すなわち、骨年齢は、軟骨の骨化がおこり骨X線像で骨として識別できるようになるパターンが年齢により一定していることを利用しています。手部は多くの骨が集まり、規則正しく石灰化していくので、両手(評価は左手)のレントゲン写真を撮影し、その骨化パターンにより骨年齢を評価します。簡易法として、日本人小児標準化Tanner-Whitehouse2法(TW-2法)を基にした「日本人標準骨成熟アトラス」(HBJ出版局)と比較することにより骨年齢を推定しますが、正確な判定には各々の骨の成熟度をステージ付けして骨年齢を求める必要があります。成長ホルモン分泌不全症をはじめとして、低身長をきたす疾患の多くにおいて骨年齢は実際の年齢(暦年齢)に対し遅れます。
近年、成長軟骨帯において重要な役割を担う物質が次々と明らかにされ、その異常は病気の原因ともなっています。軟骨は軟骨細胞とその周りをとりかこむ軟骨基質からできています。軟骨基質の主成分はコラーゲンですが、骨や皮膚のI型コラーゲンと異なり、II型コラーゲンからなっています。ですから、II型コラーゲンに異常がおこると手足(厳密には四肢)が短く身長が低い軟骨の病気になります。
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