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特集 対談 「なぜ今、食育か」 |
神奈川県立保健福祉大学栄養学科長、食育推進会議委員
中村丁次
神奈川県立保健福祉大学人間総合・専門基礎担当科長・東京慈恵会医科大学名誉教授
前川喜平
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メタボリック・シンドローム |
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前川 食育を考えるうえで、その一つの要点が「肥満」です。
中村 そうですね。
前川 運動不足と過食によるエネルギーが多すぎで肥満になる。 それに関して今、新しく「メタボリック・シンドローム」という概念ができました。それについてちょっとご説明いただけますか。
中村 日本人の死因は、ガン、脳卒中、心筋梗塞という三大死因があるのですが、それが最終的な死因とすると、その上流にさかのぼっていくと、これらのリスクとなる糖尿病があったり、高脂血症があったり、高血圧症があったりするのですが、それをさらにさかのぼっていくと、血圧が高い、中性脂肪が高い、血糖がやや高いという、ちょっと病気がちなところ、つまり病気との境界域や移行期があるのです。
前川 生活習慣病になる一歩前ですね。
中村 この移行期のベースになっているのが、内臓脂肪蓄積型肥満、お腹に脂肪がたまっているタイプということです。
前川 お腹に脂肪がたまる原因が、運動不足、過食、うまいものを食べすぎるということですね。
中村 そういうことです。内臓脂肪がたまって、そのことによってインスリン抵抗性が起こって血圧が上がったり、血糖が上がったり、中性脂肪が上がってくるという状態が起こります。だから、それを防ぐためにはお腹の脂肪をためないようにする。そのために運動や食事をしっかり指導することです。メタボリック・シンドロームという病気の一歩手前の状態に焦点を合わせて、個々に集中的に介入しようとするのが最近の考え方です。
前川 健康の中でちょっと危ないところでメタボリック・シンドロームとして全体を捉えて、生活習慣病にならないようにするというのが一つのポイントですか。
中村 そうですね。医療機関にかかる前の状態で、病気になりかかっていますよという人たちに焦点を合わせて、予防対策をやろうということです。
前川 健診レベルですね。
中村 そうです。
前川 健診レベルで、そういうメタボリック・シンドロームの可能性の人たちをつかまえるということですね。
中村 健診でそういう層を抽出してくるということです。そこが大事だと思います。
前川 先生は前に、メタボリック・シンドロームは病気になる前の川の上流ということをおっしゃいましたけれども、人間の一生としてを捉えれば、大人の病気は、子どもが上流ですということですね。
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