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特集 小さな挑戦者たち−木更津社会館保育園−
「ワニの卵」
わに組担任 立野 圭子さん



 私は現在、3歳児のわに組を担任しています。社会館保育園では3歳児を“宇宙人の時代”と呼んでいます。わかっている様でわかっていない、わかっていない様でわかっている。それが日常の言動や行動に出てきます。そのつぶやいたりしている事は、成長するにつれて、普通に大人が使っている言葉と同じになってきます。私たちは週に2〜3回、保育園での様子を伝えるため、父母に対しクラス便りを発行し、その様な“語録”や“つぶやき”を載せるようにしています。
 『わに組』の好きなものの1つに、“わにの卵”があります。これは園長からのもらうフルーツなのですが、わに組がもらうので“わにの卵”と言っています。4月当初、「わにの卵だよ」と園長が言うと、在園児は「ヤッター、“わにの卵だ”!」と喜んでいますが、新入園の子どもたちは「“わにの卵”?、メロンだよ…」等、見たままの物を言葉にしています。しかし、保育士たちは、子どもたちに一貫して“わにの卵”と言い続けています。進級した子どもたちは、すでに、それを“カエルの卵”(前年度が『かえる組』なので)と呼んでいたにもかかわらず、自然とその名前を呼ぶ子はいなくなっています。
午前中ほとんど散歩に出かけます。散歩に出かける時に、“わにの卵”がある時は、それを持って出かけていきます。包丁で切る前に「わにが出てくるよ」と言うと、4月当初は後ずさりしていた子ども達も、3ヶ月たった今では、「大丈夫、俺がやっつけてやる!」とたくましい答が返ってくる様になりました。
 “わにの卵”を人数分に分けず、5〜6個に分け、それを渡された5〜6人の代表が配っていきます。その代表は、その日によって変わります。“わにの卵”を配る時は、その代表の子どもの性格が出ます。自分がまず食べる子、最後の最後にようやく食べる子。また、配られる側も様々で、大きな口で食べる子、ちょこっとだけかじる子、何度も何度も「おかわりしてもいい?」と聞く子など様々です。一人ひとりの量が決まっていないため、代表として渡された子は「まだ食べてない人?」と聞いたり、周りを気にしています。ある程度満足すると、卵のまわりから離れて遊び始める子も出てきますが、ずっとその場から離れない子どもいます。保育士が「もう終わりにしたら?」と言いたくなる程、皮までしゃぶっています。みんなで食べるせいか、本当に最後まで大事に食べています。
 最近は子どもたちの方から、食べた後に「何だかガサガサ音がするよ」と言ってきます。子どものお腹に耳や手を当て、「本当だ!音がするね!」と言うと、「わにが生まれた」なんて声が聞かれます。うそっこの世界をどんどん膨らませて、楽しんでいます。
最近ごっこ遊びがクラス中のあちらこちらでみられる様になってきました。まだ『自分』が強く、“お母さんごっこ”をやっても役割がなかなか決まらず、「もういやだ」、「もう遊ばない」とよく聞かれますが、“ケンカする程、仲がいい“と言う事で、ケンカは止めずに、見守っていく様にしています。3歳児なので、まだしっかり言葉で伝えられず、時には仲介も必要な事がありますが、成長の過程でケンカは必要と考え、大切にしています。このような様子もクラス便りで知らせ父母たちに理解を求めています。




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