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第29回 母子健康協会シンポジウム |
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親と一緒に子育てを |
3.子どもが育つコミュニケーション
東京慈恵会医科大学名誉教授 前川喜平先生 |
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3.園におけるコミュニケーションの実際 |
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保護者とのコミュニケーション
電話とかケータイは事務的な用件に限り、コミュニケーションは保護者と皆さんの会話を原則としてください。メールとかケータイというのはもっての外です。必ず生身の会話をしてください。
常に心がけてほしいのは、日ごろからの挨拶、声かけ、顔見知りになるということです。来園したら、「おはようございます」とか、「寒かったですねえ」とか、とにかく保護者と口がきけなかったらまともな会話なんてできっこない。
気をつけてほしいことは、決めつけ、思い込みなどの先入観は一切捨てることです。例えば、私たちは医者ですけれども、いろいろなことで「あのお母さんは」とか、よく看護師さんと話をします。そういう概念があって、先生と言われると何を思い出すかというと、日ごろの噂です。「おや、困ったな」とか、「どうして逃げようか」とか。
ところが、実際はそうじゃなくて、いかに決めつけ、思い込みが多いか。不思議なことに、人間というのは一度思い込んだらなかなか抜けないのです。で、それを持っていたら相手が敏感に感じます。そうしたら、おはようと言ったときから敵か味方です。
では、どうすればいいかといったら、思いつきを消すための方法として、自分の興味を別に移すのです。「このお母さんはこんなお母さんだけど、ご主人はどんなご主人かなあ」とか、「どんな育ち方したのかなあ」とか、「あんなに痩せているけど、何食べてるのかなあ」とか、関係ないことを考えて見方が変わると、意外と公平な目で見られるのです。
ですから、自分が「この親」と文句を言う前に、自分の先入観を捨てて、どんな人とでも同じ態度で話すことを心がけてください。これは非常に難しいです。それから、話しやすい場と雰囲気を設けること。あくまでも肯定的な態度で話すということです。
会話の最初は難しい話ではなくて、「今日は寒いですねえ」「いい天気ですねえ」「どこにお住まいなの?」「何でいらしたの?」「幼稚園で○○ちゃん、こんなことしていたので驚きましたよ」とか、なるべくいい話、相手が答えやすい話から入ります。
もう一つは、決して一回で解決しようと思わない。何回でも話す。最初はとにかく聴き役に徹して、話しているうちにお母さんの感情とか気持ちが動いたら、「それは大変ですねえ」とか、「つらいでしょう」とか、「そりゃ楽しいですねえ」とか、返すことです。
話した時点でどうも自分一人では負えそうもなかったら、上の主任さんとか、園長先生とかに相談して、話をして貰うことです、話をしていてわからないときは確認することです。話をしていてわからないことは相手の言葉で返すのです。「いま、ちょっと大変と言ったけど、どんなことですか?」と。そうすると話しの内容が具体的にわかります。
あとは、もし困った事があるのだったら、ミーティングのときでも、話してみんなと相談してどうするかを解決されたらいいと思います。
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