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第29回 母子健康協会シンポジウム 親と一緒に子育てを
総合討論(3)



―いま、支援教育で早期発見・早期治療が大切であると言われておりますが、子どもの発達にはいろいろな違いがあって、どうしたらいいでしょうか。

前川 少なくとも五歳です。五歳までは、どんな子どもでもゆっくり発達を待ってください。決して決めつけることはありません。それだけです。むしろ親切心に決めつけると、いかに親が傷つきやすいかということだけを知っておいてください。支援教育対象の子どもたちの脳というのは、学校に行ってから使う部分のいろいろなことなのです。元来わからないわけです。生まれた赤ちゃんを見てすぐ、利口か何かもわからないでしょう。歩くようになってもわからないので、それは無理なことなのです。
 早く気がついてどうにかなるというのは、本来からそうじゃなくて、養育環境が悪くて(扱い方が悪くて)子どもが多動になっているとか、人間関係が悪くて、いわゆるアスペルガー症候群とか自閉症に見える子どもたちだけです。しかし、そういう子どもは、慣れた保育士さんだったら敏感にわかると思います。

―「○○ちゃんはこういう子だから」という目で保育をしています。どのように見方を変えていけばいいのでしょうか。

前川 「○○ちゃんはこういう子だから」という目が、どういう目なのか……、難しいですね。いい意味で、例えば「のんびり屋さんだからもう少し待ちましょう」と見ているのはいいけれど、「遅い子だからどうにかしましょう」と見ているのでは、話が違いますね。

小林 ちょっと難しい言い方になりますけれども、「子どもというのは思ったようには育たない。ただし、思っているように育つ」という言い方をします。だから、○○ちゃんはこういう子だというふうに思っているというのは、例えば、それがポジティブでいいものだったら、私は構わないと思いますけれども、逆のネガティブな意味だったら、その子の未来をその先生は何の権利でふさいでいるのかな、と考えてしまいます。そこが非常に大事だと思っています。

前川 「子どもは親の言葉により育つ」といいますが、「親」の代わりに「保育士」と入れたいですね。言葉により育つということがあるので、「できるよねえ」とか、「いい子だねえ」とか、「親切だねえ」と言っていると、その子は親切になると思います。そういうことも言葉の魔力です。

山田 おっしゃるとおりだと思います。いいところを見つけて、「こんなことがあったのよ」ということを発見してみんなに報告する。その保育者はともかく褒める。ほかの保育者も褒める。そして、「こうだったんだって」とみんなが褒める。その子に対して一つの行為を褒めていくと、本当にその子は変わっていくんです。そして、嫌な部分とか、気になる部分というのが、そのことで消えていくことがよくあります。気にならなくなることがあります。
 だから、私たちがどこに目をつけるかで随分違うと思います。困ることが十あると、一つの素晴らしいことがどうしても見えなくなってしまいます。親はしょうがないとしても、保育者はプロだから、やはりそれはまずいのかなと思っています。
 いまおっしゃったようなことを、私もよくお母さんたちに申し上げます。「うちの子はこうなんだから」と言うと、「そういうふうになるからね」とよく話すことがあります。だから、いつもよいところを見つけて、「そうだったんだ、すごいねえ」と言うと、そっちに傾いていって、一つずつ欠点みたいなところは消えていきます。大人がどういう気持ちで、どういう目で評価してその子に言葉をかけているか、ということで変わっていくのだと思います。

小林 つけ加えますと、一歳半くらいから効果がありますけれども、子どもさんが泣いたり、ぐずっているときに、「その顔、先生、大好き! かわいいねえ〜」「笑ってるときもかわいいけど、怒ってる顔もほんと素敵だね」って、声かけしてみてください。ずっとそれをやっていますと、面白いことが起こりますよ(笑)。私は楽しみの一つでよくやりますけど、一度試してみてください。答えは言いませんので、ぜひ。

―受け入れる際に、保護者がこちらを全く見ずに子どもを受け渡す人がいるのですが、その人とはどのように接すればいいのですか。

山田 先ほど申しましたように、お子さんに声をかけて、「おはようございます」、お母さんに「おはようございます」「お母さん、おはよう!」という感じで、なかなか難しいお母さんに関しては、積極的に「元気ッ?」という感じで親しく声をかけていって、だんだん親しい関係がつくれるといいなと思っています。

―小林先生の「発育に寄り添う保育には」の部分【表】を読む限り、現場で実際に取り組むのが難しいと思いますが、具体的にはどういうことですか。

小林 質問した方に申し上げたいのは、非常に厳しい言い方ですけれども、やる気ないのかなと思うだけです。これは私が、特別に学問的にまとめたのではないんです。現場の中で実際にやられてくるいいところとか、そこを全部集約していって、それも保育園、幼稚園、小学校、中学校で成功した例の中で、どういうところがよかったのかというふうに整理すると、こういう形になったということなのです。先ほども言いましたけれども、これは、多少勉強なさっている方だったら、保育のどの本を読んでも書かれている、全くの共通項だと思います。
 あとは、逆に自分の中で、そういうことを実践の中でどうやったらできるかということを、それぞれの方が考える基本にしていただければと思って、今日、利用させていただきました。最後は「やる気」なんです。自分で逃げたらダメだと思っていますので、ぜひこれを機会に、逃げない保育士になっていただけるといいなと思っています。
 単純な話、人を支援する人間の一番の役割というのは、勝ち負けという言葉は使うべきではないと思いますが、あえて使いますと、我々は勝たなくていいのです。負けなければいいのです。単純なことです。決して諦めない。焦らず、慌てず、諦めずで、コツコツとやっていくことが大事で、そこの部分を集約するとこういうことになりますよということです。ですから、もしできないのであれば全部一遍にやろうと思わなくても、この中の一つだけでも自分の特徴にしようということでも十分だと思います。
 こういうのって面白いんですけど、一つ始めると連鎖するんですよね。気がつくと何となくできるようになっている、というのが言えることです。私が一番言いたいことは、こういうことをちゃんとやっている方は、言葉は悪いですが、子供にもちゃんと甘えられる保育士になります。そうすると、同じことを子どもとの関係でやり合えるというか、「私は教える人、あなた方は教わる人」というのではなくて、子どもとの関係で相互関係が成立する形になりますので、初めからできないと思わないで、書いてあることの一つだけでもいいから、明日から実践しようとお考えになっていただけると、うれしいです。




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