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第29回 母子健康協会シンポジウム 親と一緒に子育てを
総合討論(4)



―保育園なのですが、朝の受け入れの際、子どもが泣いてしまい、保護者は子どもと話をして納得させたいようですが、保護者の方がなかなか離れないのと、子どももずっと親を求めています。

山田 親御さんがどのような思いで子どもとかかわっているのか。また、そのお母さんの子育ての方針の中にどのような思いがあるのかということがありますので、そのときに無理やり、また、その関係もよくわからないうちに、「こうあるべきなのに離さないわ」という形をとらないで、しばらく親子の様子を見守っていることがよくあります。親子関係に私たちは入り込めませんので、その親子関係の今までの様子とか、お母さんと子どもの信頼関係をしばらく見守っていて、だんだんお母さんもイライラしたり、本性をあらわしたりしたときに「このときかな?」と見極めて、「さあっ、行こうか!」という形でサッと連れていって「じゃお母さん、バイバイね」と離してしまう。
 ちょっと待ってさしあげると、お母さんも子どもも納得するでしょうから、誰かが止めてほしいという、間みたいなものがあるような気がします。そういうときに上手に離して差し上げる。泣くし、お母さんも後ろ髪を引かれるかもしれませんけれども、「あとは私たちが預かるから、お母さん行って」という形で、その後のことをお伝えしたり、お母さんと具体的なことをおしゃべりしたりして、お母さんの気持ちを聴いたり、また、その後の子どもの様子も、大丈夫よということでお伝えして、安心していただくように時間をかけることがあります。
 時間をかけたほうが、「急がば回れ」で早く解決できますし、お母さんも信頼してくださることが多いです。ですから、「このお母さんはこうなのよ」と決めつけるよりは、その親子関係を大事にしてあげて、そしてこちらの方針の中に引っ張り込むという形をとったほうがうまくいくことが多いと思います。いかがでしょうか。

前川 ぜひ、参考にしてください。

―来年度から体育指導の教師を招き、週一回、三歳、四歳、五歳児に行うことになりました。根本的な保育を考えることなく進めることに不満ですが、自信を持って小学校に行けるよう云々ということです。何でもできることは自信になるとわかりつつも、何か違うと思ってしまうのですが。

小林 ちょっと方針だけ聞くと、何でもできるようになって小学校に行きますと、たぶん、小学校の先生は迷惑でしょうね。(笑)ただ、体育ということで、体を動かすことを幼稚園、保育園でたくさんしていただくことに関しては私は大賛成です。私は心理屋ですけれども、「心の時代」という形で、いま、心のことばかり言っていますが、その間に、自分の体を十分に自由に動かせる能力の欠如した子どもというのが出てきました。その結果、心も歪んでいくという方向になっている場合が結構多いもので、特に幼少期の絶対運動量を確保していただけることは大切だと思っています。
 実際の例としましても、園にたまたま見に行ったときに、多動のお子さんがいまして、いまのお医者さんが診られたら、注意欠陥・多動症候群みたいなお子さんですけれども、年中さんでなかなか落ち着かなくて、保育士さんが大変だと言いましてね。私は冗談で、まさかそんなことをやる人はいないだろうと思って、「この子、一日二キロくらい走れば落ち着いて座ってられるよ」と言ったんですね。そうしたら、マラソン大好きな保育士さんがそれを真に受けまして、「この子がいいなら他の子にもいいはずだ」という話になりまして、年長さんまで全部引き連れて毎日二キロ走ったら、その園がものすごく落ち着いていい園になった。これは、神奈川県で、本当にあった例です。
 それくらい実は運動量というのは大切なのです。だから、方針とか何かというところは表向きのものとして、本音の部分として、子どもが体を動かして自由に遊ぶ、そういうことを覚える時間を週に三日とっていただく。それを保育士である自分がしないで、専門の人にやってもらえるならいいな、というくらいの感覚で見守ってあげることも大切かなと思います。そうすると、体育の先生も大体同じような方向に行きますので、そんなふうに考えていただければと思います。

前川 いま小児科の私の発達外来には、「歩き方がおかしい」という子どもが非常に多いですが、その大部分は運動不足です。本来だったら当然土ふまずができるのに、できていないのです。ただ、運動させるのはいいですけれども、個人差がありますから、遅い子とか、いろいろなことができない子が自信がなくならないような配慮をすれば、動かすことはいいですね。もう一つ朗報は、運動能力が伸びると普通の人は知的発達も並行します。そういう意味でポジティブに考えて、扱われたらいいのではないかと思います。

―目上の人とのコミュニケーションの中で「自分を守らない」とありました。とても納得できたのですが、では、目下とのコミュニケーションで指導しなければいけない目安はどんな点に気をつけたらいいでしょうか。

山田 まず新学期が始まるときに、年齢関係ない、経験関係ない、自分が思ったことは思ったときに言いましょうと、どの先生にもお伝えします。そして、やりたいと思ったこと、これはおかしいと思ったことも、何でも言ってくださいと、お話しておきます。そして普段の生活の中で、「この子をこういう目で見ているな」「あ、ここのところを見てくれているな」と思うときには、子どもと同じで、褒めます。そして、「こうしてくれてありがとう」とか、「この子のことよく見てくれてたね」と。一生懸命やって足らないときは、「頑張ったけれども、ここは注意してちょうだい」と。  それで泣かれたことがあったんですよ。一生懸命やって、「完璧!」ってやったんだけれど、もう一つというところがありましてね。「よく頑張ったね、でも、ここのところはもう少し気をつけてほしかった」と言ったら、「こんなに頑張ったのに」ってワーワー泣いた職員の方がいました。でも、決して恨まれずに、「今度は頑張る」という形で、より発奮してくれて、子どものために本当によく働いてくれています。
 ですから大人も、悪い言葉を言われるよりは(笑)、やはり褒められたほうがうれしいと思います。年を取っても同じだと思います。本当にドキドキして、すごくまずいと思いながら、前川先生は上手でいらっしゃるから、よくおっしゃってくださったので、ちょっと安心したのですが、「それでよかったんじゃない?」と、ひとこと言われるとホッとします。そのひと言をかけて差し上げると、次の言葉が使いやすい。「でも、ここを気をつけたほうがいいんじゃない?」ということが入っていくと思うのです。
 カチンカチンのものというのはなかなかそこに染みにくいですけれども、大根でも下ゆですると味がしみますね。一回やわらかくして、そしてはっきり、「こうしたほうがいいんじゃない?」とお話しすると、「あ、頑張ってみよう」という形をとられると思います。まず、認め合うことの基本を年長者が教えて差し上げると、そのことを覚えていらっしゃるのではないかと思います。これは、若い保育者を育てる基本ではないかと私は思っております。

前川 ここにいらっしゃる方は、山本五十六という人をあまり知っていないのではと思いますが「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」ということを言っています、このひと言だと思います。




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