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「子どもの健康とお砂糖」 第1回 子供の成長と砂糖
埼玉県医科大学医学部第一生理学教授 野村 正彦



 人間が生まれて初めて口にする食べものは母乳です。母乳には乳糖などの糖が含まれており、ほのかな甘みがあります。生まれたばかりの赤ちゃんに「甘み」、「苦味」、「酸味」、をなめさせると、「甘み」にだけ舌なめずりをするとの実験報告があります。これは、人間が本能的に甘さを好むことを表していると考えられます。
 しかし昨今、砂糖などの甘いものは「健康に良くない」と、とかく敬遠されがちです。真実はどうなのでしょうか。未来を担う子どもたちの健康や成長に砂糖がどのように関わっているのか、専門の先生方にまとめていただきます。
(協力 砂糖を科学する会)

子供のエネルギー摂取と砂糖


1日の摂取エネルギーに占めるタンパク質・脂質・炭水化物の適正構成比 体も脳も日々成長を続ける子どもは、多くのエネルギーを必要とします。しかしながら、消化器官がまだ小さいですから、一回の食事から摂取できるエネルギーはおのずと限られてきます。そこで、食事と食事の間の「おやつ」が重要な役割を果たすのです。
 エネルギー摂取については、その約60%をごはん、パン、そば、砂糖等の糖質(炭水化物)から摂るのが理想的とされます。中でも砂糖は、小腸での消化吸収が早く、素早くエネルギーになりますから、砂糖を使ったお菓子はおやつに最適と言えます。
 砂糖は、さとうきびやサトウダイコン等が太陽・水・空気・土から光合成によってつくり出す、まさに自然の恵みですから、安心してお使い頂けます。ただし、ダラダラ食いなどで栄養摂取のバランスを崩すことは本末転倒です。時間と量を決めて、上手に与えるようにしましょう。


心の安定と脳の関係


 生まれたての赤ちゃんの脳の重さは約350g。その後20歳までに約1400gにまで成長します。その上、脳は重さとしては成人の場合、体重の約2%ですが、エネルギー消費量では全体の約18%を占める大食いの器官です。
 脳にエネルギーが行かなくなると、数分で大きなダメージを受ける可能性もあります。そして、体を動かすエネルギー源にはタンパク質や脂肪も使うことが出来ますが、脳のエネルギー源となるのは糖質(炭水化物)が分解してできるブドウ糖だけなのです。
 子どもの脳は、常に新しい情報を蓄積して膨大なエネルギーを使っていますから、体内で素早くブドウ糖に分解される砂糖は、脳のエネルギー源として有効なのです。


子供の脳にも糖分は不可欠


 脳の中で重要な役割を果たしているのが、「ドーパミン」と「セロトニン」という神経伝達物質です。ドーパミンは、脳を興奮させ集中力を高める作用、セロトニンは脳をリラックスさせる作用があり、この両者のバランスが良いと、脳は良好に働きます。
 しかし、ドーパミンが過剰になると、感情を抑えられなくなります。このときは興奮を鎮めるためにセロトニンが不可欠になります。このセロトニンのもとになるのはトリプトファンというアミノ酸ですが、このトリプトファンが脳内に届く手助けをするのがブドウ糖なのです。トリプトファンを多く含むタンパク質と砂糖などの甘いものを摂ると、セロトニンが効率よく合成され、脳と心の安定に有効なのです。
脳は全身のエネルギー量の約18%を消費します。



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