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第二十四回 母子健康協会シンポジウム 保育におけることばの問題と対応
3 吃音など構音上の問題とその対応
国際基督教大学教授 栗山 容子



構音の発達とその問題


  では、どういう過程を経て、適切な発音、──これは専門的には構音と言っているんですけれども、これができるようになるかということです。
 まず、体外に吐き出す空気が、気管を通ってのどを通過するというときに、声帯が振動して音がつくられるということです。さらにこれが、口腔とか、あるいは舌とか、あるいは唇とかいったようなところを通過するときの、形とか動きということで、さまざまな固有の音声がつくられる、ということになります。つまり、幾つかの構音の気管がうまく協調して運動することで、適切な音声がつくられるということになります。
 生後半年には、たとえば、母語に必要な音素がふるいにかけられて、日本語に必要な要素が残るといわれています。たとえば、「ママ」とか、「マンマ」とか、「パパ」といったような言葉は、言葉の最初に見られる──初語といいますが、このような、マ行とかパ行とかバ行は、比較的早く出現します。次いで、カ行とかあるいはタ行といったような音、あるいはサ行といったようなものが、次第に増えてきます。一方、ラ行などは、四、五歳になっても難しいようです。
 言葉を話すということには、何を話そうとするのかを考える思考の過程が含まれます。それから、どういうような語を使って、どういう文法、どのような組み立てで話すかというような言語学的な過程があります。それから、話し言葉として表現するということで、生理的な過程もあります。
さらに、先ほどお話したように、自分で話した言葉を耳で聞いて、聞き取って、そしてそれが適切かどうか、意図したように話されているかどうかということを、チェックするといったようなこともあります。
 そういうわけで、非常に高次の過程が含まれているということで、言語獲得期には、さまざまな誤りのタイプが見られるということになります。
 たとえば、「はさみ」が「あさみ」になってしまったり、あるいは「はっぱ」が「あっぱ」となってしまったり、「さかな」が「たかな」になってしまったり、あるいは「そら」が「トラ」になってしまうなど、音の省略や置き換えの誤りがあります。あるいは、「つくえ」が「ちゅくえ」となってしまったり、あるいは「すべりだい」が「しゅべりだい」となって音が歪んでしまうこともあります。あるいは、「じどうしゃ」というところが「じんどうしゃ」になってしまうなど、不要な音が加わるといったような誤りのタイプも見られます。
国際基督教大学教授 栗山 容子 では、構音上の問題というのは何か、ということです。今見てきたように、発達の過程では、しばしば誤りや未熟な発音を観察するわけですけれども、この中には、いずれ適切に調音できるようになって、自然に消滅する、なくなってしまうというものと、あとまで問題が残って、慎重な対処を必要とするというものがあるわけです。特に後者の場合には、構音上の問題として、専門的な指導を受けるべきかどうかとか、あるいはどういうふうな指導が適切なのか、といったような問題が生じてくる、ということになります。
 構音上の問題の中には、原因がはっきりしているものとして、事故とかあるいは病気で、脳がダメージを受けて、脳からの指令ですね、それがうまくいかなくなって、下や唇、のどの運動がスムーズにいかないということからくる、運動性の構音障害と言っているものがあります。それから口蓋裂という、構音に必要な、舌とか、唇とか、あるいはのどといったような器官が、直接障害を受けたり、あるいは、難聴といったような、聴力障害があるというような場合には、器質性の構音障害というふうに言っていますが、これも原因がはっきりしています。
 一方、子どもに多い発音の誤りでは、舌とか口とか唇の動かし方が未熟であるということだけで、原因がよくわからない。けれども、聞き取りにくいなどの問題がある場合、機能性構音障害というふうに言っております、吃音と言われるような子どもは、このような機能的な構音障害であるということになります。
 現在、いろいろな高度な分析機器ができていますので、こういった構音上の問題のある子どもたちの、実際の運動機能なり、あるいは調整過程がどうなっているか、といった問題を丁寧に分析することができるようになってきています。ここではこれ以上触れないようにいたします。



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