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第二十四回 母子健康協会シンポジウム |
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保育におけることばの問題と対応 |
3 吃音など構音上の問題とその対応
国際基督教大学教授 栗山 容子 |
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吃音傾向にあった子ども |
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経過を見守った子どものことばについてお話します。意味のあることばを話し始めた頃は、普通の親と子どものやりとりと、ほとんど変わりません。たとえば、子どもが「おおいし」と言うと、お母さんが「おいしいねぇ」。また子どもが「おおいし」と言うと「おいしいねぇ」といったようなやりとりをやっている。ことばの話しはじめは、そういった短い語句のやりとりで、普通の子どもとほとんど変わりませんでした。
次いで、月齢が少し高くなりますと、—それも、少し注意深く聞き取りますと、例に示しておきましたように、「おーきいの これよ」「だーいじょうぶよ」というふうに伸ばしたり、あるいは、「ん ん ん こん こん こんど おしまーいよ」というような、いわゆる吃音児に特有の、短い音の繰り返しとか、あるいは引き延ばすといったようなものが、発話に混じってくるようになりました。三歳近くになりますと、「じゃあね じーしゃもってこかなー」、あるいは「じす」、「じじしょ、あしょこ」というふうに、一生懸命話をしようとしているのです。ところが、お母さんのほうはよくわからない。ついに、「ティッシュ? あっ、ほんとだ」ということで、ようやくのみ込めた、というようなやりとりも見られるようになって、聞き取りにくさとか、わかりにくさも、はっきりしてきました。
さらに年齢が高くなりますと、例にありますように、長い叙述が増えてくるのですけれども、やはり、つまづいたり、あるいは音が延びたり、といったようなことが、依然として混じっているという様子でした。
このような子どもの発話を聞いて、親が言葉の上でどのように対応していたか、ということなのですけれども、これも特に変わった傾向は見られませんでした。ただ、「きぇい きぇい」という子どもが言いますと、それを一緒に繰り返して、「きぇい きぇいだね」などというように、普通の親がよくやるように幼児語を使って応対している、ということがありましたけれども、年齢が高くなると、そういう様子は見られなくなりました。
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