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第25回 母子健康協会シンポジウム 保育と食育
4 討議(1)



前川 皆様から、多くの質問をいただいています。いかに皆様がこの問題を真剣に考えて悩んでいるかということがわかったのですけれども、これからそれについてお答えしますが、全体の感じは、この問題は不まじめに考えたほうがうまくいくのではないかと思うようなことが結構あります。ですから、これからは少し実用的に、理論というよりも、こうしたらいいのではないかということを中心に話してみたいと思います。

— 前川先生は、乳児期、幼児期は、まだ食の好みはないと話されましたが、加藤先生は、偏食で、好き嫌いの時代まで戻ってみるのもよいとおっしゃいました。好みは食の与え方だけで決まるのでしょうか。

前川 離乳食の初期は、好みはないですね。食べる子、食べない子、食欲もいろんなことがあると思いますけれども。そのうちに自分の好みがだんだんついてくる。あるところまで行けば、当然、好きなもの、嫌いなものが出てくるわけです。だから、その幅の中でいかに好みができるかというので、何でも食べるからといって好き嫌いなく食べるというわけではないのです。それは当然、好みです。この好みは何によって起こったかというのですけれども、これはちょっと私もわかりません。好みがいつ頃から出るかというのは、人によって違うと思います。早い子は1歳ぐらいから出る子もいれば、遅くとも2、3歳からは出てくるのではないかと思うのですけれども、子どもの年齢ではないんです。敏感な子がいるとか鈍感な子がいるとか、わからないのですけれども、そこら辺も何かあるのではないかと思いますけれども、これはわかりません。

— 食べ方が非常に悪い子どもがいます。食べ物すべてをぐちゃぐちゃに混ぜる、一度食べたものを出してまた食べる。何か問題があるのでしょうか。

前川 うちの子どももそうでしたが、口から出したりグチャグチャいじったりするというのは当たり前です。それが子どもの発達の一つのプロセスです。それを大人が汚いとか、悪いとか考えてしまいます。手づかみも含めて、いろいろなことがありますので、最初のうちはそう神経質にならなくていいのではないかという感じです。

— 離乳食の味つけは何カ月ぐらいがいいと考えていますか。現在、私たちの園では8カ月ぐらいから味つけをしています。

前川 最初はドロドロしたものを飲み込む練習ですけれども、どうも離乳食の瓶詰だとかは、少し塩分とか何か味をつけたほうが、子どもが食べるみたいです。ただ、その味が極端にならないで、ちょっとの隠し味みたいなのは確かにそうですよね。中期離乳食に行く頃からでいいのではないですか。ただ、濃くしないということだけです。

— テレビで見る思春期の方々は皆さんスタイルがよく、同じ体型でうらやましいが、あれもスリムファッションでしょうか。その影響からか、街を歩いている皆さんもスタイルがいいのですが、どう思われますか。

大和田 私は好ましい事ではないと思います。今日、日本の若い女性に多いと言われる「スリム願望」の結果、栄養障害を生じることが、少なくありません。思春期から青年期の女子にかなりの頻度で見られる鉄欠乏性貧血や骨密度低下は、それを表しています。また、私が関係している検査機関で、中学・高校生の女子の早朝尿検査における“ケトン体”陽性者が多いことを相談されていますが、ケトン体は1型糖尿病や飢餓時に出現する物質であり、それが陽性を示す子ども達では朝食の欠食、過度のダイエットなどが推測されます(1型糖尿病は稀ですので)。しかし、食習慣について、不用意に質問しますと「私の勝手でしょう!余計なお節介」と言われかねませんから、皆様も、ご自分の守備範囲で子どもの栄養障害を予防するように工夫して下さい。

— 保護者が忙しいから家庭での食生活をちゃんとしてもらえない。

加藤 非常に気になるところです。そこは、送り迎えのときなどにいろいろなことを話題にして、先ほどの缶詰のことではありませんけれども、季節の食物のことを話題にしながら、若い母親はこういったことを知らずに育っている方が多いですので、そんなことも含めて、若い母親と子どもとを一緒にして育てていくような、ゆっくりした気持ちで行くのがいいのかなと、そんなふうに感じます。

— 食べたことがないものは絶対口に入れない子や、全部戻してしまう子に対してどうしたら良いのでしょうか。

加藤 いろいろな子どもがいますけれども、いつも同じものしか食べない、そういった極端な症状である場合は、小児科とかにかかってもいいと思います。無理してあげるよりも、もっと基本的なところで相談していいと思います。
 それから、戻してしまう子どもというのは、これは本当に素直なことです。食べちゃいけない、食べないほうがいいものを戻してしまうというのは、これは素直で普通の反応ですので、嫌いなんだなというふうに思っていいです。ですから、そこで慌てないで、少し前に戻って、食べていて、「おいしいね」とか、「これはどんな味かな?」とか、そういった出会いのところに戻ってゆっくりやっていっていいのではないかと思います。



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