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第25回 母子健康協会シンポジウム 保育と食育
4 討議(2)



— 子どもの肥満が目立ってきています。それに伴い給食のおかわりを求めてくる子も多い。欲しがるだけ食べさせるのはどうでしょうか。

加藤 小食の反対で、多く食べちゃう子ですね。特に大きい子どもとか、食べたがって困るということがありますけれども、これは、遊びに熱中できないかわりに食べるほうに行ってしまっている部分があるかもしれません。食べることを早々に切り上げて、何か楽しいことで遊ばせましょうというのが、肥満児の食べさせ方の一つです。けれども、何か楽しく遊べないことがあって、食べることが終わってしまうと、何か楽しくないことになってしまうとか、そういった気持ちの流れの上での背景があると、食べ終えられないということがあると思います。食べる子と食べない子というのが基本的にすごい差があるのは、子どもの世界にとって普通ですし、兄弟でも、すごく食べる子が食べない子の残したものを食べちゃうなんていうのは家庭生活ですごく多いことですので、この辺は一人一人にゆっくり対応していくことになろうかと思います。

— 甘いものの食べ過ぎはだめですよと話をすることが多く、ジュースの飲み過ぎも含めて伝えているつもりです。けれども、親のほうから、「保育園でも甘いものが出るではないか」指摘されました。子どもの甘み(砂糖)の適量はどのくらいでしょうか。

大和田 先程お話ししたように、糖質は大切な栄養素であり、その中の“甘味”を感じさせる糖分(蔗糖、果糖など)も子どもの発育に必要です。一つには、必要な栄養素を摂取する為には“旨み”を感じさせる調理が必要であり、そのために甘味は欠かせません。また、運動時などエネルギーを速やかに補う必要が有る場合には蔗糖、果糖が主役になります。しかし、家庭ごとの食習慣の違い、個々の好みからも、甘い糖分の適量についてのお答えは難しいです。そこで、蔗糖、果糖、乳糖制限が必要な子どもの病気を例として、そのことを考えてみたいと思います。
 その病気は糖原病Ⅰ型と言う子どもの慢性疾患で、蔗糖、果糖、乳糖によって成長障害、肝機能の悪化が見られるためこれらの糖をこの病気では「制限糖質」と呼びます。ブドウ糖は利用できますので、調理で甘味を付けるのにそれを使いますが、子どもですから果実、乳製品も欲しがるのは当然です。そこで、患児たちの成長、肝機能と制限糖質摂取量を調べましたところ、その量が全糖質摂取量の5%までなら問題ないことが分かり、その量の制限糖質を使用することによって食事の幅が広がりました。5%の制限糖を使用することによって、患児たちがある程度満足できる量の果実や乳製品を使用できるようになりました。このような経験から、病気でない子どもたちでの甘い糖分は、摂取する糖質全体の10%以内が良いのではないかと考えますが……。集団保育の場におられる先生方も、子どもたちに供する様々なおやつの糖分の量と質について日頃から充分に把握なさり、保護者の質問に速やかに回答なされば、お母さん方も納得するでしょう。

前川 今のお話で、お砂糖のことが出て気になるのは、砂糖とむし歯の関係です。齲歯(むし歯)は頻度からいくと減っています。だけど、ひどい人はある程度います。その一つが、お母さんの口の中の細菌が子どもにうつる。だから、むし歯があるときは、親の歯を診てもらって相談するのも一つです。もう一つは、お砂糖が悪いのではなくて、結局、歯の手入れです。だから、歯をきれいにするということを心がければ、それほど怖くないということです。砂糖だけではなくて、結局、食物残滓が口にくっついて、そこにミュータンスという細菌がついて、酸ができて、歯がやられてしまうのです。お口の手入れをよくするということが一つ、それから、生まれつきむし歯のできやすい人(お母さん)がいらっしゃるから、その点はやはり小児歯科に相談するということが一つのヒントではないかと思います。
 大和田先生からジュースのことが出ましたけれども、今、小児歯科の先生方と問題になっているのが、ジュースを含めたイオン飲料。のどが渇いたときには、ジュースを含めてイオン飲料は飲ませないでください。麦茶でも番茶でも、水道水でも構いませんから、とにかく水を飲ます癖をつけてください。ジュースは、逆にのどが渇くんです。そうすると、またジュースを飲む、さらにそれが倍々になって、肥満の傾向とか、いろいろ悪いことにつながりますので、ぜひ、何でもないときには水を飲ますことです。
 おなか壊したり下痢したりして小児科に行くと、私たち小児科医は、点滴するのが嫌なのでついつい、「イオン飲料飲ませましょう」と言ってしまうのです。そこで、お母様方は、あれはいいものだと思いますけれども、それはおなかを壊したり戻したりしているときだけです。とにかく飲ませないようにしてください。それだけで随分違いますので、ぜひそうしてください。

— 厚生労働省の食育検討会の経過と意義と内容について教えてください。

加藤 今日、資料を持ってきていないので記憶にある範囲でお答えいたします。
 食育検討会は、2003年6月ぐらいに第1回が開かれまして、2004年2月の第7回まで行われ、最終報告書が出ました。
 7回分の経過として、最初の1、2回は結構つらいものがありまして、「食べる力を育むとはどういうことか」とか、「そもそもこの検討会は何を検討するのか」とか、そういう感じでした。「発達段階における、食べる力を育む課題はどのようなものがあるか」と。結局、食文化ですとか、そういった幾つかの軸ができました。
 あと、乳児期、幼児期、学童期、思春期と、それぞれの時期の「食べる力」の課題というのが大きなテーブルになりました。それは、いろいろな商業誌などでいろいろな先生方が書いていらっしゃいます。座長が村田光範先生で、今、和洋女子大学教授ですが、長いこと東京女子医科大学第二病院の小児科の教授でいらっしゃいまして、主に子どもの発育のことや肥満のことなどがご専門でした。
 委員は、いろいろな立場の方がいました。保育所の先生ですとか、学校の養護教諭の先生ら現場からたくさん見えました。あと、食育を推進しているNPOの代表の方。学者というサイドから、栄養大学の先生とかも入ってきてくださいました。
 異色の存在としては、NHKのプロデューサーの星さんという方が見えました。昔、「ひとりでできるもん」というチャイルドクッキングの番組がありました。そのプロデューサーだった方です。最後の報告書で、すごく楽しいキャッチフレーズ‥‥「ハッピーカムカム楽しさカモン」とか、一生懸命考えていただいて、そういった語呂のいいものを全部で5つもつくってくださいまして、それとイラストを組み合わせて楽しいパンフレットになりました。星先生などからはむしろ斬新な意見が出て、いわゆる研究者とかいう人たちだけが集まって検討会をやってはいけないんだな、ということをつくづく感じた、いい見本だったと思います。
 経過も中頃から面白くなってきまして、いろいろな事例が出てきました。前半ご紹介いたしました園芸とか、クッキングとか、。もあります。、ほかに小学生の食育として、おやつパワーというのがありました。「このおやつはどのくらいのパワーがある?」と言って、模造紙の上に、その子のおなかがいっぱいになる度合いを子どもに置いてもらうんです。そうすると、「ポテトチップ1袋食べたら、すっごくおなかいっぱいになるよね」とか、「ヨーグルト1つは大したことない」とか、子どもが、これでどのくらい自分が満腹になるかという実感を模造紙の上にのっけられるような、そういった「食」に対する感覚の力を養っていこうというプログラムでした。
 あるいは、商店街とタイアップして「食育弁当」というのをつくってもらいました。実際に販売してもらって、ほとんど儲けのない価格で売ってもらったので、不評かなと思ったら、そうでもなくて、食育弁当を売っているということで、買いに来たお客さんが、ほかの商品も買っていってくれたので、協力したお店の方からも好評だったとか、そのようないろいろな事例が出てくる頃から、だんだん面白いかなという気がしてまいりました。
 最終的に私は正月返上して、0歳から17歳半までの男女の身長と体重のパーセンタイル値‥‥3から97までの7本の線をつくって、それと一緒に最終報告書となっております。私としても懐かしい思い出になっております。




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