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特集 対談 「なぜ今、食育か」
神奈川県立保健福祉大学栄養学科長、食育推進会議委員
中村丁次
神奈川県立保健福祉大学人間総合・専門基礎担当科長・東京慈恵会医科大学名誉教授
前川喜平


食育は心まで育てる


前川 最後に、「なぜ今、食育か」ということで、先生のお立場から、必要性とか重要性をもう一度まとめていただけますか。
中村 今、前川先生と、健康問題とか食料問題とか多方面にわたってお話しさせてもらいましたが、私は、もう一つ大事なことは、食べることに感謝するということだと思います。
前川 ああ、いいことおっしゃる。
中村 食べ物というのは生命ですね。
前川 生きているものをいただくわけですね。
中村 その命をいただいているということを子どもたちに教えておかないと、あのような無駄なことをやるのだろうと思います。
前川 確かにそうですね。
中村 牛でも豚でも魚でも何でも食べ物はそもそも、人間の餌になるために存在していたのではないわけですから。
前川 まさにそのとおりです。
中村 彼たちは彼たちの生命を維持するためにこの世に生まれて、一生懸命、豚は豚として生きようとしている。それを我々は殺して食料と勝手に言っているわけです。豚からいわせると迷惑至極(笑)。
前川 そりゃそうです、かわいそうだ。
中村 ニワトリにしたら自分のために卵を産んでいるのに、それを横取りしているのですから。牛乳だって、牛のためにお乳を出しているのに人間が横取りしている。そのことを心得ておかないと。だから私たちは、「いただきます」と言って食べている。
前川 食育はむしろ徳育、心まで育てるということですね。
中村 そうだと私は思います。食品は生命を持った生き物であったという姿が、今、見えないのです。スーパーなんかでは切り身になっていますので。
前川 まさにそうです。マグロや何かは切り身で出てくるから、子どもは魚を見たことない。だから魚の形を見ても名前がわからない。
中村 そうみたいです。
前川 野菜でも何でも畑を見ていません。それ以前にいかに人の手がかかって、食料というのは生き物だということの概念が少なくなるから、無駄にするという感じですね。なるほどなあ。感謝して食べるということはいいことです。無駄にしないということですね。
中村 そうです、無駄にしないということです。せっかく命を犠牲にしているわけだから。
前川 日本はただでも食料が足りないですからね。ありがとうございました。 (了)

プロフィール

前川 喜平(まえかわ きへい)
神奈川県立保健福祉大学人間総合・専門基礎担当科長、東京慈恵会医科大学名誉教授。
東京慈恵会医科大学卒業後、同大小児科教授を経て現職。1996年より財団法人母子健康協会理事、シンポジウム統括を勤める。主な著書に 「小児神経と発達の診かた」(新興医学出版社)、「今日の診断指針」(共医学書院)など。

中村 丁次(なかむら ていじ)
神奈川県立保健福祉大学栄養学科長、聖マリアンナ医科大学内科講師、(社)日本栄養士会会長。2005年より食育推進会議委員を勤める。
主な著書に 「こんな食事が病気を防ぐ」(講談社)、「食べ方上手」(幻冬社)、「食事指導のABC」(日本医師会)など。



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