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少子化と性教育に関する一考察 |
東京大学名誉教授 鴨下 重彦 |
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少年非行の現状 |
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子どもは社会を映す鏡であり、少年非行は社会不安のバロメーターとも言われています。戦後非行のピークは三つあり、第一のピークは戦災による荒廃と占領の時代の一九五一年、第二は一九六四年の高度成長期、そして低成長期に入った一九八三年をピークとする第三から、最近の第四までと続いてきています。少年非行は社会病理現象の一つとして捉えることができますが、子どもが直接社会不安や矛盾の影響を受けるのではなくて、動揺する大人社会の反映であると見ることが出来ます。最近の非行の傾向は低年齢化であり、中流化もみられるといいます。中流化とは、両親も健在、家庭としてもごく普通以上の生活をしているような子どもに非行がみられるようになってきたとのことです。
もう一つ心配すべきことがあります。 最近家出人に関する調査の結果を聴いたのですが、大人の家出は7割が男性なのに、少年の家出は6割が女性だったというのです。これは無断外泊を含めてのことですが、東京都(警視庁)の統計では、この二年間に都内で五〇三人の少年が窃盗、強盗、恐喝、傷害、暴力行為などで検挙されました。その二割が女子なのです。さらに、いわゆる虞犯行為で補導された少年の六割が女の子であったそうです。実に憂うべき状況で、その背後にはさまざまな要因が挙げられますが、特に大きなものとして携帯電話の普及があるように思います。中学生も緊急時の連絡のため、都会では殆ど全員が持つようになりましたが、携帯電話の背後には多くの危険が潜んでいます。女子中学生が出会い系サイトに引っかかり、援助交際などいとも簡単に悪の道へ転落していくようです。
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