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少子化と性教育に関する一考察 |
東京大学名誉教授 鴨下 重彦 |
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男女関係の変容と性意識の変化 |
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最近のバリアーフリーの考えの中に、特に男女の間に差を除こうとする動きがあります。ジェンダーフリーともいいますが、男らしさ、女らしさ、あるいは知能、性格、その他生物学的男女差は社会的に作りだされたものであって、男女に本質的には差はないとする考えです。これが子育てに関して、男女全く平等でなければならないような主張にもなりました。しかし最近はジェンダーの考え方自体行き過ぎもあるという反省も出てきました。子育てについても、父親と母親の果たすべき役割はあって、それが曖昧にされているために、子どもにとっても混乱をもたらしているように思います。マウスの話ですが、雌にしか発現しないという育児にかかわる遺伝子、ペグ3も発見されています。ジェンダーの考えは子どものことを視野におかないエゴイズムだと思います。
中高生の性意識に関して、少し古い統計ですが、総務庁青少年対策課が10年前に出した調査結果があります。当時すでに中学生の男女ともに、愛しあっていればセックスをしてもかまわないという答えが50%を超えていました。高校生では80%以上だったのです。その結果いわゆる望まない妊娠が生じ、さらに人工妊娠中絶の数を増やすことになりました。最近は中絶数も徐々に減少傾向にありますが、それでも平成16年の統計で人工妊娠中絶の届出総数約30万のうち、1割強の34,745がティーンエージャーの中絶なのです。届出は控えめにされるので、実際にはもっと多いだろうと言われております。若年での中絶は不妊症のリスクを高めています。「不慮の妊娠」という言葉もあるようですが、これらの現状に対しても確固たる対策が立てられていないと思います。
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