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シリーズ「子どもの健康とお砂糖」
第3回 子どもの肥満と砂糖
浜松医科大学教授 大関 武彦



 人間が生まれて初めて口にする食べものは母乳です。母乳には砂糖などの糖が含まれており、ほのかな甘みにあります。生まれたばかりの赤ちゃんに「甘味」、「苦味」、「酸味」をなめされると「甘味」にだけ舌なめずりをするとの実験報告があります。これは、人間が本能的に甘さを好むことを表していると考えられます。
 しかし昨今、砂糖などの甘いものは「健康に良くない」と、とかく敬遠されがちです。真実はどうなのでしょうか。未来を担う子どもたちの健康や成長に砂糖がどのように関わっているのかを専門の先生がたにまとめていただきます。
(協力 砂糖を科学する会)

1960年代には全体の約2〜3%だった小児の肥満が、現在では10%前後に増加。糖尿病や高脂血症といった生活習慣病も子どもたちの世界に広がりつつあります。本当にそうなのでしょうか。

特定の食品ではなく生活習慣全体が肥満の原因です


 肥満の原因は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ることにあります。しかし、子どもの肥満が問題視され始めた1960年代に比べ、穀物や砂糖の摂取量は低下傾向にあります。摂取カロリーが減っているのに肥満が増加しているのは、肥満の原因が砂糖など特定の食品だけではなく、遊びや運動を含めたライフスタイルと大きく関わっているからです。ゲームのような室内でので電気機器を使った一人遊びや塾通いは、深刻な子どもの運動不足を招いています。また、ストレスによる過食も肥満の原因です。
 さらに小児期には成長に必要な栄養素を適切に摂ることが重要で、過度のカロリー制限は成長障害の危険すらあります。安易に摂取カロリーを減らすのではなく、生活習慣全体での肥満への対応が望まれます。


食べ方も肥満の一因


 現在の家庭での食生活も肥満の原因。肥満を防ぐには、食べ方も見直してみましょう。

1.よく噛んでゆっくり食べる。
早食いは、満腹になる前に食べ過ぎてしまいます。
2.おやつは決まった時間に
だらだらとおやつを食べていると、どのくらい食べたのかわからなくなります。
3.寝る前には食べない
食べるのは、寝る2時間前まで。夜食は控えましょう。
4.「ながら食べ」はやめましょう
テレビを見ながらの「ながら食べ」は、満足感が得られず、食後にまた何か食べたくなります。

子どもの頃の生活習慣が、一生の健康に影響する


 肥満につながる食事の好みや摂り方は、子どもの時に形成されます。家族と一緒に食卓で栄養バランスのとれた食事を摂るのが、規則正しい食生活の第一歩。また、子どもの頃から体を動かす経験を持つのも大切です。子どもにとって、食生活や運動などの正しい生活習慣を身につけることは、大人になってからの健康や老後にまで影響する大変重要な課題です。



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