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特集  「急変する社会環境から子どもの心を守る」
こども心身医療研究所所長 冨田 和巳



本質を分析しない報道


 長い前置きになりましたが、本題に入っていきます。
 神戸の事件の翌年、東京で「社会的常識も分別もある」と考えられる54歳の父親が、家庭内暴力のわが子を殺害しました。父親が東大出身であることもあり、マスコミは大きく事件を報道し、その後、特集記事や詳しいルポも出ましたが、残念ながら、多くは「暴力の凄さ」を詳しく書いて話題にするだけで、「なぜ、それほど暴力が出たのか?」はみえてきませんでした。高名な精神科医から「暴力に耐えるのも技術だと教えられた」という父親の裁判所での証言には「この医師もわかっていない」と感じるだけでした。私は父親が左翼系の出版社に長く勤務していた経歴と、子どもを預かった保育園の保母が「数年に一度みる過敏な子であった」と証言したことに注目しましたが、寡聞にしてここに言及した報道はありませんでした。




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