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こどもの慢性腎臓病 |
和歌山県立医科大学小児科教授 吉川 徳茂 |
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慢性腎臓病 |
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慢性腎臓病は急性腎炎のように急に体がむくむようなことはなく、無症状に発症して、ゆっくりと進行してゆく腎臓病です。
腎臓は血液を濾過し、体の中にできた老廃物や余分な水分を、尿として排出しています。腎臓が、このような働きをできなくなった状態が腎不全です(図1)。腎不全になると、透析や腎移植が必要です。腎不全になって透析をはじめる患者数は年間3万人以上になり、現在25万人以上の患者さんが透析治療を受けています(図2)。腎不全になると日常生活は非常に制限されます。慢性腎臓病の治療の目的は、腎臓病を治癒させることにありますが、たとえ治癒できなくても、腎不全への進行を防止できればよいと考えられます。
慢性腎臓病は腎不全になるまで疲れやすい、頭痛、吐き気などの症状がでてこないので、大人では腎炎が発見されたときには進行していて、手遅れで治療できないことが多くあります。慢性腎臓病の多くは、早期であれば治療が可能です。小児の慢性腎臓病は毎年の学校検尿により、早期に発見されるので、たとえ重症であっても治療できます。このような学校検尿の成果をみて、厚生労働省の腎臓病の研究班では、成人における定期的な検尿の必要性が議論されています。
慢性腎臓病は通常、血尿、蛋白尿が唯一の所見です。血尿、蛋白尿の程度がつよいばあいには腎生検という検査をして腎臓病の診断と、重症度の判定をします。そして、それぞれの腎臓病と重症度にあった治療をします。軽症の場合には定期的に検尿をして、特別な治療はせずに経過観察をしてゆきます。経過中に悪くなってきた場合には、腎生検をして治療をはじめます。定期的な検尿をしているかぎり治療は可能で、手遅れになることはありません。
慢性腎臓病は、もはや不治の病ではありません! 早期発見、早期治療が大切です。
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