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こどもの慢性腎臓病 |
和歌山県立医科大学小児科教授 吉川 徳茂 |
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IgA腎症 |
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日本では、IgA腎症は小児でも成人でも最も頻度の高い慢性腎臓病です。その多くが三歳児検尿、学校検尿、職場検診などで無症候性血尿、蛋白尿として発見されています。成人ではIgA腎症は慢性腎不全の主要原因です。
これまで子供のIgA腎症の予後は良好であると考えられていましたが、最近、長期予後は不良であることがあきらかになってきました。発症後十五年目までに、57%の患者は尿所見正常化しますが、9%は腎不全に進行し、34%の患者では血尿蛋白尿が持続していることがあきらかになりました(図5)。その後は尿所見正常化する患者は少なく、血尿蛋白尿持続患者の多くが将来腎不全に進行すると考えられます。
小児のIgA腎症の予後は成人と同様不良です。従って、IgA腎症の効果的な治療法の確立は小児でも成人でも重要な課題です。
IgA腎症の予後は自然寛解するものから腎不全に進行するものまで様々です。治療を行うに当たっては、個々の患児の予後を予測し、適切な時期に、適切な治療を行う必要があります。
小児のIgA腎症では病初期の腎生検所見から正確な予後の予測が可能です。重症なびまん性メサンギウム増殖を示す子供は腎生検後十年目には約30%が慢性腎不全に進行し予後不良であるため、積極的な治療が必要です。
小児のIgA腎症の発症1年以内の病初期には、腎臓病は進行していません。時間経過に伴い、病気は進行し、発症後4、5年経過すると、かなり進行します。この時期になりますと治療のいかんにかかわらず蛋白尿が持続し、腎臓病は腎不全へとさらに進行してゆきます。著者は、IgA腎症では、腎臓病が進行する前の早期に治療を開始すれば、治療効果が期待できると考えて治療研究をはじめました。
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