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特集  座談会「子どもの食育」
東京慈恵医科大学名誉教授 前川 喜平 先生
東京女子医科大学名誉教授 村田 光範 先生
こどもの城 管理栄養士 太田 百合子 先生



孤食

前川 朝食の欠食とともに問題になっている「孤食」ですが、ひとりでご飯を食べるというのはどうですか。
太田 寂しいですよねえ。大人はまだいいと思うのですけれども、心も育つ、体も育つ幼児期にひとりで食べさせるのは……。子どもって、共に食べることでいろんなことを吸収するわけですね。
 あるお母さんは、「うちは孤食なんてさせていません」と言っていながら、3歳以降になれば、ひとりで食べられるので、「ちょっと食べててね」と言って、洗濯物を干しに行ったりして、結構バタバタ立ってますね。私は、それも孤食だろうなと思います。やっぱり1人食べは苦手なものを残してしまう。
前川 ああ、子どもってそうですよね。
太田 誰かが、「食べようね」とか、「おいしいよ」とか、「ちょっと一口ね」って言うだけで、幼児ってパクッて食べられるものです。
前川 そうですね。結構、ノリやすいですから(笑)。
太田 はい。だから幼児期は、基本的には、誰でもいいですけど、誰か一緒に食べてほしいなと思いますね。
 小学校に入って偏食を直すのは非常に大変ですが、幼児期の偏食ってまた別ものですね。経験がないから、食べたことがないから怖いというものもある。誰かが励ましたり、ちょっと舐めてみたりすると、それだけでどんどん食べるものが変わっていきますので、幼児期は孤食であってはいけないなと思います

村田 私が今までで一番びっくりした、食にかかわる問題があるのですが、まだお乳を飲んでいる赤ちゃんに、スタンドがあって、哺乳瓶をそれで受けているわけです。口にくわえさせて飲ませるという器具を見て、私はおったまげてしまった。人間ってみんなそうだと思うのですが、「同じ釜のメシを食う」というふうに、人間関係の中で食事をする。赤ちゃんであれば温かく抱かれて、そして語りかけられて、できれば母乳などを吸って、というのが本来の食事だと思います。
 ですから、孤食がどういう影響があるとか、ないとかいう以前に、孤食という問題は絶対に避けなければいけないのではないかと思います。私はある原稿に書いたのですが、スタンドで哺乳瓶を持たせて吸わせるなんていうのは、虐待だと思います。
前川 おっしゃるとおりですね。
村田 何でも与えておけばいいというものじゃなくて、動物だってみんな同じことだと思います。ですから孤食は、影響を考える以前の問題として、ぜひ避けなければいけないのではないでしょうか。せいぜい小学生ぐらいまでは、できれば孤食は避けるようにしなければいけないと思います。




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