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特集  座談会「子どもの食育」
東京慈恵医科大学名誉教授 前川 喜平 先生
東京女子医科大学名誉教授 村田 光範 先生
こどもの城 管理栄養士 太田 百合子 先生



園での給食のあり方


前川 それでは、次の話題の「園での給食のあり方」ということで、食品の安全について、いかがですか。管理栄養士の立場から、給食その他で、食品の安全について一言いただけますか。
太田 まず、保育園給食は事故があってはならないということです。いつも100%の事故がないように心がける必要があると思います。
前川 その事故というのは何ですか。
太田 まず、食中毒の問題。不衛生であってはいけない。やはり乳幼児は私たち大人と違って抵抗力がありませんから、その辺は衛生面の管理を徹底しなくてはいけないと思います。それから家庭菜園でいろいろ作って、採れたてのものを食べましょうと言いますが、新聞記事を見ますと、〇歳の子にミニトマトを食べさせて、ノドに詰まらせたという誤嚥の問題もあるわけです。そういった発達面を理解して与える内容に、気をつけなくてはいけないと思います。すべて楽しければいいというわけではなくて、基本はやっぱり押さえておかないと。
前川 よく噛めるとか、食べられる食品で、年齢に合わせた、歯の生え方とか。
太田 そうです。
前川 なるほどね。いま言っている、汚染物質みたいなものは考えなくていいですか。
太田 いいえ、それも考えたほうがいいと思います。ただ、表示を見ても、それが全部本当のことなのかどうか疑ってしまいます 。
前川 そういうデータも偽装ばっかりだから、何を信用していいかわからないですね。
太田 そうなんです。保育園では確かなものと思っていても、騙されていたという事件もありましたね。やはり生産者がわかって、そこから仕入れて、「顔が見える」というのが一番ありがたいですね。地場のものを使ったお料理は、日本には郷土料理って昔からある。そういうものも保育園で伝えていくと、より豊かな楽しい食生活になるのかなと思った。
前川 食の文化が伝わりますね。
村田 これは非常に重要ですが、また難しい面もありますね。今、地産地消というのは地域的にもかなり叫ばれていまして、学校給食でも、保育所や幼稚園の給食も大きな意味ではそこに入ると思いますが、地産地消を30%にしましょうというのが努力目標の中に入っています。それは確かにいいのですが、食べ物も、今は商品としてのマーケットをつくらなくてはいけないですね。だから、マーケットがどのようにつくられているかということが問題で、地場産業もマーケットにうまく乗らないと、例えば安定した供給ができなかったり、価格が大きく変動したりという不安定要素があるわけです。
前川 食品の安全というのは、私たち全体というか、日本の人々すべての考え方の改革というか、そういうことを含めた政策的なものが必要ですね。
村田 そうですね。太田さんのように、専門に、バランスのとれた献立をして、おいしく食事をしても、本質に問題を抱える「食品の安全」というのが保証されなければ、何の意味もないことになってしまいますから。




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