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第28回 母子健康協会シンポジウム |
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季節と子どもの病気 |
1.子どもの特性
神奈川県立保健福祉大学大学研究科科長 前川 喜平 先生 |
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乳幼児は事故を起こし易い |
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子どもの特性の最後に、子ども(乳幼児)は事故を起こし易い、子どもの事故は子ども特別なものがある ということです。このことについては後ほど市川先生が触れられると思いますけれども、まず、図2のプロ ポーションを見てください。赤ちゃんは四頭身で頭でっかちです。頭でっかちだけではなくて、頭の中の顔 面頭蓋と脳頭蓋の比率が大人は顔面頭蓋が大きいのですが、乳幼児は顔面頭蓋が小さくて脳頭蓋が大きいの で、転ぶと頭を直撃するのです。子どもの絵を描くときは必ずこういう絵を描いて、顔を小さく描くと赤ち ゃんになるのです。
もう一つの特徴は軟部組織が非常にまばらで、簡単に骨膜だとか腱膜の下に出血しやすいのでコブができ やすい事です。皆さんはぶつけたってコブはできないでしょう。これはこういう理由です。今度はボーンと ぶつかったときに、頭蓋骨は非常に弾性が強いのでボーンとぶつかって、もとへ戻ってしまうことがあるの です。ボーンとぶつかって凹んだときに、下の脳に損傷があっても表面が平らなこともあります。大人は線 状に骨折するのです。ところが、子どもはボーンとぶつかると山高帽みたいに凹むことがあります。そうい うように子どもは頭部外傷の特徴があります。
もう一つ、保育の場で知っておいてほしいのは、2歳以下の子どもは硬膜下血腫がちょっとした外傷で起 こりやすいことが挙げられます。よちよち歩きで転ぶとか、乳母車から落っこちるとか、子ども同士でふざ けて押して転ぶとか、そういうことで簡単に硬膜下血腫を起こします。すぐ症状が出ればいいのですけれど も、そのときはすぐ泣いて、しばらくたったら遊び出して、大体数時間、数日から2週間ぐらいたってから、 何となく元気がなくなったりゴロゴロしてきたり、頻繁にもどしたり、微熱が出たり、そういう症状を呈す ることがあります。
子どもはよく転びます。転んで頭をぶつけることもしばしばあります。転んだ後で元気がなくなったり、 もどしやすくなったりしたら硬膜下血腫かも知れません。これは、普通の事故、それもコンクリートじゃなくて畳とかマットの上でも起こります。そういうことがあるというのを知っておいてください最後に、表3を見てください。日本は世界一子どもが死なない国です。ところが、1歳〜14歳までの死因の第一位は不慮の事故です。その原因を知っておいてほしいのが表4で、0歳代は不慮の窒息です。この大部分は乳児突然死症候群ということで、0歳児を見るときには窒息に気をつけてください。
次に1歳〜4歳の赤ちゃんを見るときには、一つは溺死。溺れるとか、風呂に入れるとか、水に落ちて死んでしまうとか、あとは交通事故です。手を離して通りに行ってひかれてしまうとか、そういうことに気をつけてください。5歳〜9歳は三輪車とか自転車の事故ということです。
以上の子どもの特性を、ぜひ皆様の現場の保育で役立ててください。
私の話はこれで終わります。
前川 それでは次に、横田先生に、子どもの季節と年齢によってどんな感染症があるかのお話を伺います。横田先生は実地の小児科の臨床で、最も子どもの臨床を科学的に、かつ経験豊かに診ている先生です。恐らくこの方面では第一人者の先生です。どうぞよろしくお願いします。
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