|
|
第28回 母子健康協会シンポジウム |
|
季節と子どもの病気 |
2.季節と感染症 — 保育園で流行する病気とその対策 —
横田小児科医院長・小田原医師会副会長 横田 俊一郎 先生 |
|
(4) 感染症にかかったら |
|
感染症にかかったら、いま言ったようにお薬を飲むことが一番大事ではなくて、まず安静にして、睡眠と栄養と水分をちゃんと補給するということ。これが病気を治すためには、ほとんどの病気で一番大事なのだということをよく知っていていただきたいと思います。
保育園に預けているお母さんは、大抵お仕事を持っているわけで、いつから保育園に連れていっていいのかということが一番問題になるわけです。本当は子どもがちゃんと元気になるまでおうちでお母さんに見ていただくのが一番なんですけれども、なかなかそういうふうにいかない社会になっているところが大きな問題ですね。本当は、お母さんがちゃんと休める社会をつくるのが、私は一番大切だと思っています。けれども、現実はそうはいきませんので、ある程度よくなったところで保育園に戻るということになって、そこでまだ感染力があったりすれば、ほかのお子さんにうつっていくということになります。ただ水ぼうそうのように、かさぶたが全部できればうつらないけれど、その前はうつるというようなことがはっきりわかっているものは、学校伝染病ということで何日間休まなければいけないということが決められていますので、一応それを守るということにはなっていますけれども、ほかにもうつる病気が実は山ほどあるわけです。いつになったらうつらないかがはっきりわかる病気というのは、ごくわずかしかないということを知っておいていただきたいと思います。
(5) 感染症の予防 |
|
それから、園内でどうやって感染を予防したらいいかということですけれども、これは非常に難しいです。発疹が出たときにその子を休ませたらいいか、どうしたらいいかという問題があります。水ぼうそうであれば見るとわかりますし、周りで流行っていて怪しければ、まずお医者さんに行って診てもらうということになると思います。実際にそう言われて受診してみると、普通の虫刺されだったりすることも少なくありません。だからといって保育士さんがいけないと言っているわけではありません。怪しいと思ったら、確かにお医者さんに診てもらうのが一番ですが、あまりにも神経質になり過ぎないことも大事かなと思っています。
また、園内での手洗いとか消毒が非常に大事です。皆さんの手を介していろいろな病気が広がることが多いですから、皆さんがよく手を洗うことは大事なことだろうと思いますし、場合によっては、マスクを子どもに着用させるとか、適当に窓を開けてきれいな空気を入れることも大事かなというふうに思います。
大きな流行が起こってきたときには、学級閉鎖をするとか、例えば行事…いまはちょうど卒業遠足とかいろいろありますね…ああいうものを、かわいそうだなと思ってもちょっと延期するとか、そういうことも時には必要になると思いますので、その辺は園医の先生とよく相談をするのがいいかなと思っています。
(6) 春に流行する感染症 |
|
はしか
具体的な病気のお話をしたいと思います。まず、春に流行する病気。だんだん季節性がなくなっているのですけれども、麻疹は基本的には春から夏の間ぐらい。麦秋といって、麦を刈るころにだんだん流行ってくると昔から言われていますけれども、いまでも確かにそのとおりですが、1年じゅうあります。現在も日本のあちこちでまだ麻疹が出ていて、私のいる神奈川県では、たくさん患者さんが出ているということが報道されています。
麻疹は予防注射を1回していても、うつることがある。皆さんの預かっていらっしゃる幼稚園とか保育園のお子さんは、1歳になってすぐ予防注射をしていれば、通園中にうつるということはほとんどありませんけれども、いま大学生がかかるということが話題になっていて、小学校に入るときに2回目の接種をするようになったところです。この4月からは、中学一年生と高校三年生の方に、これから5年間続けて注射をして、麻疹の免疫が下がった人たちを救う事業がもうすぐ始まる予定になっています。
保育園で、ほとんどの方は麻疹の予防接種をしていると思いますけれども、していない方は非常に危険だということで、1歳を過ぎたら、必ずするようにお話ししていただくことが大事です。していない人は、熱が出たときには麻疹の可能性があるということも考えなければいけないわけです。
私の友達の先生で、ひとりひとりちゃんと麻疹のチェックがしてあって、1歳以降で麻疹の予防接種をしていなくて熱が出て受診したら、その人は来るたびに隔離室に入れられるという、ちょっとイヤミ みたいな感じですけれども(笑)、そうして何とか打ってもらう。そういう活動をしている先生もいらっしゃるぐらいです。でも、これは自分だけのためではなくて、ほかの人を守るためにも、やはり何とか打っていただきたいと思っています。
|