母子健康協会 > ふたば > No.72/2008 > 季節と子どもの病気 > 4.質疑応答  > (2)
第28回 母子健康協会シンポジウム 季節と子どもの病気
4.質疑応答(2)



— ニンジン療法をもっと詳しく教えて下さい

市川 実は薬局に行くとニンジンのペースト、あるいはパウダーを売っています。それでつくられてもいいですし、昔はニンジン粥とかもつくっておられたみたいですけれども、私が外来で簡単に説明しているのは、先ほどもちょっと言いましたけれども、ニンジンの皮をむいて大根すりですって、それにメリケン粉を混ぜて、耳たぶ程度の自分の好きな硬さ、柔らかさで、蒸すか炊くか、していただいて、それを食事の前に前菜として食べさせていただく。量は大さじスプーン1杯ぐらい、親指2本ぐらいというふうに言っています。機能性下痢にはかなりよく効きますので、「だまされたと思ってしてごらん」ということをよくお母さんに言っています。

— 現在5歳の男児。三歳児のときに熱性けいれんを起こし、5歳児になってから保育中にヨダレが出た。明らかな睡眠障害が熱性けいれんで起こるのか。突然倒れて何事もなかったようになるときもあり心配です

前川 脳波検査をしているようですけれども、元来、髄膜炎とか脳炎とか脳腫瘍とか、頭に関係のない病気で熱が出て起こす子どものけいれんをすべて熱性けいれんと言います。だけど、普通の熱性けいれんは後遺症を起こさないことになっています。ですから、この方の熱性けいれんそのものが、例えば時間が長かったとか、全身けいれんではなかったとか、そういう幾つかのことが疾患の鑑別になると思いますけれども、原則として熱性けいれんというのは後遺症を残しません。
 子どもは、良性無熱性けいれんということが言われているくらい、下痢など何かしたことで簡単にけいれんを起こすことがあります。ですから、若干発達障害ということもあるようですので、決めつけないで小児神経専門家に診てもらわれるのが一番いいと思います。それから、突然倒れるとかいろいろな症状が、家庭での扱い方とか、ストレスでも起こることがありますので、いろいろなことを総合して対応されたらいいのではないかと思います。

— みずいぼを小児科に行ったら、取らなくていい、皮膚科に行ったら、これは取らなければだめだと言われましたが、それにプールに入っていいでしょうか

横田 みずいぼの質問がきっと出るだろうなと思いました(笑)。皆さん非常に悩んでいらっしゃると思いますけれども、みずいぼはウイルスによって起こる病気で、みずいぼの頭のところをよく見ると、真ん中がちょこっとヘコんでいます。周りを圧迫すると白い芯みたいなものが出てきて、その中にいっぱいウイルスが詰まっているわけです。そこを引っ掻いたりして爪の間についたり、何かで擦れたりすると、ほかのところへうつっていくという形でうつっていくのです。
 みずいぼは100%自然に治る病気です。必ず治る。大人の人でみずいぼにかかっている人というのはほとんど見ることはありませんし、十何年もずっと小児科をやっていますけれども、みずいぼが治らないで続いている人はいないので、必ず治ります。ほかの人にうつるということもある意味本当なわけです。ですけれども、隣にいたらうつるというわけではありません。接触感染でうつりますので、裸で体をぶつけ合ったりすればもちろんうつる可能性はあります。
 プールでうつるかどうかの問題は、先ほどアデノウイルスの話をしましたけれども、塩素が入っているプールではウイルスが不活化されるので、うつりにくいということがわかっています。随分昔でしたけれども、たしか岡山市かどこかの小児科医会では、「みずいぼの子をプールに入れてはいけない」というのはやめようという取り決めをしたということがありました。ただ、保育園などで、普通の水道水…水道水にも少し塩素は入っていますけれども、そういうところでバシャバシャやっていると、うつる可能性がなくはありません。一番うつりやすいのは、直に触れるもの。水泳などをやっていると、浮輪とか水泳教室のビート板、ああいうものをほかの人が使うとうつっていく可能性が大きいのではないかと思っています。
 ただ、治るのに時間がかかます。大体半年から1年ぐらい。1年以上続く人ももちろんいます。早い人では三〜四カ月から半年くらいで治っていきますけれども、治る頃になるとみずいぼの周りがちょっと赤くなってきて、化膿したみたいな感じになり、あるとき驚くほど急速にバッと取れるんです。あんなにあったのにどうしたんだろうというぐらい、急によくなる。それは、血液の中に抗体ができて、ウイルスがみんな排除されて治っていくわけです。時間がたてば必ずそうなるわけです。
 すぐにプールに入れたいから取ってくださいといって来るのですけれども、皆さん、みずいぼを取っているところを見たことありますか?病院に行くと、小学生くらいでもやめてくださいと大泣きして、それを押さえて取るわけですけれども、私たち小児科医としては、なるべくそれはやりたくない。自然に治る病気だから、やりたくないと実は私は思っています。もちろん頼まれて取るときもあります。数が少ないときは取ろうかなというふうに思いますけれども、もう取りきれないぐらい多いものを、何回も来させて取るということは原則していません。
 つまむ以外にも、硝酸銀で上を焼く方法とか、幾つか方法があります。漢方薬のハトムギ、「ヨクイニン」というお薬がありまして、そういうものを飲むと少し免疫機能が高められて早くよくなることを実際に経験することがありますけれども、みんなに効くというわけではありません。園でどうするかというと、画一的にこうしたらいいという方法がないわけです。だからみんな悩んでいるのです。私個人としては、数が少ないうちに、小さいもので取りやすいものであれば取りますけれども、多くなったら原則的には取らない。プールはできないといったら、じゃ今年はプールやめようというぐらいのつもりで待っていてもいいんじゃないのと言っていますけれども、結局、最後はお母さんとの話し合いですね。お母さんとお医者さんで話し合ってどうするかということを決めるしかないと思います。画一的に絶対取らなければいけないとか、そういうことにはできないと思います。
 皆さんがプールに入れないかどうかというのは、これも園での判断ということになります。入れているところもあるだろうと思いますし、うつされたと言われるのが嫌であれば、絶対入れないという園もあると思います。私が園医をやっている保育園でも、入れないというところもあるし、このくらいだったら入れているというところもあります。どれが正しいということは、ないと思います。基本的に皮膚科の先生はわりあい取るのが好きだということは確かです。私たちは子どもの味方ですから、痛いことはなるべくしないということを考えている先生が多いと思います。もちろん小児科の先生でも取る方もいらっしゃいますけれども、みんな考え方がばらばらなんだということを知っておいていただきたいと思います

市川 私は、「みずいぼを取る医者は医者じゃない」と発言して新聞に載って、福岡市の皮膚科学会に突っ込まれました(笑)。横田先生の意見に大賛成です。治るとわかっているものを…あばたになれば別ですけれども、そんなことはないので。

— スイカ、キュウリ、バナナなどフルーツアレルギーのお子さんの症状を教えていただきたい

市川 キウイは昔から有名ですね。ソバを食べたときみたいに強い全身のアナフィラキシー(アレルギー反応)というのはあまり聞きませんけれども、局所的に唇がタラコみたいになるとか、すごくノドをむずがるとかいうことはあります。最近、アレルギー検査を実施していて、バナナが多いなというふうに感じています。農薬ではないでしょうけれども、恐らく、そういうのをかなり使ってつくられているのかなと、勝手に想像していますけれども、非常にバナナが多くなったという印象を持ちます。バナナアレルギーの方は、食べたがらないというのが一つありますけれども、ミミズが這ったみたいにブーと赤くなるという形で、唇が赤くなる、ノドがいがらっぽく咳払いを始める。その程度で、多少吐いたり下痢したりとか消化器症状が出ることもありますが、それ以上にはならないと考えています。スイカの場合も一緒です。スイカ自体はそんなにたくさん経験していませんけれども。
 ピーナッツとかソバとか豆類のほうが、やはりアレルギーは強いと思います。あるいは甲殻類とか、そういうほうが反応としては強く出ますので、フルーツのアレルギーのある方が、救急車で病院に運ばないといけないほどひどいアナフィラキシーを起こした経験は僕自身はないので、あまりそれは考えられなくていいのではないかと思います。現実的には、唇がタラコみたいになったら間を置かずに病院を受診していただきたい。お母さんが来るのを待ってというのは程度次第で、先に病院で落ち合うとかいうことをされたほうがいいのかもしれません。そのように思っています。




母子健康協会 > ふたば > No.72/2008 > 季節と子どもの病気 > 4.質疑応答  > (2)

事業内容のご紹介 協会の概要活動の概要設立の経緯協会のあゆみ健康優良幼児表彰の歴史
最近の活動のご紹介
小児医学研究への助成 機関誌「ふたば」の発行シンポジウムの開催 Link:Glico