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第27回 母子健康協会シンポジウム 子どもが育つ保育
4.質疑応答(7)



― お腹にくる風邪はロタ、ノロウイルスと関係があるでしょうか

市川 お腹に来る風邪はノロとかロタと言っています。なぜかというと、先ほどから出ていますエンテロウイルスは夏場のお腹の風邪だという表現を使っていますので、そのように理解していただいていいのではないかと思います。

― 嘔吐と下痢をしていてもノロの診断は時間がかかるからと、近医では検査せず、普通登園をOKにしています。医師の温度差にどうやって対応すればよいでしょうか

横田 ノロは基本的には確定診断できないと思ってください。ノロウイルスですねと言われても、「たぶんノロウイルスでしょう」と言っているだけだというふうに思ってください。いままで診断されているのは、ほとんど保健所とかで、集団発生したときに便を調べてそれで診断しているわけです。いま、診断キットが出てきたのでクリニックでもできるようになりましたけれども、使っている人は現実にはまだほとんどいないと思います。
 だから、たぶんノロウイルスでしょうと言われているだけのことで、じゃ、ほかのウイルスとノロとどう違うかというと、あまり違わないわけです。ただ、ほかの人にうつりやすいので、きちんと手を洗うとか、消毒するということは必要ですけれども、ノロだから来てはいけないとかそういうことではないわけなので、あまりノロという名前に惑わされないようにしたほうがいいかなと思っています。
 それから、感染症が流行しているときの0〜1歳児クラスの玩具の消毒。これは大きな問題です。私は小児科のクリニックをやっているので、待合室にもいろいろなぬいぐるみとかおもちゃとかがあります。もちろん、そういうものを介して患者さんに病気がうつる可能性があることも知っています。全く置かなければその危険はないわけだけれども、壁をなめたりする子もたくさんいますし(笑)、それ以外でもうつるのですけれども、確かにぬいぐるみなどでうつっているなと思うことがあります。
 私のところでは、基本的に診療が終わったときに拭くとか、週1回消毒するということをしていますけれども、去年の暮れにノロらしい感染性胃腸炎がものすごく流行して、うちに来た子が次々と2日後ぐらいに吐いて下痢するというのがありました。そのときに思い切って「しばらくおもちゃはナシ」としました。おもちゃは少しは置いてあるのですけれども、ぬいぐるみとかはいま隠しています。もうちょっと落ち着いたら出そうと思っていますけれども、なかなか難しいところですね。おもちゃの効用と、それによって感染が広がる危険と、それを天秤にかけてどちらかに決めなければいけないと思うので、おもちゃが全くだめというふうにも言えないですし、やはりある程度消毒をきちんとすることは大事です。消毒しやすいものを置いて、1日1回ぐらい消毒するというのがいいのではないかと私は思っております

― 昼寝中のブレスチェックについて、0歳は5分おきにしていて、1〜2歳を15分おきにしてチェック表に記入しているのですが、どういった方法がベストなのでしょうか

横田 最近までブレスチェックというのは息のにおいか何かをチェックするのかなと思ったぐらい全く知りませんでした。インターネットで見て、保育園の中でブレスチェックをやっているということを初めて知ったのですけれども、0歳児の保育というと大抵、保育士さん1人にお子さん3人ぐらいですかね。大体いつも見ているようなわけですけれども、私のいる保育園ではこういう言葉を聞いたこともなかったので、あまり気にしていないのだと思います。もちろん、子どもから目を離さないということは大事だと思いますけれども、時間を決めてこういうふうにチェックをすることが、突然死を減らす上で本当に必要なのか。それだけの労力と効果とを考えたときに本当に意味があるのかどうかということは、ちょっと私にはわからないですね。普通にして、よく目を離さないということだけでもいいのではないかと思いますけれども、ブレスチェックをやっているという保育園はどのくらいありますか?
〔挙手多数〕
横田 そんなにやってるんだ。それは何か都のほうから言われたりしているのかしら?

― 第三者評価で

横田 第三者評価で言われているんですか。なるほど、そうですか。
市川 私がSIDSの裁判にかかわった症例は、病院の保育園だったんですけれども、10分おきに巡回する。その10分の間に呼吸停止になっていたということで、「窒息させた」という保護者の意見と、その保育園側は「SIDSだ」ということで、その争いにちょっとかかわったことがありまして、そのとき、10分おきに巡回…まあ、看護師さんの巡回というイメージで僕は見ていたんですけれども、そのブレスチェックだったのだろうと思います。10分おきにやっても、いま横田先生がおっしゃったように、本当にそれが防げるものかどうかというのは懐疑的だなというふうに思います。その子はうつ伏せだったんですけれども、それよりも寝具の硬さだとかそういう環境で、チェックする頻度とか時間を決めていいのではないかというふうに思いますけれども、どうでしょうか。仰向けで普通に寝ているお子さんを10分おきに見る必要は、私はないのではないかと思っています。

― 園では38度から39度の発熱で園児のお迎えを保護者に要請していますが、インフルエンザ流行などの時期であると、医者に『発熱した当日に来られても困る』と言われたと保護者のお話がありました。病院をかえたほうがよいと思いますか。発熱時の受診のポイントを教えていただきたいです

市川 インフルエンザの時期ですけれども、インフルエンザの迅速診断キットは保険の適用が大体きくのですが、かなり縛りがあって、先ほどのRSウイルスだったら、入院するお子さんじゃないとチェックしてはいけないとか、そういう部分は縛りが強いと思われます。ということを含めて、インフルエンザの迅速診断キットは発熱から六〜八時間経たないと陽性になりませんので、たぶん、「発熱してすぐ来られても、インフルエンザかどうかは診断ができませんよ」という意味合いでおっしゃったのだろうと思います。まあ、言い方が悪い医者はたくさんいますので(笑)、でも、きっとそういう意味だというふうに理解します。
 我々は救急をやっていると、3時間前に熱が出たと来られて、インフルエンザじゃないかどうか調べてほしいという方がたくさんおられるんですね。「調べてもわかりません」と言うと、「そんなこと言わずに調べて」とか、「そんなことを言われても」とか、こっちも「そんなこと言わないで」という感じになる(笑)。だから、たぶんそういう意味で「困る」というふうに医者のほうは言ったのではないか、そんなふうにプラス思考していただければというふうに思います。考え方は色々でしょうが、病院は変えなくてもいいとおもいますが。
前川 インフルエンザは熱が出て直ぐ検査をしても陽性になりません。予防接種は咽の局所免疫はできませんので感染は完全に防げません。効果の判定になかなか難しい問題があるのです。

ほかに質問がないようでしたら、シンポジウムはこれで終わりたいと思います。長時間ありがとうございました

講師プロフィール

前川 喜平(まえかわ きへい)先生
神奈川県立保健福祉大学大学院研究科科長、東京慈恵会医科大学名誉教授。
東京慈恵会医科大学卒業後、同大小児科教授を経て現職。
1996年より(財)母子健康協会主催シンポジウム統括を務める。同協会理事。日本タッチケア研究会会長、日本医師会乳幼児保健検討会委員長。
主な著書に 「小児神経と発達の診かた」(新興医学出版社)、「今日の診断指針」(共医学書院)など。

横田 俊一郎(よこた しゅんいちろう)先生
横田小児科医院院長
1978年・東京大学医学部卒業後、大学病院小児科、社会保険中央総合病院小児科部長を経て現職。血液・悪性腫瘍の専門家。
小田原医師会副会長、日本外来小児科学会総務担当理事、日本小児科医会常任理事。
主な著書に 「子どもの医学館」(小学館)、「こころってなんだろう」(岩崎書店)など。

市川 光太郎 (いちかわ こうたろう)先生
北九州市立八幡病院副院長・小児救急センター長
1977年・久留米大学医学部卒業。小児救急医療・小児感染・虐待の専門家。 日本小児救急医学会理事長、日本SIDS学会理事、日本子どもの虐待防止学会評議員。
主な著書に「小児救急治療ガイドライン」(診断と治療社)、「児童虐待イニシャルマネジメント」(南江堂)など。



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