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第27回 母子健康協会シンポジウム 子どもが育つ保育
4.質疑応答(6)



― 10カ月の乳児がよく転ぶということ、食欲がないということで受診して採血したら、サイトメガロウイ ルスの感染症であると言われました。誰もが感染するからと集団保育OKの指示があり、五日ほど休養して 登園してきましたが

横田 サイトメガロウイルスというのはごくありふれたウイルスで、誰でもよく感染するヘルペス属のウイルスの一つです。ヒトのヘルペス属のウイルスというのは、一度ヒトに感染すると死ぬまでその人の中に残っているウイルスです。有名な口唇ヘルペスを起こす単純ヘルペスのI型・II型というのがあって、水疱瘡のウイルスもヘルペス属。あとサイトメガロウイルスとEBウイルスというのがあり、6番目、7番目みつかったウイルスが、突発性発疹のウイルスで、いま8型というのがエイズと関連して見つかってきていますけれども、そういうポピュラーなウイルスなのです。
 だから誰でも感染するようなもので、時に感染したときに肝機能の障害があったり、発疹が出たり、そういうので診断がつく人もいますけれども、ほとんどの方は知らないうちに感染している。だから陽性であったといっても、転びやすいのがその症状かというとそんなことはありませんので、あまり関係がないのではないかと私は思います。ですから、あまり休ませる必要もないだろうと思います。

― EBウイルスの感染症にかかってGOT・GPT(肝機能)が高めで、まだ悪化せず、登園しているお子さんがいます。悪化すると骨髄移植の可能性もあると言われています。EBウイルスは体の中のどこにあるものなのか教えてください

横田 EBウイルスもヘルペス属のごくありふれたウイルスで、随分前に週刊誌などでキス病といって、思春期になってキスをするようになると相手からうつると話題になりました。このウイルスは、感染したらすぐ病気というわけではなくて、一度かかると体の中にずっと潜んでいますので、唾液の中なんかに自然に出てきているウイルスなのです。どこからでも感染するウイルスで、初めてかかると伝染性単核症という名前の病気になることがあります。発疹が出たり、リンパ腺がすごく腫れたり、肝臓、脾臓が腫れて肝機能が悪くなる症状です。ほとんどの人がかかっているのですけれども、病気の人はごくわずかしかいませんので、知らないうちにかかっている人が大部分なのです。
 症状がある人にも特効薬はありませんが、経過を見ていて自然に治るものが大部分です。中に男の子の特別な病気で、このウイルスにかかると死んでしまうという、ごく稀な免疫不全というのもありますけれども、そういうことは一般的には考えなくてもいいのではないかと思いますので、あまり心配する病気ではないと思っていただければよいでしょう。

― 保育士さんで膠原病のような症状が出た人がいたのですが、どうやら手足口病のウイルスからではないかと先生に言われたそうです。しかしその後、症状はなくなりました。手足口病に大人がかかるとどうなりますか

横田 これは手足口病のせいではないのではないか、膠原病みたいな症状はあまり出ないと思います。よく患者さんから「大人でもかかりますか」と言われるのですが、手足口病にしても何でも、大人だったらかからない病気というのはあまりないです。かかってない人はかかるわけです。それは大人も子どももありません。麻疹も江戸時代は流行があって、バーッとみんなかかるとしばらくなくなり、また十年以上たって大きな流行が起こったときには、大人が重くなったということが記録されています。かからないのは免疫があるからかからないわけで、手足口病にあまり大人がならないのは、小さい頃にみんなかかって抗体があるからです。でも、中には大人の方でも手足口病にかかることがあります。大人では、やはり同じように手足に白い発疹ができて、口内炎ができたりするのですが、子どもと違うところは手足にできる発疹が少し痛い。子どもはほとんど無症状ですけれども、大人の人は結構痛いということが多いです。そのくらいで、あまり膠原病の症状は出ないと思います。膠原病の症状が出るのは…膠原病というか、手足がすごく痛くなってリウマチみたいな症状が出るもので有名なのは、先ほどお話ししたりんご病(伝染性紅斑)です。子どもはほとんど発疹だけで無症状ですけれども、大人がかかると、微熱があったり、すごく関節が痛くなって、検査をするとリウマチ反応が陽性に出たりすることがあります。リウマチと言われて治療されているような人が、しばらくたったら子どもがリンゴ病になって、何だリンゴ病だったんだということがわかったりするようなことも、日常の外来ではときどき診ています。

― 手足口病と髄膜炎、エンテロ71について特徴を教えてください

市川 平成15年、台湾と熊本と大阪で10例前後、お子さんが亡くなられました。エンテロ71番による手足口病、ほかにコクサッキーA群16番という2種類で手足口病が起こりますので、71番というウイルスで起こった手足口病で髄膜脳炎が発症して、中枢性の肺水腫、呼吸障害が起こって呼吸不全で死亡されたました。
 熊本という近くでもありますので、何人か診た先生とも連絡を取っていろいろ勉強させていただきましたけれども、熱が普通の手足口病に比べて高い。発疹がたくさん出るとかそういうのではなくて、いわゆるけいれんが来たり、インフルエンザ脳症とよく似ているのですが、ちょっと意味不明なことを言ったりとかいうことで、手足口病にしては…。たぶん手足口病で気づかずに保育園に来られるというケースはあるかもしれませんけれども、診断がついた時点では、少なくとも熱が下がるまではおいでになられないと思いますので、手足口病の髄膜脳炎に関しては、保育園で気をつけるというのはあまりないのではないかと思います。しかし、手足口病に限らず、熱のわりに元気がないとか、いつもと違って、この子は38度くらいでも元気なのに元気がないとか、ちょっと意味不明なことを言うとか、そういうときには注意しないといけないと思います。

― 指定ではない予防接種、おたふく風邪などは受けたほうがよいですか。日本脳炎は副作用があるとも聞きます

市川 これは任意接種ですけれども、やはり受けたほうがいいと言わざるを得ないと思います。特におたふく風邪と書いていますけれども、おたふく風邪とかは自然にかかるからいいよとか、昔、私も言っていた時期もありますが、実はおたふく風邪の合併症に、1万数千人に1人ぐらいの頻度で、片耳だけ聞こえなくなる…つい2年半か3年くらい前に、日本耳鼻科学会から、そういう聴力障害を起こした人が多い、小児科医はもっと予防接種を勧めるべきだという意見が出されました。そういうのを踏まえて、「なさったほうがいい」というふうにお答えしていただければと思います。
 日本脳炎の今のワクチンは、マウスの脳を使っていたということや副作用があって、中止になっています。それで製造ラインがストップして、新しいワクチンが早く出るのを待っているのですけれども、ここ1、2年、ちょっと見通しが立たないというお話を昨年、聞きました。今年度中にということはあり得ないと思いますが、早くても来年度もしくは再来年度くらいには新しい副作用の少ないワクチンが出ると思います。
 厚労省の勧告で予防接種を勧めなくなって、日本脳炎の感染者、2歳のお子さんが熊本で発生しました。広島でも抗体が陽性の方が出たということをお聞きしました。

― 日本脳炎の予防接種に関して、保育園ではどのように保護者に説明したらよいでしょうか

市川 これは非常に難しくて、我々も説明に四苦八苦しているような現状です。一番言えることは、東南アジアとか台湾とかに旅行をなさる方は打たれたほうがいいでしょう。これは簡単ですね、お父さんが向こうに仕事で行かれるとか。そういうのではなくて日本に在住されていてということになると、蚊にかまれないようにして、蚊も、ヤブ蚊とか、シマシマした大きな蚊は大丈夫だからいっぱいかまれていいけれども、赤っぽい小さい蚊はだめだよという、よくワケのわからん説明をしているのが現状です(笑)。だから、早くつくってほしいなというのが本当の気持ちです。実際、しないほうがいいと厚労省が判断して我々にそういう勧告を出したのは、予防接種の副作用の率と、いまの日本での日本脳炎の発生率を考えれば、しないほうがいいということだったようです。どうしてもするという方もおられますが、そういう方には、ワクチンを少し隠して取っておいて打ってあげているというのが現状です
前川 日本脳炎は北海道の人は予防接種を受けてないのです。予防接種を受けないで九州とか沖縄に来ても、かかったという人はほとんどいない。いまの日本での危険率はその程度です。いまブタと人間が住み分けていますね。だから、養豚場とか何かのそばに行かない限り、普通にしていればそれほど怖くないということです。もし受ける機会があっても、受けても大丈夫だということではないかと私は思います。その程度が少しヒントになるかな。
横田 蚊は大体2キロぐらい飛ぶのだそうです。だから、養豚場から2キロぐらい離れていればブタを刺した蚊は来ないということと、あと、WHOは、日本でいま使っている予防接種は全く問題ない、安全な予防注射だということを宣言しています。ただ、新しい予防注射になったらいま言っている副作用はないかというと、やってみないと、わかりません。いま起こっているアデム(ADEM)という神経炎は普通の風邪でも起こる病気ですので、本当に予防注射のために起こっているかどうかさえもはっきりわかっていません。それは、新しいワクチンが発売されれば、はっきりすると思います。

― 大人の百日咳、麻疹の感染者が発生しているとのことですが、三種混合を接種していても感染しており、保育園の職員としてどう対処していくべきかお考えをお知らせください

市川 保育園の職員として大人の感染者にどう対処するか、ではなくて、自分たちはどうすべきか。そういうふうに判断して、自分の抗体保有状況を知っておくことが一番望ましいことですね。でも、保育園の先生みたいに子どもに囲まれた職業ではベテランほどいろんな免疫がつくから大丈夫と、私は思っています。
 実は私はいろんな予防接種を1回もしたことがないんですけれども、1回もかかったこともありません。これだけが自慢です(笑)。30年小児科医をやっていて1回も風邪をひいたことがないというのを売りにしていますけれども、それだけ病気の人を診るといろいろな抗体がつくという意味で、たぶん先生方もたくさん抗体を持っておられる。そういう意味では新人の方は少しチェックする必要があるかもしれません。

 



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