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母親たちの奮闘と医学の進歩 |
熊本大学小児科教授 遠藤文夫先生 |
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理想的な予防医学 |
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物事には始まりがあります。医学分野でも画期的なシンポの裏には重要な科学的な発見や発明が必ずあって、医療の進歩を支えています。一つの病気についていえば、病気を初めて見つけた人、病気の治療法を見つけた人、そして診断方法を開発した人など多くの貢献がありました。これはお医者さんや医学者の貢献のことですが、それとは別に母親たちの熱意があったことも忘れてはなりません。そのことを今日は書きたいと思います。 生まれてすぐの時期、まだ病気の症状もなく、病気かどうかわからない時期に赤ちゃんの血液を極めて少ない量をつかって、まれな疾患を発見し、病気の症状が出る前に治療を開始する。それによって病気の発症を予防し、とくに重い障害を残さないようにする。そのような医療が現在日本、米国、欧州などでは広く行われています。医学の分野では「新生児マススクリーニング」といいます。「マス」というのは大量に広く、という意味で「スクリーニング」とは古いわけの意味です。多くの人たちを対象にして病気かどうかの古いわけをするという意味です。 このような理想的な予防医学とも言うべき医療サービスの提供は「フェニルケトン尿症」と呼ばれるまれな遺伝性疾患を対象として1960年代の米国で始めて開始たれています。今ではこのシステムは最新技術を取り入れて大きな進歩をとげ、20種類以上の病気を症状が出るまえに診断する方法として先進国では普及しつつあります。
21世紀に今から考えても驚くべき医療サービスが1960年代に始まった裏には一人の偉大な生物学者の貢献がありました。その人の名は米国人微生物学者ロバートガスリー博士です。ガスリー博士は1961年にフェニルケトン尿症を生後すぐに簡単に診断する方法を開発しました。この方法はガスリー法あるいはガスリーテストを一般に呼ばれています。それに至るまでの医学の歴史の中には多くの人の貢献がありました。そこで、ガスリー博士とそれ以前に病気を見つけた人、治療方法を見つけた人について紹介します。
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