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第29回 母子健康協会シンポジウム 親と一緒に子育てを
1.コミュニケーション保育の実践
私塾まきば代表 山田 雅井先生



おもちゃで育つ
 どきどきしたり、満足するという経験が多ければ多いほど、豊かな言葉、豊かな人間関係をつくっていかれるのではないかと思います。子ども同士の遊びが満足するために不可欠なのはあそぶための道具です。
 子どもたちはともかく遊ぶことが大好きです。テレビがなくても、一日中飽きずによく遊びます。でも、空想をしたり、なり切るために、環境をつくってあげるのが大人の役目だと思っています。別におカネのかかるものが周りになくても、段ボール一つあることで、布が一枚あることで、子どもたちは見立てることができます。
 布を幾つか用意しておいてあげると、布だけで、シートにもしますし、洋服にもしますし、ヒーローにもなれますし、いろいろな形で遊ぶことができますので、自分の身をまとえるような、また、敷いてその上で何かができる空間をつくれるような布が幾つかあると、子どもは、仕切りに使ったり、場所設定に使ったり、役割になり切るためのものに使ったりします。
おままごとにしても、決して高価なものでなくてもいいです。100円ショップのお台所道具でも構わないと思います。あれば、必ずそこでやり取りが始まります。布でつくったお手玉が十個あれば、そこでもうパーティーごっこができます。手作りのもので十分だと思います。なければ、紙を刻めばお蕎麦になります。そこに、「ごっこ」、関係をつくる、つなぎが必要なんですね。何かつくってあげると、子ども同士でコミュニケーションを取って先へつなげることができます。でも、そういうのが苦手な子もいます。例えば組み立てるものが好きな子、積み木とか車で遊ぶことが大好きな子、遊びに好みがあるようですね。
 昔、ある保育園にお手伝いに行ったときに、大きなおもちゃ箱の中にたくさんおもちゃが入っているのですが、どのおもちゃをとっても、レールが三つ繋がったと思ったら次はないとか、同じものが幾つもあるけれども微妙に違っていたりとか、どれをとっても満足して最後まで遊べるおもちゃがなかったときがあって、これはちょっとかわいそうだなと思ったことがありました。
だから、粗末なものでもいいですから遊びきれる環境を整えてあげたいですね。最近、ホームセンターなどで木片を売っていますね。たくさんあると、子どもたちみんながそれで遊ぶことができます。一人で三つ、五つ並べたら、次はもうないというのではなくて、満足できるだけのものがそろっているのはいいなあと思います。ずうっと並べていくだけで一つの世界をつくっていくことができます。そうして子どもたちか空想していかれる、想像していかれる「材料」は与えないと、どんなに自由遊びの時間をあげても満足し切れずに終わってしまいます。
ですから、高価なものがあればいいのではなくて、みんなが最後まで満足して遊べるものを、そのとき、そのときで考えてそこに置いてあげられると、本当に子どもたちは満足できると思います。
 うちは人数が少ないせいか、毎年、カラーが違うんですね。「今年の子はあまりごっこ遊びしないね」とか、「今年の子はゲームが好きだな」とか、そういう感じです。細かいゲームを飽きずにやっている子たちには、少し余分にそういうものを置いてあげたりとか、いくら置いといてもさわらない子もいますので、その子のために何を置いたらいいかということを見極めつつ、一学期、二学期、三学期と、出してくるおもちゃも変えていくんです。最初、飛びつきやすいもの、そして、そこで時間をゆったり持てるもの、その子に合ったものを幾つか出してみて、さわらない物は減らしていって、飛びつきやすいものを多く置いていく。
 まず入り口は、その子たちに合わせたものを考える。だんだん、もう少し高度なものをやってもらいたいとか、ゲーム類にしても、もっと子供同士でやっていってほしいものについては、だんだん仕掛けていって、子ども同士ができるように三学期まで持っていくという形で職員間で話し合って、設定するおもちゃの内容を変えています。そういう形で、自由遊びを豊かにするためには、大人がどれほど設定をできるか、見極めができるかということが大事だと思っています。




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