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第29回 母子健康協会シンポジウム 親と一緒に子育てを
総合討論(5)



―三歳の子どもで、常に興奮したり、うれしかったりするときも、相手の顔をつねったり叩いたりする子がいます。「それはいけないのよ」などの言葉で丁寧に知らせていますが、よりよい対処の方法があれば教えてください。

小林 問題行動の子どもさんを見るときに、私は、「その子は、正しいやり方を教わっていなかったり知らない子だと考えてくれ」というふうに言います。人間が本能的に行動すると大体攻撃行動になって、叩いたりつねったりとなってしまいます。そのときにちゃんと大人のほうが見ていて、解釈してあげて、「うれしいときはこうやってやるのよ」というのをして見せて、教えて、それを根気よくしていただくことが大事だと思います。そのときに注意喚起として、「ダメッ」ということを言うことは間違っていないと思います。
 いま、あえて「注意喚起」という言い方をしましたが、叱るのではなくて、「そのやり方は違うんだよ」ということを注意喚起する意味で「ダメ」という言葉を使っていくことは構わないと思います。でも、その後に必ず、「こういうときはこうやってね」と。最後に「そのほうが先生もうれしい」とか、「私も○○ちゃんのこともっと好きになれるからね」というようなことをつけ加えていくことをきちんと繰り返せば、大体の問題行動は消失します。
 ただ、なかなか違ってこなく見えるというのは、実はそういう問題行動の基本というのは小さい頃の親の子育てから始まっていますので、そう簡単には変わってきません。でも、そこで変えてあげないと、その子が一生苦労することになります。だからこそ、その場、その場で短く注意喚起する言葉を入れて、すぐその後に「こういうふうにしたらいいんだよ」ということを教えてあげる。最後に、「わかってもらえてよかった」とか、「もっと好きになれるよ」ということをちゃんと伝えていく。その三つを確実にやっていただくことが大事です。
 きついことを言いますが、保育園、幼稚園を回って保育士さんのことを観察していますと、子どもに何かしてもらったときに、ハイと受け取る保育士が非常に多いです。わかりますか。何が悪いの? と思うかもしれませんね。なぜそのときに、ひと言、ありがとうとか、ご苦労さまと、声をかけてくれないのかなと思う方がものすごく多いです。
 極論を言うと、私の回っているところで大体七割の保育士は、「○○ちゃん、何々持ってきて」と言って、持ってきてくれた途端に、ハイッて受け取るわけです。そこもいま言ったことと同じ精神で考えたら、「ありがとうね」とか、「今度はこうやって渡してね」とか、いろいろなことを教える機会になりますので、ちょっと気をつけていただけるとうれしいなというふうに思います。

―若いお母さんの言動が自由闊達で、言葉遣いを日本語に置きかえて直してあげたいのですが。

―職員から相談されやすい、話しかけられやすい資質、方法があったら伺いたいのですが。

山田 保育者の方はどのような言葉遣いで普段、生活していらっしゃいますでしょうか。ともかく子どもたちは、日中ほとんど幼稚園、保育園にいるのですから、保育者どうしの会話、言葉遣いが子どもにとっては大きいのではないでしょうか。ですから、子どもが気づくと親も気づいているかもしれないと思います。
 私たちも、うっかり言ってしまうことがあるじゃないですか。「○○ちゃ〜ん」なんてやったほうが、すごく表現として親しくていいときもあるけれども、子どもにこの真剣さを伝えたいというときに、ベラベラため口でしゃべっていれば子どもに伝わらないと思うのです。やはり子どもたちにこの真剣な思いをきちんとした言葉で伝えると、子どもも、あ、これはきちんと聞かなきゃいけないんだという思いになると思います。
 子どもの話を聞くときも、きちんと聞いてあげることが大事です。若い保育者に家の悩みを打ち明けた子どもがいるんですね。家庭のお父さんとお母さんのことを保育者にベラベラ相談した子がいたこともあったのですが、心を開けば、子どもたちも心を開いてきますので、私たちが子どもとの言葉のやり取りをきちんとしていく。そこが基本なのではないでしょうか。私たちがお母さんに対して、きちんとした言葉がけと、きちんとした言葉の受けとめ方をしていくと、「気づく」ということが起きるのではないでしょうか。だから、保育者の態度、言葉遣いの影響はかなり大きいのではないかと思っております。

前川 多数の意見で、いまのテレビのギャグ番組といいますか、頭を叩いたり汚い言葉を使うのも影響がある、という意見が見られております。参考までです。

―乳児保育で担当制をとることが多いのですが、コミュニケーションを取る上で担任制とどちらがよいのですか。

前川 乳幼児は、なるべく特定の人と結びついてお互いの情愛の絆をつくったほうがいいんですね。ですから、ある程度決めていい場合のことがあります。以前、「タッチケア」の話で吉永先生が話された(ふたば69号参照)、ある保育園で問題行動のある方に、担任の保育士さんが昼寝のときに、タッチケアでさすったら、それで問題行動が治って、今度は昼寝もするようになった。だけど、その人が用があって休んでしまって、別の保育士さんがやったらダメだった。そういう意味から言うと、やはりある程度のことも必要なような気がしますけれども、ケース・バイ・ケース……。小林先生、どうですか。

小林 基本的に乳幼児期というのは、安心の源が「人」であるという概念で考えています。一番身近な安心の源は親ということになりますけれども、理論上、考えたら別に親でなくてもいいんですね。誰か、本当に安心できる環境を持てる人が近くにいてくれることが大事で、そういう意味で言うと、保育園の保育士さんはすごく重要な位置関係を持っていると思っていますので、できるだけ固定的な人間関係を大事にしていただくことが大切だと思います。
 ただし、現実問題として考えたときに、それは理想だけどできないというのがあるんですね。そういうときには、できるだけ少数のグループという形で考えていただけるといいと思います。つまり、一定の部分を二人ないし三人くらいで同じ気持ちでケアする。そこまでが限界だろうというふうに思います。ホスピタリズムの原型、一番のもとは、そこがとれなくて、いつも集団対集団でかかわっていくところで起きる問題性で、それがいまのネグレクトとかそういうものに発展していくのですけれども、それの原因になっていますので、担任制、担当制というのは大切にしていただきたいという思いは強いです。




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