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第二十四回 母子健康協会シンポジウム 保育におけることばの問題と対応
1 言葉の発達とその規定要因
白百合女子大学教授 秦野 悦子



やりとりを支える社会的基礎


 乳児期後半、さきほどから九ヵ月とか十ヵ月だとかと言っていますけれども、乳児期後半というのが、特に言葉を準備する重要な時期だということを、重ねてお伝えしたいと思います。生後一年頃まではまだ言葉は、出ている子どもも、そうでない子どももいます。けれども、子どもたちは、うなづいたり、首を振ったり、指差しをしたり、バイバイしたりという、限られた身振りや動作を使ったりしながら、豊かにコミュニケーションをつくっていきます。そういったジェスチャーは表情や発声と組み合わされて、複合的なコミュニケーションへと発展していきます。
 特に、言葉が出る前は、自分が行う動作に合わせて発声があるかどうか、たとえば、指さしして「アアッ、アアッ」とか、手をつないで歩いているときに「ウッ、ウッ」とか、物を渡すときに「アッアッ」と言うとか、コミュニケーションの動作に合わせて発声があるかどうかということも、次に続く言葉の発達の前兆となります。つまり、まだ意味ある言葉を使っていないけれども、コミュニケーションのときにいろいろな発声が出てくる、なんていうことが非常に重要だというところです。
 やりとりを支える社会的基礎は発達的に三段階に分けることができます。第一段階は乳児期前半であり、「聞き手効果段階」といわれます。この時期は、大人との二者関係を中心にしたものであり、子どもの自発的発声や行動に親が自分の行動を調節していくようなものです。第二段階は、生後八〜九ヵ月以降十二ヵ月であり、「意図的伝達段階」といわれます。この時期は、物を介して大人と子どもが交流する三項関係を中心としたものです。この時期は、指さし、提示、やりもらい、音声による呼びかけによるやり取りを含むコミュニケーションの成立にあります。第三段階は生後十二ヵ月以降であり、「言葉の段階」といわれます。この時期は、意味内容のあるコミュニケーションが行われ、乳児の感情表出や行動を大人が解釈していくものです。



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