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第二十四回 母子健康協会シンポジウム |
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保育におけることばの問題と対応 |
3 吃音など構音上の問題とその対応
国際基督教大学教授 栗山 容子 |
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吃音は遺伝するか? |
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親自身が吃音傾向を自覚しているような場合、子どもが吃音になるのではないか、どもりになるのではないかという強い不安を持つことがあります。
最近の研究から言えることは、幼児期の吃音には、吃音の出現に関与する遺伝子があるらしいということです。たとえば、両親とか兄弟に吃音がありますと、吃音がない場合の三倍程度、多く吃音が出現するといった研究があります。また、一卵性双生児、これは遺伝子が同じですね。一卵性双生児と二卵性双生児の吃音の出現率を見てみますと、一卵性のほうがはるかに多いということで、遺伝性が疑われるということです。
ただし、いずれも家庭環境が同じであれば、環境要因が影響している、ということも否定できませんので、慎重に解釈する必要はあるだろうと思います。
こういった素因論といいますか、これは遺伝だから、という考え方ですけれども、これが効果的な治療とか、あるいは矯正を否定するということであってはいけないだろうと思います。むしろ、原因が明らかになることによって、問題の対処がより的確になるということで、より効果的な指導の可能性が出てくるのではないかと思います。
専門的な指導を受け入れる心の準備 |
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最近の研究では、どもり始めたらすぐに治療を始めたほうが、症状が軽くて済むと言われますし、治療の専門家は、早期に発見して早期に治療を受けたほうがいいと言います。
ですけれども、そこはケース・バイ・ケースで、適切な指導の受け方をしていかなければ、いけないのではないかなと思います。治療に不安があるという場合には、特に心理面を配慮して、適切な指導を受けるということが必要になるかと思います。
いつ指導を受けるかということですけれども、私自身は、専門的な治療を受けてみようかという気持ちになる、心の準備ができる。やっぱり、放っておいてはいけない問題なのだ、ということを受け入れる準備ができたときではないかと考えています。特に幼児期の吃音の場合には、原因がはっきりしていないということで、指導したからといってすぐに効果があらわれるというわけでもありません。まず、周りの人たち、特に両親に対しては、こういった心の準備をするということに向けてのアドバイスが重要なのではないかと思います。
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