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乳幼児のshaken baby症候群
岩手医科大学医学部小児科学講座教授 千田 勝一


shaken baby症候群について (2)


5.予後
 本症候群の予後はよくない。約1/4が死亡し,生存例の半数が重度の後障害を残している。受傷後しばらく経過した頭部画像検査では,脳萎縮や脳室拡大,脳梗塞,孔脳症,硬膜下水腫がみられるが,この所見は様々な原因で起きるため,本症候群と診断することはできない。
 受診せずに死亡した例では,病理解剖を行っていても乳幼児突然死症候群と診断されていたものがある。また,突然死に至らずに生還した事態をapparent life threatening eventというが、この中にも本症候群が含まれていた。さらに,脳性麻痺,知的障害、てんかん、視力障害の中には、本症候群が診断
されずに含まれている可能性があると推測されている。

6.予防
 欧米では,幼い子どもの頭を揺さぶらないキャンペーンが,"Don't shake the baby(赤ちゃんを揺さぶらないで)","Handle with care(取り扱い注意)"という標語を使って行われている。

7.わが国の状況
 以上の記述は欧米の論文から引用したものであるが,わが国では1993年から2001年の間に本症候群が22例しか報告されていない。この理由は明らかでないが,欧米では児をしかる際にからだを揺さぶる習慣があり,これが一般に容認されていることや,わが国では本症候群の存在があまり知られていないことなどが考えられる。
 この22例の特徴を以下に述べる。月齢は2〜7か月で,受診時の主訴はけいれんが14例(64%)と多く,意識障害3例,心肺停止3例が次に多かった。硬膜下出血は全例(100%)に,網膜出血は記載がある21例中19例(90%)にみられた。この中に虐待疑いが7例(32%)いた。一方,虐待を示唆する病歴や身体所見がないものでは,「父が高い高いをした」が4例,「あやそうと揺すった」が4例いた。予後については,記載がある21例のうち死亡が6例(29%)で,虐待疑いのものに多い。生存例では予後に問題を残しているものが少なくない。




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