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第25回 母子健康協会シンポジウム 保育と食育
4 討議(3)



— そしゃくをマスターする期間は1歳半の臨界期までと聞いたことがありますが、やめない子(3歳以上)に対してでも、戻せば噛めるようになりますか。

加藤 臨界期についてはいろいろ言われています。例えば、1歳半ということですけれども、確かに一たん過ぎてしまったら戻しにくい臨界期というのがある半面、そしゃくの発達の遅れというのは、噛めないといっても、ただそしゃくの能力が遅れているだけだったのではないかというふうに、あとで思えば思えるような子どももいるのです。戻したというよりは、遅れている発達段階なりのものを与えれば、子どもにとって楽なのではないのか、というくらいの感じで申し上げたつもりでございます。
 発達の度合いは確かに子どもによってさまざまで、単にゆっくりめであることもありますし、本当に臨界期を過ぎている場合もございますが、まだ間に合うということがありますので、決めつけずに、いろいろなことをやってみていいのではないかなというふうに思っております。

— 働く両親が子どものコミュニケーションを夜に取り、就眠時間が遅くなるという話を聞いて、その親へ、どのような対応やアドバイスをしたらよいか、教えてください。

前川 これは、親子のだんらんをいつ持つかということで、普通の家庭ですと、幼稚園へ行く頃になると、だいたい子どもは早起きになります。それから、ほかに楽しいことが見つかりますので、帰ってくると、父ちゃんとは関係なく寝ちゃって、朝も早く起きちゃうんですね。ですから、乳児期、1歳半とか2歳ぐらいまででしたら、やはり親子の触れ合いが必要なので、それがいいことじゃないということを知っていて、おやりになったらいかがでしょう。それを無理に責めるというのはかえってマイナスだと思います。やはり親子のだんらんがいいですから。あとは、日曜日や何かの休みのときには、みんなで一緒に楽しい時間を過ごすとか、触れ合ったりなんかしたり、そういうことをしたらいかがでしょう。これが私の考えですけれど、どうでしょうか、先生方。夜遅くても、私はある程度認める方ですけれども、申し訳ないかな。

加藤 その話を弁護しますと、あるべきことを言わなければいけないという場面が多過ぎるので、私自身、苦しいのですけれども、「夜更かしはいけないよ」というデータをお示ししました。反面、私ども、前川先生にもすごく共感しているのですけれども、育児不安を少なくするように、なるべくお母さん、お父さんが受け入れやすい支え方をしていきたいなと思っています。早く寝せられない、どうしても夜更かしになってしまう場合、生活リズムのこととかあります。そのときに、早寝早起きをしなければならないよということを百回言っても、それはあまり意味のあることではありません。前川先生のいうところのセカンド主義です。

前川 そうですね。できる範囲でやればいい。

加藤 私は、これを使えると思って、子育て講座でしょっちゅう、もしかしたら無断で使わせていただいてしまったのかもしれません。大変気に入っています。
 つまり、ベストである方法を口やかましく言っても、それはお母さんたちにとって、抵抗されるばかりか、育児不安の原因になってしまいます。この設問を見ても、本当にまじめなお母さんばかりですので、あるべき姿を論じれば論じるほど、ノイローゼをつくるだけみたいなところがあります。ですから、現状は現状で、これはやむを得ないと認めた上で、セカンド。つまり、ベストではないけれども、次善の策として、どのようなことならば可能であるかということを、親と一緒に折り合いながら考えていくというスタンスをとるのが、支援の仕方のこれからではないかなと思って申し上げていることが多いのです。

— 偏食ではないのですが、母親の考えで蛋白質と脂肪を極端に制限している家庭があります。子どもは2歳児で、アレルギーではないのに、卵・牛乳は園の給食から抜いているそうです。兄弟が2人上にいますけれども、貧血、病気がちで、回復も遅くて顔色も悪い。子どもにとってはいいことだと思わないのですが、このような場合、どのように働きかけたらいいですか。ちなみに、この1カ月間で体重900グラム減っています。

大和田 個々の家庭の食習慣に不用意に介入することは、母親から反発されると思います。しかし、2歳の幼児で1か月に体重が900グラム減少したと言う事は問題でしょう。乳幼児期は、脱水でもない限り体重は減りません。そこで、集団保育の場で「食事過誤」を指摘されれば反発するでしょうから、最近、体重が減っていると言う事実と、幼児の体重減少は心配であることをお母さんにお話しして、小児科受診をお勧めになってみては如何でしょうか。

— 家庭で野菜をほとんど食べさせていない子どもの親に、どういうふうに指導したらいいですか。

大和田 「家庭で野菜を殆ど食べさせていない」との事実を如何にして把握なさったのかが不思議ですが、食べないから与えないと言うことなのでしょうか。本当に与えていないのであれば、保育所で、なるべく色々な野菜を多く使用してみては如何ですか。集団の場に入ると、子どもたちは競って食べることが良くありますので、摂取状況を観察して下さい。

前川 すごい信念で子どもに食事制限している人たちの取り組みは、今の身体所見、目方が下がるとか、そのことを問題にするのが一番いい方法ですよね。どうですか、加藤先生、今のケースだったら。

加藤 ちょっと情報が詳しくないのでわかりかねるところもありますが、やせ傾向があるとか、はっきりしていますので、親との信頼関係というのか、情報がどのくらい取れているかというのもあると思いますので、親ごさんに、それが問題だというのをいきなり言っていくような形だとかえって心を閉ざしてしまうと思うので、味方になってあげるような感じで、もうちょっと詳しく話を続けていく必要があるかなと思います。

前川 そうですね。何か問題があると、ついつい私たちは、悪いと決めつけてかかるんです。そうではなくて、どうしてそうしているかの理由をよく聞いて、相手の状態を受け入れて話しているうちにだんだん問題点が出てくるというのも、一つの解決の方法ではないかと思います。皆様、少しまじめで熱心過ぎて、どうかしてよくしよう、しようと思って、「野菜を食べろ」とか何とか言いますけれども、どうしてそういうことができないかというのを、生活とか何かお話を聞いて、「ああ、そうね、そうね、ごもっとも」と言ってるうちに、だんだん問題がわかってくることも一つの手だと思います。



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