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第25回 母子健康協会シンポジウム |
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保育と食育 |
4 討議(5) |
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— スプーンから箸への移行時期にいつ頃ですか、保育中にできることは。
前川 箸は早く持たせると、握り箸とか、ろくな持ち方をしないのです。それで、ある保育園で、幾ら子どもが箸を使っても、4歳とか5歳になるまで箸を使わせないのです。その月齢になったら箸を持ってこさせて、食べ方は上のお兄ちゃんが教えるのです。そうすると、子どもは簡単にまねします。
箸の使い方は普通、使えるのは4歳から5歳です。だけど、そんなに早く使うことはありません。箸の使い方は難しいですね。大人になってもうまく使えない人がいます。子どもは、お兄ちゃんになることがうれしいんです。保育園・幼稚園へ行く、箸が使えるというのが。それを一つの目標にして、例えば年中さんや4歳児で、箸がちゃんと持てるお兄ちゃんとかお姉ちゃんが指導して一緒に教える。そうすると、保育士さんたちが教えるよりもはるかに子どもは覚えます。それも一つのヒントです。 それから、箸の使い方もすごく個人差がありますし、その人の学習の体験もありますので、そういうことも、特に集団では一つのヒントになるのではないかと思います。
加藤 箸の使い方は難しいですね。特に際立って申し上げることもないのですが、最近の子が不器用になっているとか、そういったことも、どういうふうに考えていけばいいのかなというあたりで、箸も含めて、いろいろな経験を豊富にしてあげていくという視点は、保育所で補ってあげられるかなという感じはします。
お箸だけではなくて、ちょっと危ないですけれども、カッターなどの刃物やチャッカマン。火や刃物についても、子どもさんたちはきわめて経験不足になっていると思うので、それも含めて多様な体験という視点が大事かなというふうに考えることもあります。
— 父が入院した時、糖尿病の方があまりにも多いのに驚きました。糖尿病が原因で肺炎を起こしたりとか、敗血症とか、ぜんそくになったりということがあるので、そういう状況にならないために、小さなお子さんのときから、保育園児たちに、健康に過ごせるような、微力ながらそういうふうな働きかけをしていきたい。
大和田 日本では、2型糖尿病の頻度が高く、40歳以後、糖尿病合併症で失明、血液透析等を必要とする例が増加していますが、小児期に既に2型糖尿病が発症することも、先程お話しした通りです。そして、子どもの2型糖尿病の発症に肥満は大きな役割を果たしておりまた、2型糖尿病の家族歴を持つ場合が多いので、園児に糖尿病の近親者がいる場合には、幼児期から肥満にならないような、適切な食習慣をつける事が最も大切です。
— 太っている子にはどうしたらいいでしょうか。
大和田 太っている子どもは、(1)噛まない、(2)早食い、(3)甘い水(ジュース、イオン飲料など)を好むなどの共通点を持ち、保護者が子どもの食事に無関心な事も少なくありません。このような食習慣を幼児期から矯正できれば肥満予防に効果があります。
— 0歳児クラス、1歳7カ月で、朝食はクリームパン1個、リンゴジュース1本とかで、大変心配な子どもがいます。
加藤 保育所に通っていてよかったですね。これで家にいたら大変なことになっていたと思います。体格を拝見していないからわからないですが、このあと、昼食とかで野菜類、肉類でバランスがとれていれば、そんなに心配することはないのではないかと思いますが、家で何を食べているかということをもうちょっとよく聞いてもいいかなという感じもします。
— クッキング保育は、衛生面でかなり難しいのですがポイントと実践例を教えて下さい。
加藤 保育所に限らず、地域の児童センターなどで小学生にする場合でも、クッキング・イベントというのはかなり大変です。基本的に「つくる」というだけではなくて、いろいろな要素が入ってきます。健康教育、衛生教育、あとは安全教育です。刃物や火を使う。うるさいことを言えば、そこに入っていく職員の、ちゃんと検便の結果を確認しておいてとか、そういうことになってくることもあるかもしれません。
実践例としては、手づくりおやつとか、サラダとか、園芸と組にしたサラダとか、そんな事例が多いのではないかと思います。印象的には、あまり難しいことはしていない。つまり、準備や後片づけといろいろしなければいけないことがあるので、大したものはつくらない。準備や片づけも入れて教育の一環、取り組みの一環とすることも多いので、イワシの天ぷらのようなものをやるのは、保育所では無理で、小学校あるいは高学年に近づいた年齢のお子さんにやることが多いのではないかと感じております。
— 3回食は必要なんでしょうか。
前川 きのう、NHKのテレビを見ていたら、ユキヒョウというのは何日かに一遍ずつしか餌がつかまらない。人間は大昔1回だったのですけれども、子どもの場合は、大きくなるので頻繁に食べないとだめと、私は教わりました。だから、3時のおやつと10時のおやつがあると。子どもの場合は、ある程度おなかがすくときには夜食を与えてもいいという感じでいます。
加藤 考え方として全く同感でありまして、3回ではもたないですね。子どもは一度にたくさん食べられないし、新陳代謝や運動が活発なので、たくさん食べなければいけないので、基本的に3回に分けるのでは無理。食べきれないことが多いのが普通でありまして、したがって、午前の10時ぐらいと午後の3時ぐらいということになろうかと思います。
おやつ類は、実感として、次の食事のときにちょうど具合よくおなかがすくように上げるというタイミングのとり方が、一番わかりやすいのではないかと思います。次のご飯までにもたすぞと思っていると、その食事の1時間前ぐらいに、待ちきれなくなって何か食べてしまうというのが一番いけません。それをやると一番バランスが崩れるので、ちょうどいいタイミングに、あらかじめ次の食事を見越して食べさせておくというのが、一つ、いいことではないかなと思います。
特に保育所のおやつはすごい量で、それもちょっと先生方、日頃疑問に思われているかもしれません。お昼をどっさり食べさせたあと寝かせて、起きぬけにまたおやつをドサッと食べる。「これでいいのだろうか?」と思われている先生方も多いと思います。
規則で、カロリー量を1日の半分ぐらいを保育所で食べられるようにするというのがあるから、しようがないというのがありますけれども、お父さん、お母さんの帰りが遅かったら、その次にいつ食べられるかわからないので、今のうちということで食べさせておくというのはあるのではないかなと思います。
大和田 体重1キログラム当たりに必要な幼児期のエネルギーは、乳児期に次いで多いのですが、消化、吸収機能から考えると、それを1日3回に分けて摂取する事は困難です。ですから、おやつは幼児には大切な食事であり、年齢ごとに適切な量と内容を与えることが必要です。
前川 おっしゃるとおりですね。肥満の原因は、ジュースと、適当に食べる買い食いなんですね。面白いことに、ここ4、50年の間、日本人がとるカロリーは変わっていないのです。同じ2千何百カロリー。ただ、内容が変わっています。さっき、糖尿病とか成人の生活習慣病が問題になりましたけれども、何が変わったかというと、まず一つは、カロリーの中で、お米から来ている量が変わっています。それから、動物性の蛋白が増えています。あと、動物性の脂肪です。
極端に言えば、米穀協会のお米を宣伝するわけではないですけれども、お米をもう少し日常で食べて、油はオリーブ油などの植物油がいいですね。それから蛋白も、どちらかというと魚から、日本本来の豆類とか何かに戻されたらというのが、これから日本人が長生きする一つの秘訣だと思います。日本人の体質は、農耕民族で、ずっと今まで百万年単位で来ているので、日本人の体が粗食に耐えるようにできているのです。ですから、食生活だけ西洋にしてしまうと、西洋人なら当然耐え得る量の負荷で、それ以下の半分ぐらいで日本人は糖尿病になってしまうのです。だから、戦前とか戦争中とは言いませんけれども、ぜひ昔のような食事に戻っていただきたい。それが一つのコツではないかと思います。
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