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第25回 母子健康協会シンポジウム 保育と食育
4 討議(6)



— 1歳、2歳前後で、偏食というのか、わがままというのか、食事中、お皿をひっくり返したり、床に突っ伏したり、泣き出したりとかして食べないお子さんがいます。食べ続けさせることが大変です。食べたくなければ食べさせなくていいのでしょうか。

加藤 問題行動への対応について、このくらいの対応でいいという部分と、一例一例、もっと丁寧にというのと、2通りあります。いろいろな問題行動と思われるものの見極めのあたりではないかと思いますが、基本的に、前川先生が、「だいたいまじめ過ぎるよ」というあたりのことでいいようなところがかなり多いと思います。
 この他に、「1時間かけないと食べられない子がいますが、途中でやめようとしない」、「早食いで丸飲みをするようで、ゆっくり食べられない」、「4歳の女のお子さんで、野菜や果物を受け付けなくて、量を減らしたりとかして、いろいろ調理法などで工夫しているけれども、口へ入れてあげると吐き戻そうとして流し込んでいるようなことがある。お母さんはこれを困った問題として受けとめていないようです。食べることも、汚らしく食べるし、意欲があまり感じられないので、悩んでいます」などの質問があります。
 状況はさまざまですけれども、これらについて共通に言えることは、食べることに関しなくても、いわゆる子どもの時代の問題行動と思われるもの、つまり、親とか保育する側にとって、これは困った行動だなと感じられる行動の扱い方という意味で、ないほうがいいけれども、まあ、あるのも仕方がない行動というふうにとらえられる部分があると思います。
 これらの質問は、全部一緒にできるような感じではなくて、より詳しくかかわるほうがいいかなという部分も、多少差はありますけれども…。
 今、いろいろな育児プログラムが日本に輸入されております。私がオーストラリアから輸入しつつある、一つの育児プログラムの考え方というのは、問題行動は、ゼロでなければいけないということから出発しないで、あっても別にそれは成長の過程であるものだし、あればあったでそれなりのかかわりをしていけばいい。あることを問題とする発想からは別に入らなくてもいいのではないか、というふうに思います。
 いろんな育児プログラムがありますが、そのプログラムで私がちょっと面白いなと感じている点は、宿題みたいにして、あってもいいのだけれども、どのぐらいあったかというのを記録していって、少し冷静になって見てみよう。どんなときにそれが多いかとか、どんなときに少ないのかとか、そんなふうに自分で客観的に見てみるだけでも、だいぶそのことに関して冷静になれるというプログラムがあります。それを別にここでPRするつもりはなくて、こんな考え方をするのも、一つの楽にやっていける方法かなと思うという意味で触れているわけです。
 それが多いこともあるかな、少ないこともあるかなということで、例えば先生方でしたら、帰り際に連絡帳がありますので、「きょう、このくらいでしたよ」とか、書くチャンスがあると思います。そういうふうにちょっと一歩置いて観察することで、その問題行動の問題性についてキリキリしなくてよくなる。そういうことで、保育者もしくは保護者も、自分がその問題行動に対してどういうふうにイライラしているのか、自分がその問題行動に対してどうコントロールできているのかということも振り返っていける。
 基本は認知行動療法という精神医学分野のことなのですが、それはちょっとよけいなことなので置いておくにいたしましても、そんなふうに問題行動というのは、あってもいいけれども、それが多いか少ないかを見ていけばいいと、そういった、一歩離れて、一歩楽にして見ていく。
 なぜこんなことを言っているかというと、お母さん方も大まじめです。今日、お集まりの先生方も、お見受けすると若い先生も多いので、偏差値世代とかいって、まじめに育てられたお母さん……私も人のことは言えなくて、これでだいぶやわらかくなったと思っていますけれども、10年前は生きているのがすごく苦しかったです。今でこそ少し楽しくなってきましたが。だからこそ言うのですが、どうせまじめにやるんだったら、上手に、悩まないようなまじめなやり方をしようじゃないか、というのが私の今の若い方々へのメッセージです。
 だから、これがゼロでなければいけないといって悩むのをやめて、今日は多いな、今日は少ないな。少ない日もあれば多い日もあるな、少ない日も多い日もあっていいんだなと、客観的に自分を見つめられると、その行動に関してイライラしている自分を、感情的に処理ができるようになっていくのです。作業療法的な行動療法に基づいたプログラムなのですが、そういったものを考えて、いろんなフィールドの協力を得ながら、日本になじむものなのかなじまないものなのか、今、やってみています。
 これらの4つについては、かなりこの方法での接近が効果的かなという気がしたので、ちょっとご紹介しました。
 これらは、ゼロにしようと思ってむきになる必要はないのではないか。ただ、少ないときがどんな場合なのかということを観察によって知っていくのは、いいことなのではないか、というようなことが申し上げたかったわけです。



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