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第25回 母子健康協会シンポジウム 保育と食育
4 討議(8)



— 3歳11か月の小麦アレルギーの男子がいます。保育園では除去食を出していますが、殆どの野菜を食べようとしない。

前川 皆様からこのような食事アレルギーの制限食のことへの質問があります。卵とか小麦とか特異抗体というのがあります。特異抗体のスコアとそれの抗原性とは必ずしも比例しない。だから、食事アレルギーで何かを言うときには、必ず「お医者の診断を受けてください」と言うけれども、医者によってもまちまちなのです。どの医者を選ぶかによっても違ってくる。だから、中立的な本当のことを知っているお医者さんにかかってくださいというのがアドバイスです。極端に制限する人がいますので、気をつけてください。
 わからなかったら、小児アレルギー学会にでも聞けばわかります。「誰が正しいですか」って(笑)。医者同士では難しいことがありますが、だいたいやっていることでわかります。「何も食べられない」なんていうのはそういう人もいますけれども、極端な例です。

 食事に関しては非常に大切な問題ですけれども、少なくとも保育園、幼稚園に行っているうちは、それほど神経質にやらなくても大丈夫です。むしろ、それにかかわっている大人が、子どもがまねするようなことをしていれば、だいたいそれでうまくいくことが多いです。ただ、家庭のやり方というのは、こちらから口出せません。ただ、だんだん話しているうちにわかるということだと思います。
 それから、学童のカロリーとか食事の構成が、学校給食によって保たれているというデータも出てきている。そうすると、乳幼児の食事は保育園によってということにもなりかねないです。そういう意味から言ったら、きょう先生方がお示しいただいた、バランスのある食事はどうか、食育はどうかという、最低の楽しい雰囲気ぐらいはぜひやってほしいのです。
 養育者にぜひ伝えてほしいことは、食事中に子どもに絶対文句言わないでほしい。しょっちゅう会わない親ほど、貯めたものを全部、食事のときに子どもに言う。「あんた、学校でどうだった?」とか。そうすると、食欲以前の問題です。食物を見ると反射的に嫌になっちゃう。それも両親でやられますと、ダブルパンチです。せめて食欲とか何かは子どもが決めるものだからということと、少なくとも食事中だけは文句を言わないようにということで、ぜひやってほしいと思います。
本日は、どうもありがとうございました。(拍手)


講師プロフィール

前川 喜平(まえかわ きへい)
神奈川県立保健福祉大学教授、東京慈恵会医科大学名誉教授。
東京慈恵会医科大学卒業後、同大小児科教授を経て現職。1996年より母子健康財団 シンポジウム統括を勤める。同協会理事。
主な著書に 「小児神経と発達の診かた」(新興医学出版社)、「今日の診断指針」(共医学書院)など。

大和田 操(おおわだ みさを)
女子栄養大学大学院教授(小児栄養学)。
立教大学理学部化学科および東京慈恵会医科大学医学専門課程を就学後、慈恵医大小児科に入局、日本大学医学部小児科教室助手、米国NIH遺伝部門へ留学、日本大学医学部助教授(駿河台病院小児科勤務)、駿河台日本大学病院小児科部長、日本大学研究所教授を経て、2004年に現職。

加藤 則子(かとう のりこ)
国立保健医療科学院研修企画部長、厚生労働省食を通じた子どもの健全育成のあり方に関する検討会委員、厚生労働省健やか親子21評価手法検討会委員。
東京大学医学部医学科卒業後、都立築地産院小児科医、国立公衆衛生院母性小児衛生学部乳幼児衛生室、国立公衆衛生院母子保健学部乳幼児保健室長を経て、2004年に現職。
主な著書「子育ても仕事も捨てられない」(メディサイエンス社)「助産学体系9地域母子保健・地域母子保健と疫学(分担)」(日本看護協会)「助産学講座4小児の発育と発達(分担)」(医学書院)




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