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第25回 母子健康協会シンポジウム 保育と食育
4 討議(7)



— 園での給食は少し噛めばやわらかくなるように調理されています。小さい年齢の子どもたちにどのような食材をどのように与えるのがよいか。また、形の大きさ、かたさも、年齢に合ったものはどの程度なのか教えていただきたいと思います。

前川 私は、残念ながら、離乳食を自分でつくったことがないんです。だから、今から言うのは理屈だけです。
 初期の食事は、ドロドロでのみ込める固さですね。中期になったら、舌でつぶせる固さで、それから、歯ぐきでモグモグするようになったら、ツブツブで3回食の固さになる。調理法は、その固さであれば食材は何であってもいいといわれています。私の恩師がアメリカにいたときに、離乳食に牛肉を使っても構わないといわれた。日本ではそんなこと考えられないです。ただ、そのときの食材は、ドロドロにした状態だったらいいということです。今は、調理法によって変えることが多いので、食材によってはあまり関係ないということが一つです。
 それから、本当に大人のように噛めるのは、1歳半から2歳です。噛むという動作も個人差があるということです。ですから、その辺はそのくらいの気持ちでいいのではないかと思います。
 あと、これに関して、指しゃぶりとおしゃぶりの問題があって、さっき、うまく噛めないということが出てきました。指しゃぶりは3歳以上になってやると、咬合不全といって、噛むときにすき間ができてうまく噛めない。これだけは知ってほしいのは、指しゃぶりというのはおなかの中の赤ちゃんもやっていることです。自然の行為なので、ある程度子どもが小さいときには当たり前と受け入れているお子さんのほうが、外遊びができてくる2歳半から3歳になると、自然にやめられる。そうではなくて、それが悪いことだと思っていて、親が口うるさく言う子どもほど指しゃぶりが取れない。
 ですから、保育園でも幼稚園でも、指しゃぶりで親が相談に来たら、特に3歳以下だったら、「これは普通の行為で、心配がないことだから」と、むしろ認めてあげてください。そのほうがあとで問題が起こりません。これはいろいろなデータが出ています。
 おしゃぶりは、指しゃぶりほど害はないですけれども、1回にしゃぶる時間が長い、1日じゅうやっている。問題なのは、1歳を過ぎたら、タッグを取ってほしい。乳臼歯という、1歳半から2歳になると臼歯の小さいのが生えてくるんです。それからあとまで飲ませていると、交差咬合でうまく噛めなくなってしまうのです。ですから、とにかくタッグを取って、しょっちゅうしゃぶらないようにして、だいたい2歳までにはやめてほしい、これが歯医者さんの言葉です。
 人間の歯並びというのは、ある程度やめると、いいようにもとへ戻るのです。だけど、5歳、6歳までこれをやると、いろんな問題が出てくる。ですから、指しゃぶりは、長く続く可能性があるけれども、少なくとも3歳ぐらいまでは自然の行為として認めて、あとは自然に表へ出て、興味があれば取れるということです。おしゃぶりは、1歳過ぎからタッグを外して、1歳半から2歳ぐらいまでに。くっついてるとしゃべれないので、おしゃぶりのほうが取りやすい。
 それから、昔、母乳を飲ませていると、むし歯になる、歯並びが悪くなるというけれども、母乳は幾ら飲ませてもむし歯にならない。ただ、離乳食の残滓がついて、そこに母乳が残るとむし歯になる。だから、母乳を飲ませているお母さんがいて、「まだこの年になっても母乳を飲ませている」と言ったら、「いや、そんなことないんだよ」と。離乳食を与えたあと、歯磨きか歯の手入れをして、それからあと、夜、母乳を飲ませてもむし歯にはなりません。そのことを知っていると随分気が楽になると思います。
 それから、噛むという動作は、人間は噛まないと食物を食べられないですね。だから、ある時期になったら、ある程度固いものを噛む練習をしなくてはいけないのです。けれども、噛める噛めないというのは個人差もありますけれども、とにかく空腹です。おなかがすいていればどんなものでも食べる。その辺も一つのヒントかなというようなことです。

— 食そのものにものすごく固執している子どもがいて、自分のお皿とほかのお子さんのお皿を比較して、あの子のニンジンは幾つだったとか、スープの量で1ミリ高さが違っただけでも大騒ぎになったり、大変こだわる。ふだんは乱暴でないのに突然、あることに関して急に敏感になってしまうとか、ちょっとこだわりが強いのではないかということで気になっています。母子家庭で、兄弟もなく、家庭での本児の生活に大きく関係していて、母親との関係も良くありません。家庭での食生活にどの程度踏み込んでいくべきか悩んでいます。

加藤 こだわりというのは、難しい言葉で言えば、発達障害と今言われている疾患群の一つの症状であって、このお子さんがこれであるかどうかというのはこれだけではわかりませんが、家庭でのこのお子さんの生活の関与が大きいのではないか思います。母親との関係も良くなくて、母子家庭、兄弟なしというところを把握していらっしゃるということです。家庭での食生活にどの程度踏み入れていくか悩んでいらっしゃるということで、このようなケースは、お母様がかなり精神的に追い込まれている状態だというのが明白なので、これはもうちょっと個別にかかわっていく必要があるかなと感じました。
 児童虐待というのは極端なケースですけれども、子どもの対峙感情のことで悩んでいるお母さんは、3割は「100%かわいいとは思っていない」というデータが出ていますし、誰にでもあることです。誰にでもあることである以上は、サポートをしていくのが我々の役目だろうということになるわけです。このお母さんもそうですけれども、かなりはり詰めていますので、話を聞いてあげて、自分の心がほどけた瞬間には10人中10人が泣き出すような感じのケースだと思います。
 ですから、それが保育士さんであってもいいし、もしくは、保育士さんがつなげてくださったいろいろな相談窓口の方でもいいですが、このようなケースというのは、このお母さんが自分の思いを吐き出せる場所を探してあげることが、我々の務めではないかなと思うケースです。
 このようなケースは、たとえ虐待の疑いではないにしても、将来そうなることある得るので、このお母さんの気持ちを救ってあげるために、話せる場所を探してあげたらいいかなと感じた一例です。




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