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第26回 母子健康協会シンポジウム 保育における歯の問題と対応
3.母乳とむし歯、おしゃぶり、指しゃぶりの考え方
神奈川県立保健福祉大学教授
小児科と小児歯科の保健検討員会長
前川 喜平先生



イオン飲料とむし歯


 むし歯はここ20年来、確かに減っています。ところが、ここへ来て子どもの歯を見ていると、管理の良いグループと悪いグループがあって、悪いほうの群で、今までむし歯になり難い下の前歯がむし歯になっている子が多いことに、小児歯科の先生が気づきました。
 その原因の一つとして、イオン飲料が関係しているのではないかということです。どうしてイオン飲料がむし歯になるか。まず、テレビのコマーシャルで「イオン飲料は体に良い」とういので、お母様方は、子どもがのどが渇いたとき、お風呂から出たあととか、水代わりに飲ませるのです。めったやたらに飲ませるのです。
 ところが、問題が三つあります。一つはその組成が少し塩辛くできている。飲むと辛いから、のどが渇くようにできているのです。それから、糖が多い(5%)。それで甘くておいしいから、飲む習慣、癖がつく。もう一つは、pHが、さっき前田先生がおっしゃった歯の表面が脱灰する5.5どころではなくて、3.7から4.1と酸度が低いのです。それをめったやたらに飲んでいると、さっき言った理由でむし歯になってしまう。特に夜、寝る前に飲ませると、唾液の分泌が少ないのでこの傾向がいっそう強くなります。
 乳幼児ばかりでなく学童も同じように幼若の永久歯がむし歯になるのです。どうしてかというと、スポーツ練習をするとイオン飲料を飲むでしょう。そしてくせになり同じ理屈でむし歯になるのです。ですから、スポーツクラブの知っている人はスポーツ飲料を薄めて使っています。次は塾帰りです。塾の行き帰りにスナックを食べたりします。ジュースは甘過ぎるので、イオン飲料を飲む。だらだら飲みの癖がついて虫歯ができるのです。
 さらに悪いのは、私たち小児科医が、赤ちゃんが下痢とか、嘔吐したときに、点滴するほど重症でないときは「イオン飲料を飲ませておきなさい」と言うのです。それはいいのですけれども、そのときに、「よくなったらやめろ」ということはめったに言わないのです。お母さんたちは、テレビでもやっている、小児科の先生も言うというので、体に良いものとして飲ませて、その結果がこういうふうになるということなのです。
【表8】  対策(表8)をどうしたらいいかというと、乳幼児に対しては、極端に運動や汗をかいたとき以外はとにかく普通の水が一番いいのです。名水ではなくて、水道水で十分です。それから、イオン飲料を水がわりに飲ませない。もし下痢や嘔吐があって少し脱水があったときは飲ませてもいいけれども、よくなったらやめるということだけです。それから、寝る前とか風呂から出たときは水です。学童に対しては、チビ飲みだとか、やたらに持ち歩いて飲むことはやめさせます。
 イオン飲料とむし歯の統一的考えを公表したら、業者が組成を改善しました。イオン飲料が体にいいというのは特別な場合だけです。それだけ知っておいてください。




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