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第26回 母子健康協会シンポジウム |
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保育における歯の問題と対応 |
4.総合討論(1)
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前川 これから総合討論をおこないます。歯の問題を取り上げたのは、今回が初めてです。皆様のお顔を拝見していると、歯の問題なんて、みんな「ハア」という顔をしていらっしゃる(笑)。100%理解してないという顔なのです。そこで皆様から頂いた質問に答えるなかで、歯の問題の理解を深めていきたいと思います。
— 最近の新聞にアメリカの小児科学会でおしゃぶりが乳児突然死症候群(SIDS)の発生頻度を減らしたとありました。 3歳まではおしゃぶりは歯に影響がなければ、 使用した方がいいのでしょうか。
前川 欧米は子どもと添い寝をしません。乳児突然死症候群というのは眠りが深くなって起こるのです。おしゃぶりをやっていると眠りが深くならない。日本の場合は親がそばに寝ていますので、おしゃぶりは乳児突然死症候群予防の効果はほとんどないのです。むしろ母乳で、そばにいて見ていてあげたほうがいいので、日本の場合はアメリカのデータは役に立たないと私は解釈しています。ですから、母乳をやめておしゃぶりをやるなんて、とんでもないことです。意味が違うのです。日本は添い寝が得意ですから。そこのところだけを強調してください。
乳児突然死症候群というのは、原則として赤ちゃんで12カ月未満、一番多いのが4カ月から6カ月なのです。ですから、その頃はおしゃぶりをやっても歯並びには影響はないのですが、さっき、母乳で一緒に寝ているのだったら使う必要はないのです。
それから、粉ミルクでやっている赤ちゃんで、普通は寝ている赤ちゃんにおしゃぶりをしゃぶらせることはあまりないですよね。そのためにおしゃぶりを長く使わせるということは無意味です。3歳まではおしゃぶりが歯への影響が少ないのではなくて、3歳までもやってはいけないのです。2歳までにやめて欲しいのです。誤解のないように。3歳まで普通は使っています。3歳過ぎになると減るけれども、歯並びからいけば、乳臼歯が生える2歳過ぎから影響が出ますので、その前にやめるようにして欲しいということです。
— 粉ミルクと母乳では、 むし歯に影響があるのでしょうか。 またボトルカリエスは
井上 ボトルカリエスに関しましては、中のものがいろいろだったりするんですね。特にイオン飲料とか酸性飲料といいますか、pHの低い飲み物ようなものを夜寝るときに飲ませたりしますと、より影響が強い可能性があります。
そうすると、ミルクとか母乳よりもさらに液が酸だということで、酸脱灰といって、むし歯というよりは、酸によって歯が溶けるという現象も起きやすくなりますので、そういう意味では、酸性の飲料をボトルに入れて飲むことはより影響が強いことが考えられます。
ミルクに関しましても、ボトルで夜寝る前にずっと与え続けるとむし歯ができやすくなります。牛乳のほうが、粉ミルクよりは乳糖が少ないので、牛乳と母乳、粉ミルクで比べると、むし歯の発生がちょっと違うのです。そういう意味から、糖の分量、液体の酸性度などがかかわると思います。ボトルカリエスといっても、夜寝る前に与え続けることが非常に問題が大きいと思います。
— 3歳ぐらいまでは全くむし歯がなかったお子さんが、4歳、5歳になるとむし歯が急に増えてしまった。効果的な予防方法を教えてください。
前田 先ほど述べましたように、むし歯の原因というのは多数ありますけれども、主は糖であります。たぶん、3歳以後に急に、糖の摂取量、間食が増えたのではないかと思いますので、まずは糖の摂取状態を見ていただきまして、どのぐらいの量をどのぐらいの回数を食べたのか見ていただいて、それを減らす方向。そしてまた、口の中の手入れです。歯ブラシ等ができていないのは口の中を見ればわかります。きれいにピカピカに光っている歯なのか、汚れがすごくついている歯ということになりましたら、歯ブラシを行っているかということになると思います。
どのように指導すればいいかということですけれども、よく外来でお母さんに「子どもに歯ブラシを教えてください」と言いますと、「こうやってやるのよ」と、お母さんは一生懸命子どもさんに歯ブラシを教えるんです。なおかつ、やらせるんですね。ところが、自分がやらない。そうしますとお子さんは、楽しくないといいますか、結局やらなくなるのです。ですから、お子さんと一緒にやる。保育園の先生方も、お子さんと一緒にやるということになりますと、子どもは喜んでやるようになります。概して、お母さんが「やりなさい、やりさい」と言って自分はあまりやりないとか、そういうお子さんの場合にはなかなかやらないことがあります。
井上 歯磨きも、お子さんはマネしながら覚えるというところがありますので、みんなで、楽しく、そしてまた、親または周りの人がやっているのを見ながら、というところが非常に大きいと思います。
前川 それから、歯が生えたばかりで、歯ブラシを使わない前の歯の手入れはどうですか。
井上 まず、だいたい下の前歯から生え出すお子さんが多いですね。生後6カ月か7カ月、最初に生える歯というのは下の前歯が多いんですけれども、その時期というのは唾液がきれいにしてくれるので、それほど積極的に歯のブラシで磨かなければいけないという必要性はありません。ただし、そのぐらいから練習しないとなかなか慣れません。そういう意味では、歯が生える前からスキンシップの一環として、お口の周りを触ったり、口の中をちょっと触ってみたりするようなことをアプローチしておいて。歯が出てきたら、生えてきた新しい歯をちょっとガーゼで、ふいてあげるとかしてあげましょう。この時期の歯の汚れは、本当にお白湯を飲ませるぐらいでもきれいになります。
そのぐらいから、子どもの機嫌のいいときに、例えば歯ブラシを使って簡単にササッと磨いてあげたりとか、歯ブラシを自分で噛ませてみるとか、その感触に慣れるという段階をまず始める。そして奥歯が生えるのは1歳過ぎです。上の前歯とか奥歯というのはブラシでないときれいになりにくい歯なんですね。ですから、上の前歯がそろって、奥歯が生えた頃には、歯ブラシを使ったお掃除が必要になってくるので、そのぐらいまでに焦点を合わせて、だんだん歯ブラシを使った歯磨きに慣れてくればいいでしょう。
ですから最初のうちは、指で触ったり、ガーゼで簡単にふいてあげたりという段階から始めて、歯ブラシを徐々に慣らしていって、最終的には、1歳過ぎぐらいに、奥歯が生えるくらいまでに歯ブラシがうまく使えるようになれば、というような考え方で行っていただくとよろしいと思います。
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