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第26回 母子健康協会シンポジウム 保育における歯の問題と対応
4.総合討論(2)



― 歯磨き剤はいつ頃使ったらよろしいんですか

前田 私たちが小児歯科に残ったばかりの頃には、まだ歯磨き剤の中にフッ素を入れて云々ということがありませんでしたので、むしろ歯磨き粉は使わないほうが、使いますと口の中が泡だらけになってしまいますし、子どもさんが嫌がるんですね。歯ブラシは、機械的な刺激で、バイオフィルムといいますか、ベトベトを取るのが主です。それに歯磨き粉が入りますと、清涼感が増加するわけです。
 ところが、最近はフッ素入りが販売されて、フッ素の効果もあります。歯磨き粉は、量的には多く使う必要はありません。一般にはグリンピース大ぐらいと言われていますけれども、それも
井上先生が言われたように、ほんのちょっと使ってくださればいいので、歯磨き剤で歯をきれいにするということはないのです。むしろゴシゴシしたほうがきれいになります。泡が出ると、逆に子どもは、口の中が泡だらけで嫌がります。フッ化物配合歯磨剤というのは1000ppmF以下ということで非常に少なく、フッ化物量も0.25mgですので安心です。

井上 通常の量を使うのは3歳過ぎぐらいですかね。多少うがいができるぐらいの年齢になってから使われたほうが無難だと思いますし、それ以前でお使いになるのでしたら、通常の歯ブラシをしたあと、ほんの少量で歯をみがいてあげる。フッ素の効果を期待してということになりますと、終わったあとちょっと塗って、そしてまたふいてあげるぐらいの対応で、うがいができるぐらいになったら少量使うというのは結構だと思います。我々も、積極的に使いなさいということではなくて、お子さんがそのほうが歯ブラシに気が向くのだったら使うとか、フッ素の効果を期待したいのだったら使ってもよろしいでしょう、というお話をさせていただいています。

― イオン歯ブラシは本当に有効なのでしょうか

前田 我々もイオン歯ブラシを使ったことがありません。文献的に調べたところ、日本におきましては一つだけ、口腔衛生学会という大変権威のある学会の発表があります。そのデータを見ましても、有意差はありますけれども、明らかにイオン歯ブラシを使うとこんなにきれいになるということでもありません。データ的には差がありますので、決して意味がないということはありませんけれども、このイオン歯ブラシを使ったら落ちがすごくよくて、普通の歯ブラシは悪いということではありません。また、その雑誌も結構古いデータですので、最近、このほうの研究はそんなに出ていませんので、イオン歯ブラシでなければいけないということはないと思いますけれども、決して否定するものではありません。

― 保護者への歯磨きアドバイスでわかりやすい方法はありますか

前田 年齢、歯の萌出、歯の数、出ている数によって磨き方は違うと思います。基本的には、スクラブといいまして、こする感じで、それも強くこすらなくて結構ですので、こすっていくだけでも違うと思います。お子さんを寝かせてやるという方法がわりとやりやすい方法です。これは、お子さんを膝の上に寝かせて、上からやってあげる。そしてある程度興味を持ってきたら、一緒になって一、二、三とやってもらうと、お子さんも「お母さんがやってくれると楽しい」という形になってくると思います。

前川 コツは、泣かせちゃいけないんだよね、無理にやっては。

前田 そうですね。無理はいけませんね。

前川 楽しい雰囲気で、お母さんと子どもの触れ合いの中でやると続くみたいですよ。それを、親が目をつり上げて何が何でも「歯、きれい」と言うと、子どもは逃げていってしまいますから、そこは気をつけられたらいいでしょう

― 塗銀(サホライド)の有効性について教えてください

前田 これはかなり齲蝕を抑制できます。ところが、黒くなりますので、最近のお母さん方はあまり喜ばない傾向にありますけれども、年齢が低く、3歳未満でむし歯になった場合におきましては、押さえてやる治療というのはなかなか難しいし、一方で小児虐待とかそういうこともありまして、我々虐待するつもりはありませんけれども、頭も押さえて、足も押さえて治療するというのは、子どもにとってはやはりつらいものです。欧米においてはそういうことは児童の虐待ということで、全身麻酔を使いなさいと言うのですけれども、全身麻酔そのものもまた、お子さんの安全性を考えると推奨できません。そう思いますと、わずかな期間でもいいから、塗銀、サホライドを塗りまして、少しお利口さんになって、3歳以降になりますと、通常の歯科治療で、泣かないでいい状態で治療をすることが可能となりますのでその間、 用いると良いでしょう。

井上 1歳2歳のお子さんを、小児歯科専門医だといっても、泣かないで治療というのは本当に難しいです。腫れたり痛かったりという場合の治療ですと、やむを得ず押さえて治療するということもありますし、また、いま前田先生がおっしゃっていたように、場合によっては、手段として全身麻酔とかを考えることも確かにあります。ただし、その手前で、ちょっとむし歯ができたという段階で気がついた場合には、フッ素とか、特にサホライド、多少進行抑制の度合いが強いので、そういうお薬を塗って、進行を止めながら少し時間を待つ。子どもというのは、時間を待つことの意義というのはすごく大きいんですね。2歳では聞き分けがなかったお子さんが、3歳過ぎたらだんだんお話もわかるようになって、そんなに痛くないことだったらやらせてくれるという状況がでてきますので、その半年、1年の時間をもたせるというのは非常に効果があります。ただお薬を塗っただけではだめなのです。お薬を塗って、歯ブラシをして、口の中の環境改善をして、そして様子をみれば、サホライドというのは使い方次第でかなり有効性があります。

― 4歳児の外傷で、医者に抜けた歯を持参したのですが、様子を見ましょうと言われ、その後、かかりつけの歯医者で抜けた歯を入れたのにと言われました。

井上 乳歯の外傷に関しましてはかなり対応が難しい部分があります。特に1歳2歳、まあ、むし歯の治療も大変ですけれども、外傷で運び込まれたお子さんは泣いて騒いで、エックス線もなかなか撮れないという状況ですと、診断もなかなか難しいですし、的確な処置を選ぶのもなかなか難しいところがあります。ですから、かなり状況によって対応が分かれるのと、例えばめり込んだ歯を引っ張り出して固定したほうがいいのか、そのまま様子をみていいのかなどというのも、まだ学会の中で分かれている状況です。再度生えてくることもあるし、根が完成してしまうとうまく戻らないこともあるしとか、いろいろな状況がありますので、学会でもいろいろデータを積み上げて統一見解を出そうとしています。
 ただ、抜け落ちた歯をどうするかとか、折れた歯をどうするかとか、そういう基本的な対応としては、原則的なものでお話しさせていただきますと、抜け落ちた歯に関しましては、保存の状態がよくて歯の周りの状況が悪くなければ、また時間があまりたっていなければ、戻してみるのが一つの手です。
 ただし、ご質問の4歳過ぎで受傷した場合に、行ったら結構見解が違ったということですけれども、4歳ぐらいですとそろそろ永久歯の生えかわり、ために乳歯の根の吸収が起こる時期です。永久歯のほうを優先して考えると、無理に乳歯を残すより永久歯が生えやすくするという考えも確かになりたちます。
 ただし、生えかわるまでに最低2年ぐらいはあるので、その間、できれば乳歯を残したいという状況でとれた乳歯をもどして固定を考える方もいらっしゃいます。意見が分かれるというのは、いろいろな状況で、予後、経過も変わってくるので、統一した意見がなかなかないからです。昔は、乳歯は落ちたらそのままというのが主だったんですけれども、戻してみると意外と戻ることもあるし、そういう意味で再植といいますか、もとに戻すというのが考えられてきています。




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