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第26回 母子健康協会シンポジウム 保育における歯の問題と対応
4.総合討論(3)



― 落ちた歯をどのような保存液に入れて歯医者に入ったらようでしょうか

井上 唾液とか生理的食塩水とか、結局、体液に近いようなものが望ましいです。何を保存したいかというと、歯根膜といいまして、歯の根の周りの組織をできるだけいい状態で保存して、できるだけ短時間で戻すと、根がつきやすいという状況です。ですから、アメリカなどでは、学校の養護の先生が、歯種の鑑別をやって、どっちが外側、どっちが内側とか、そして抜け落ちたところは、ちょっときれいにしてそのまま歯を戻して、そして歯医者に行くというような対応をしているところもあるようです。
 結局、なるべく早くもとのところに戻すのがまず第一。それから、歯の根の部分をできるだけ乾かさないで、いい状態で戻してあげるというのが先決なわけです。何時間という時間の単位で、予後が変わってきてしまうと言われております。
 保存液を学校や園によっては既に備えているところもあります。けれども、実際には専門的なところから取り寄せる形になると思うので、園医の歯科医の先生にご相談して取り寄せてみるのもよろしいかなと思います。
 それから、逃げの策として、体液に近いものということで、緊急時で何もなければ唾液がやはりいいのですけれども、小さなお子さんの場合ですと、唾液に浸してといっても、のみ込んじゃったりすると怖いというのもあります。お母さんの唾液といっても菌の問題もありますので、生理的食塩水とか、体液に近いということで牛乳などが使われることが結構あると思います。水よりは、そういうふうな体液に近い液のほうがベターだということです。水道水でよく洗うなんていうのは避けたほうがいいことですし、乾かしてティッシュでくるんできてしまいますと、ティッシュの繊維が絡んだりということもあります。ティッシュでくるむよりは、いま緊急な場合に勧められているのは、サランラップでピタッと密封する方法で、乾燥を防ぐといわれています。
 ですから、あまり乾かさないで、きれいな状態で、できれば短時間でというふうなことで保存を考えていただくと、再植も考えられますけれども、乳歯の場合は年齢が高くなるほどに、生えかわりとの影響でそれをどうするかというのが変わってくるかなと思います。

― 歯ブラシのビデオはありませんか

前田 私も探してきましたけれども、子どもだけの特別な歯ブラシのビデオはございません。基本的にはやってもらえばいいわけです。それも、歯ブラシの大きさとかという規定もあることはありますけれども、四前歯、乳中切歯、乳側切歯という糸切り歯の手前の前歯が4本ありますね。その4本の長さが、だいたい歯ブラシの幅としては結構です。長さも、あまり長いとやりにくいですが、子ども向けの歯ブラシを買っていただければだいたいそんなふうになっています。歯磨き粉を使うことが主じゃなくて、基本的には「こする」ということだと思います。ペンホルダーか何かでやっていただけばいいので、ゴシゴシゴシゴシすることはないです。それで十分取れますから。
 これを毎日やっていれば、バイオフィルムといいますか歯垢というのはそんなにベタベタについていません。十分取れますので、それプラス、ある年齢になったらフッ素入りの歯磨き剤を使う。いま90何%の市販されているものはフッ素が入っていますので、それをわずか使えばいいんです。たっぷり使う必要はありません。何しろ子どもが歯ブラシを嫌がらない環境をつくるというのが大事だと思います。

― むし歯がなくてもフッ素塗布したほうがよろしいのでしょうか

前田 むしろ、むし歯がない段階でフッ素塗布していただいて、むし歯にならないようにしていただきたいということです。どのぐらいの割合かといいますと、フッ素塗布法というのがありまして、2%のフッ化ナトリウムを、年に3回ぐらい、3、4カ月に1回ぐらい塗っていただければいいという方法もあります。それから、少なくとも4歳以降になりますと、含嗽(うがい)する方法もあります。それは250ppmという低い濃度でうがいしてもらって吐き出してもらう。この効果もやはりあります。ただ、フッ素の効果は100%ではありませんで、疫学調査でだいたい30%です。ですから、これはすべて同じですがフッ素をやっておけばむし歯にならないのだということではありません。フッ素を使用すれば、または歯ブラシをすればということではなくて、先ほど言いましたように非常に多くの因子が絡んでいますので、すべてのむし歯にならない方法を使うことによって、初めてむし歯にならないというふうにとらえていただきたいと思います。

― 歯ブラシの方法はいろいろ変わりますが、保育園児は何法がよろしいですか

前田 いろいろな歯ブラシの方法があります。我々も覚えるのが大変なくらい数があります。特に成人になりますと、歯のポケットといいますか、歯と歯茎の間をきれいにする方法で、45度に傾けて揺らすとか、いろいろな方法がありますけれども、幼児の場合にはそんな必要はありません。1本だけ丁寧にちょこちょこっとやってもらえばいいので、特に裏側は、自浄作用、唾液が多い、舌がよく動くということでプラークがほとんどつきません。舌側からむし歯になるということはありません。我々も、歯の外側に物が詰まったときは舌を使いますが、お子さんはできませんので、汚れるんですね。だから、ここを丁寧にやっていただく。
 唾液腺開口部は下にありますから、下の歯は形態的に言ってもむし歯になりにくいのです。ところが、最近、むし歯になる子もいるということは、先ほど
前川先生のお話にありましたけれども。基本的には表面側なので、奥歯が出ましたら噛むところを磨いてもらう。それも特に決まった方法はそんなに考えないでください。何法を使わなきゃいけないとか、あんまり考えないことだと思います。

― 1歳半で、受け口と言われたんですけれども、お母さんが、歯医者に行ったほうがよいのかと気にしているのですが、自然に治るものなのでしょうか。それとも乳児のうちから治療するものなのでしょうか

前田 先ほど井上先生お話しになりましたけれども、乳歯が20本全部生えそろうのは2歳半以降です。その頃は、まだ子どもさんも噛み合わせが安定していませんで、前歯で噛もうとしますと、多くの子どもたちは反対咬合の形で噛んできます。ですから、成長範囲でも、1歳半では受け口だというふうに見えてしまう場合があります。ところが、乳歯が全部生えそろった2歳半ぐらいでもなるということになりますと、これは受け口であるという判断がつくと思いますので、1歳半の段階では、受け口だという子どものほうが正常であるということであります。
 また、治療するということですけれども、装置を入れて治すということになりますので、子どもの協力がなくては歯並びは治りません。そうしますと、3歳半以降になりませんと、幾らこの子は骨格的に見て反対咬合だと1歳半で診断したとしても、治療法としては不可能ですから、年齢がある程度いってからということになると思います。

− 不正咬合の場合は何歳くらいからの治療がいいのでしょうか

井上 乳歯の場合、個々の歯が傾いているということで治療することはあまりありません。永久歯に生えかわりますので、個々の歯のちょっとした異常というのは様子を見る場合が多いです。
 ただ、全体の噛み合わせで、反対の咬合とか、奥歯がずれて噛んでいるとか、そうしますと、あごの発育全体の方向性に影響を及ぼすことがあるので、乳歯の反対咬合や交叉咬合といって、脇のほうの噛み方の異常というのは、できれば乳歯の時期に改善してあげたほうがいいという対応です。噛み合わせが判断できるのが2歳半から3歳ぐらいですので、そのぐらいで診断しまして、お子さんの協力状態を見て、3歳から始めるお子さんもいれば、4、5歳まで待つお子さんもいらっしゃいます。
 装置を使った治療ということになると、お子さんの協力とお口の中の状態との兼ね合いになりますが、主にそういうあごの発育の問題を含めたものは、乳歯のときにやったほうがいい対応です。また、前歯が開いてしまっているという不正咬合の場合には、指しゃぶりなど原因をある程度コントロールしていくこともあります。




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