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特集 「急変する社会環境から子どもの心を守る」 |
こども心身医療研究所所長 冨田 和巳
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教育は生まれた直後から(栴檀は双葉より芳しい) |
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これから本誌第67・68号で述べたことと、基本は同じですが、切り口を変えて子育ての要点を述べます。子どもの家庭教育は生まれた直後から始まっています。感情のままに泣いたり、笑ったりしているだけに見える赤ちゃんが、種々のことを体験・勉強し、日々成長していきますから、親の責任は重大です。後年、心を病む、あるいは事件を引き起こす子どもは、どこかに矯正しなければならない素因をもって生まれているのですが、愛情溢れた普通の子育てを「両親」で心がけていれば、多くの場合、矯正されていきます。それは問題のある素因があっても、何らかの兆候は乳幼児期に気づかれますから、適切な対応ができ、少なくとも事件を起こすまでには絶対にならないし、障害も軽くなっていくのです。
「栴檀は双葉より芳しい」という諺は、一般に善い場合につかいますが、私は子育てで最初に銘記すべき諺で、むしろ悪い場合に当てはまるものと考えています。つまり乳幼児期から「何か臭う」場合には、それに注意し、難しいことをするより、常識的な「当たり前」の育児をするように心がけます。そして、自らの努力で改善の兆候がみられないなら、躊躇することなく、専門家に相談し、指示を受けるのです。紹介した事件でも、保母が気づいたことは、実際に親がもっと早くから気づいていたはずですが、認めたくない気持が先行し、教条主義で「男子はこうあるべき」を優先させ、重大な事件を引き起こすまでに増幅したと推測しました。
私は母親が家庭の外で働くことを否定しませんが、子どもと接触する時間が少なくなる上、忙しさからくる余裕の無さが、ここに述べたような育児をさせにくくしている事実は指摘しておきたいと思います。これを補うには、母親は当然として、父親や家族が十分自覚して、欠点を少しでも失くす子育てをしなければなりません。特に「育てにくい」素因をもっている子どもでは・・・・。フェミニズム思考では母親が家庭から出なければ「女性としての価値が低い」ように叫びますが、少なくとも子どもが小さい間は、まったく誤った考えで、子どもを不幸にしていきます。
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