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特集  「急変する社会環境から子どもの心を守る」
こども心身医療研究所所長 冨田 和巳



学童期でも遅い・・のでは?


 今年から特別支援教育が小学校から始まりました。これはこれで大切なことですが、更に効果をあげるには、幼児教育の場から実施しなければならないし、重要性を親に知らせなければなりません。「わが子を異常だとみたくない」のは当然ですが、早期発見・治療(指導・療育)はあらゆる場合に効果があると考えてください。もっともある公立の保育園で、保母が子どもの言動を気にして、専門機関の受診を親に勧めたところ、その親は市役所に「わが子を障害児扱いするような保母を市が雇っているのは怪しからぬ」とねじ込んだ例もあります。気になることがあっても、「個性的で結構」「活発で元気があります」「個人差があるので大丈夫」「成長するにつれて治ります」と無責任に言っておけば、自分に問題が降りかかりませんが、本当に子どもの将来を考えた発言ではありません。老子の言う「信言は美ならず、美言は信ならず」という言葉を、現代では噛み締めなければならないのですが、特に教育・医療・心理分野では「美言」が好まれています。その結果、専門家までが無難で文句を言われない、毒にも薬にもならないことしか言わなくなりました。大事なことを言わないのは、結果的に子どもを不幸にしていくだけでしょう。
 小さい頃に子どものことで気になることがあれば、早く専門家に相談すべきだし、子どもをみる立場の人は、正確なことを具体的に親に知らせ、その後の療育を考えなければなりません。
 もちろん、専門家に大きな責任がありますから、いたずらに親に不安を与える説明や、はっきりしないものを確定的に言うのは好ましくありません。一般的に障害や気になる性格は、低年齢ほどあいまいなので、親の性格に合わせて上手に説明し、継続して観察していく努力が求められます。残念ながら、適切な診断と継続した親指導に加えて、園や学校との緊密な連携をとるような専門家や機関の極めて少ないわが国の現実が、最も問題なのかもしれません。




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