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特集  「急変する社会環境から子どもの心を守る」
こども心身医療研究所所長 冨田 和巳



思春期では遅すぎる


 最初に述べたように、多くの報道や有識者は、「中学生が事件を起こせば、中学校に問題がある」と短絡的思考に陥っています。だから、どのような事件でも、その子どもが籍を置く学校の校長が記者会見をさせられるのです。明らかに親や家庭に原因がある場合でも、です。そして、校長も本当に思ったこと、すなわち「これは家庭教育の問題で、学校の責任ではない」と言わずに、あいまいな発言をするので、某新聞のように、見当違いな追及をします。こうして、学校は過剰防衛になり、基本的な問題をじっくり考えるより、表面を姑息的に取り繕い、中学生に大慌てで「命の尊さを教える」とか「心の教育」と内容不明のスローガンを掲げます。この悪循環が何らの根本的改善も対策もできずに、ますます状況悪化を来たしてきたのです。
 「鉄は熱いうちに打て」という諺もあるように、大切なのは生直後から乳幼児期、つまり学校に上がるまでですから、まして中学校では遅すぎるのです。子どもの素因を見極めながら、幼い頃に適切な躾や家庭教育(勉強を教えることだけが教育ではありません)を与えていく必要があります。その意味で、幼稚園や保育所の大切さは、家庭教育の機能が大幅に低下している現在、それを早期から補える点で特に重要ですが、残念ながらあまり重視されていません。




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