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こどもの慢性腎臓病
和歌山県立医科大学小児科教授 吉川 徳茂



小児IgA腎症の治療研究


 私共は小児期IgA腎症の早期治療法の確立を目的に、小児IgA 腎症治療研究会を創設し、1990年1月より全国の多施設による治療研究を行っています(図5)。
 各施設でIgA腎症と診断し、治療研究参加に同意いただいた患者は直ちに事務局に登録しました。事務局で腎病変の程度により、軽症の微小・巣状メサンギウム増殖群と重症のびまん性メサンギウム増殖群の2群に分類しました(図6)。
 重症なびまん性メサンギウム増殖の患者はは無作為割り振りにより、プレドニゾロン(副腎皮質ホルモン)+アザチオプリン(免疫抑制薬)+ヘパリン・ワーファリン(抗凝固薬)+ジピリダモール(抗血小板薬)による多剤併用治療群とヘパリン・ワーファリン+ジピリダモールによる抗凝固血小板治療群にわけて二年間治療しました。
 1990年1月から1993年12月までの四年間に78症例が登録され、治療研究がおこなわれました。
 治療終了時、多剤併用治療群では治療開始時に比し、1日尿蛋白量は著明に減少しました(図7)。一方、抗凝固・抗血小板薬治療群では、蛋白尿の改善は認めず、一例は腎不全へと進行しました。
 IgA腎症では、糸球体がつぶれて進行してゆきますが、つぶれた糸球体は多剤併用治療群では治療前、後で変化はなく腎臓病の進行を認めませんでした。一方抗凝固・抗血小板薬治療群ではつぶれた糸球体は治療前4%から治療後16%に増加し、2年間で12%の糸球体がつぶれ、腎臓病は進行しました(図8)。
 副作用の出現頻度は多剤併用治療群で25%、抗凝固・抗血小板治療群で15%で、大きな副作用はありませんでした。
 今回多剤併用治療を施行した40例では、現在までに(初回腎生検後12年目)腎不全に至った患者は1名だけです(腎不全進行率4%)。一方、多剤併用治療をしなかった患者では、8年目で28%、12年目で33%が腎不全に進行しています。
 重症な小児期IgA腎症の治療法としてプレドニゾロン+アザチオプリン+ヘパリン・ワーファリン+ジピリダモールによる早期の多剤併用治療は有効で、腎臓病の進行を阻止し、長期予後も著明に改善します。その後の治療研究から、プレドニゾロン(副腎皮質ホルモン)単独治療ではIgA腎症の進行は防止できないことがあきらかになりました。現在、より効果があり、かつ副作用の少ない治療法を研究中です。

小児IgA腎症治療ガイドライン
日本小児腎臓病学会では、小児IgA腎症の治療に関して、適切な判断や決断を支援し適切な医療の提供に役立つことを目的に、治療指針を作成しました(http://www.jspn.jp/)。

日本小児IgA腎症治療研究会治療研究方法
治療効果:蛋白尿こわれた糸球体



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