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第27回 母子健康協会シンポジウム |
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子どもが育つ保育 |
3.絵本の読み聞かせ 〜心の処方箋〜
吉村小児科院長・日本小児科医会常任理事 内海 裕美 |
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子どもの健やかな成長の四本柱 |
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「私は、子どもが育つには「四本の柱」が必要だと思っています。それは、眠ること、きちんと食べること、ちゃんと遊ぶこと、そして愛されていること。しかも、親が愛していると思っているだけではなくて、子ども自身が愛されていることを実感していること。親は「ものすごく大切にしている」と言うけれど、子ども自身が「自分は大切にされていない」という思いを抱えながら問題を出してくるケースが結構たくさんあります。この親子のすれ違いをどう調整していくかというところが、心の問題の解決の糸口になることが少なくありません。言いかえますと、子ども自身の問題ではなくて、かかわりの中で出てくる問題が非常に増えてきたということを実感しています。
どうしたら“自分が愛されている実感”を子どもたちに伝えることができるのだろうか。いまはとても伝えにくいです。モノが豊かになったので、昔のように、親が一生懸命白いご飯をどこかから手に入れてきて、子どもが、わあっ、すごいという時代じゃないですよね。何でもあるし、親が働いている現場を見てはいませんので、どこからかおカネがわいてくると子どもたちが思っても不思議ではないんです。何でも欲しいものが手に入って、親もそこそこ、愚痴は言うでしょうけれども、一円、十円稼ぐのがそんなに大変なことなのかというのがとても子どもたちに伝わりにくい時代ですから、親が一生懸命やればやるほど子どもはストレスフルになります。つまり大切にされていると感じるよりは、親の思いどおりにされているというふうにストレスを感じている子がすごく多いです。
そういう意味では親もそういう世代です。いま、お母さんたちで子育てに困っている人の中には、自分が愛されて育ったという感覚を持っていない人がいます。よく虐待の連鎖と言いますけれども、愛されていることの連鎖がうまくいってないんですね。母親になってまで、実の母親から、あんたはちゃんとした母親になっていないとか、子育てになっていないとか、ものすごく否定的なメッセージを受け取って、そういう人たちが、例えば保育士さんはよくわかると思いますけれども、あちこちから否定的なメッセージを受け取り母親としての自信をなくしている。そういう母親達が保育の現場に子どもを連れてくる。
だからいま、保育園が子育て支援の現場になってもらわないといけない。「情けないお母さんね」と言うよりは、お母さんのいいところを見つけてあげて、お母さんを支えてあげていないと、いまのお母さんは、ものすごく愛されて育ったとか、自分が自分でいいんだということがしっかりしていない中で子育てをしていますので、とても大変な時代です。
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