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第27回 母子健康協会シンポジウム 子どもが育つ保育
4.総合討論(1)



前川 それでは、総合討論に移らさせていただきます。
 皆様からの質問に答えていくなかで理解を深めていきたいと思います。 まず最初に、タッチケアに関することから始めましょう。

— タッチケア手技の図3をみますと裸の写真なんだけれども、裸でしなければいけないのでしょか。また2歳児、3歳児、4歳児はどうしたらいいでしょうか。

吉永 実際の手技のことについて触れる時間がありませんでしたので、そのことについてもお話いたします。多くの保育園では、洋服を着たまま、洋服の中に手を入れてタッチケアをしてもらっていることが多いです。新生児センターでもそうですし、多くのおうちでもそうです。ただ、洋服の中に手を入れて写真を撮っても見えませんので図は裸で出ています。さわり慣れ、さわられ慣れというのがありますから、最初は洋服の上、パジャマの上からでもいいと思いますが、やはり肌と肌のふれあいという意味では、下着の中に手を入れてやっていただくと理想かなというふうには思います。
 図2は、3カ月未満用の手技を紹介しています。頭を触れる、肩を真ん中から外へ、外から内側へと動く、背中を肩から腰までおりていって、また戻っていくということを3カ月未満の子ではよくやります。
 大事なことは、なるべく指と体の接触面を広くとって、少々プレッシャーをかけます。すりすりではなくて、ある程度の圧力をかけながらズリッズリッズリッズリッとやっていきます。
 図3は、元気で生まれた赤ちゃんたちの3カ月以降の手技です。この手技は、手先の遊びだとか、お腹を触れる、胸を触れるというところが出てきます。それを中心に私たちは指導していますけれども、私が今日お話をしました保育園でのタッチケア、それから障害児のタッチケアは、主に3カ月未満のやり方で行われています。要するに肩をさする、背中に触れる、背中をズリズリとマッサージをしながら、「好きよ、好きよ、大好きよ」と語りかける。
 どういうことかといいますと、タッチケアで触れて体の神経に刺激を与えて、本人の副腎皮質だとかいろいろなところに信号を送るという、ちゃんとした機序は一応報告されていますが、3カ月以降、ましてや2歳児、3歳児になってくると、さっきの絵本と一緒で、自分はとても気にしてもらっている、とても愛されている、受け入れられているということを、本人に信じてもらう作業だろうというふうに思っています。ですから、このテクニックだったら効果が薄い、このテクニックだったら効果が多いというさわり方とかいうものは、あまり気にしなくていいのではないかと思います。本人が気持ちいい、それから、やる人が無理をせずに本人に語りかけながらすることができる、そういうことを考えていただければ、あまり小さな手技にはこだわらなくていいのではないかと思っています。

— タッチケアをもっと詳しく知るにはどうしたらいいでしょうか。

吉永 タッチケアについて、普段しょっちゅうディスカッションをする場所がいまのところないんですね。タッチケア指導者講習会は東京で行われていますので、インターネットで日本タッチケア研究会のホームページを探していただいたら、講習会の話が出てきます。東京で参加していただけるとありがたいのですが、1年じゅうどこでもディスカッションする場所がないので、インターネット・ミクシィの中に私はタッチケアというコミュニティを立ち上げています。タッチケアという言葉ではたくさん出てくるのですが、その中に、お母さんと赤ちゃんの手が二つ重なったマークがついているタッチケアというコミュニティを、私の名前、「管理者よーちゃん」ということでやっています。(笑)よーちゃんのやっているタッチケアコミュニティで、全国の保育士さんたちとディスカッションをやっていますので、参加していただければ幸いでございます。

— アトピーとか皮膚疾患がある子どもたちにはどうしたらいいでしょうか。またオイルはどうしたらいいですか。

吉永 タッチケアがどんなにいいとは言っても、湿疹があったり、体に異常があるところに刺激を加えるのはいかがなものかと思いますので、やはり健康のほうを大事にするべきでしょう。むしろ塗り薬を塗ったり、タッチケアでズリズリとしない方法で、好きよ、好きよということを伝えていっていただければいいだろうと思います。「好きよ」と言うことの方法は、タッチケアでズリズリすることだけではありません。塗り薬を塗ったりする時間、おむつを替える時間などを使って、受け入れているよという信号が送れればそれでいいのだろうと思います。
 オイルの問題ですが、去年は、オイルを使ったほうがいいかどうか、それから、オイルは日本のお母さんたちに受け入れられるかどうかということが知りたくて、3施設で調査をしました。鉱物性オイル、植物性オイルを比較しまして、この2種類のどっちがいいかということは別にして、やはり無香料で純粋な、良質のオイルであれば、お母さんたちの感触も、子どもたちの様子でも、使ったほうがよかったという結果が出ています。
 ただ、アロマでどういうにおいがいいかという質問がときどき来るのですが、少なくとも相手が赤ちゃんであるときは、私は、お母さんのにおい以上のものはないというふうに信じております。どのにおいがいいかということを調査するつもりはさらさらなくて、いまでも、おうちのにおい、お母さんのにおい以上のものはないだろうと思っていますので、「無香料のものを」というふうにお勧めしているところです。

— 1歳児です。お昼寝の際に足をマッサージしながら寝かせようとすると、過敏に反応して笑い出してしまいます。マッサージ方法が悪いのでしょうか。それとも気持ちのいい場所があるのでしょうか。タッチケアを嫌がる子どもへの有効な導入法がありますか。

吉永 さわり慣れ、さわられ慣れというのがやはりありまして、タッチケアをこの子にしてあげるといいなという子ほど、普段さわられていないという子であったり、いろいろな家庭の問題があったりする。その子たちはえてして、最初にさわろうとすると、九州の言葉で言えば、「なんばするとやろか」(笑)、そういう感覚はあるみたいです。慣れない、くすぐったい。
 だから、最初はトントントンでいいと思いますし、絵本の読み聞かせをやるときに手を握っていたり、少しずつふれあいを増やす。最初1、2回やって、それから数回やってみてうまくいかない、だからこの子にはタッチケアがうまくいかない、ということではありません。回数をやることによって、ようやく手を受け入れてくれるようになったという子はたくさん経験します。最初から十分な時間べったりふれあいということは満足にできないかもしれませんが、そのことをぜひ覚えておいていただきたいと思います。
 ただ、図2,3にあるように、5分・5分・5分、で15分というふうに書いておりますが、10分だったら効果がないとか、17分やったら病気になるだとか、そういうことはありませんので、自分が好きなところを好きなだけやっていけばいいのだと思います。要は、触れられて気持ちよかった、触れて気持ちよかったということなのだろうと思います。図は、触れ方のヒントというか、ヒント集だというふうに解釈していただいて、私のオリジナルのタッチの方法よ、ということが生まれてくるのはウェルカムでございますので、そういう思いでやっていただければいい。さわり慣れ、さわられ慣れというのは本当にありますので、どうぞ、そのことをぜひ覚えておいていただきたいと思います。
 もう一つ加えますが、タッチケアをやってみてよかったということをぜひお母さんたちにも伝えてもらいたいのですが、うまくいかないことがあるんですね。小さい子が泣いたり、子どもが嫌がったり。そうすると、タッチケアはとてもいいものだよとお母さんに伝えれば伝えるほど、それができなかったときに、うまくいかなかったという失敗感が残ってしまいます。そうすると考え方によっては、タッチケアなんて教えてもらわなかったらこんな失敗感は感じずに済んだのに、という思いが残ることがあります。それだけは何とか避けたいというふうに思います。
 新生児センターでやってきたお母さんたちには、「いつもよりもさわってもらってきっと嬉しかっただろうね」という話だとか、「さわられ慣れがあるようよ」という話だとか、「我が子との時間が濃くなりましたね」だとか、何かプラスのイメージを持って帰っていただく。それから、先につながるような話をする。失敗感をお母さんに残さないということは、タッチケアをやる親子に寄り添う者にとってはとても大事な項目の一つだと思っています。



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