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第27回 母子健康協会シンポジウム |
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子どもが育つ保育 |
4.総合討論(2)
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— タッチケアを何歳までしたらいいのですか。
吉永 タッチケアを何歳までしたらいいのかよくわかりません。というのは、赤ちゃんのものだと思っていたのが、どうも赤ちゃんだけの問題ではないという話が出てきました。何歳まで経験が広がるのだろうと楽しみにしていますけれども、私の子どもは一番上は大学1年生の娘なのですが、その娘に私がオイルを使った全身タッチケアをしてやるといっても、娘のほうが嫌がるわけです。(笑)受け入れられている、気にしているよということを伝える方法としては、やはり変わってくるのだろうと思います。老若男女、それぞれの好み、いろいろなことがあって変わってくるのだろうと思います。
いろいろなふれあいがありまして、物理的に触れることの方法としては、例えばお母さんが娘の髪を三つ編みにしてみたり、親父が高校生の息子の尻をポンと叩いてみたり、肩をギュッとつかんでみたり、いろいろなふれあいの仕方はきっと変わってくるのだろうと思います。少なくとも保育園、幼稚園でのタッチケアということでは、いまのところ、3歳、4歳でも随分効果が見られることがわかってきました。
ただ、保育園に入ってきて、2歳、3歳の時からずっと触れることを続けている保育士さんは、その子に対して4歳になってもできるというんですね。ところが、今まで触れられていなかった4歳の子に突然始めようとすると、非常に抵抗が強いといいます。どうやらふれられることも、通常からふれられていないとなかなか受け入れられないのかなということが、最近、言われ始めています。ずっとその保育士さんにタッチケアをしてもらっている子は、「先生、先生、して」といって甘えることができるのですが、いままで何もされてなかった子が四歳になって突然、さあ、胸さわるよといっても、それは恥ずかしがって嫌がる。照れくささだとかいろいろなことがあるのでしょう。本当に嫌なのかどうかは難しいですけれども、簡単には受け入れられないということはあるようです。さわられていた子、それから、触れ合う関係をずっと持っていた人たちの場合で、何歳までできたかというのと、全くそういう機会がなかった子どもたちで何歳までタッチしていいのかというのは、恐らく違うような気がします。それはこれから見えてくることだろうと思うし、いまのところ、何歳が適当なのか、何歳まではうまくいくのかという正確な数字は私にはよくわかりません。
前川 私はいま73歳で、家内と二人で住んでいます。例えば家内に何かしてほしいときに、「何かして」と言うと、「嫌だ」と言われるのが嫌ですね。お互いにそうなんです。それで、近ごろは小人さんが出てくるのです。「今日、足さすってくれる小人はいないかなあ?」と言うと、「今日は疲れたからだめ」と言うんです(笑)。そうすると腹が立たないのです。家内も「後かたづけする小人いないかな?」と言うと、「いまテレビで水戸黄門をやっているからだめ」なんて言いますとね(笑)、喧嘩しないで済むのですね。ですから、ふれあいとか何かというのは幾つになっても必要なのです。それをいかにうまく相手に伝えるか。ところが、相手のことはこっちがわからないことが多いのですよね。ですから何かうまい方法をもってお互いに伝え合うことが、恋人にしろ、夫婦にしろ、会社でも何でも、必要なのではないかと思います。
— ウンチいじりの子どもの事例のその後を聞きたいです。成長とともにタッチケアの形も変わっていったりするのでしょうね。またいつか、続けてきたタッチケアの効果で素敵な少年または少女になったのだと思いたいです。
吉永 私もそう思いたいですが、さっきの子はその後、また手術が必要で小児ICUに入っています。実はまたウンチいじりが増えています。どうなるかなあと保育士も心配していて、帰ってきたら、またタッチケアをするんだというふうに言ってくださっています。
ほかに、今年の前川先生のところでの厚生労働省班研究の報告書に、また事例を幾つか載せさせていただきたいと思っていますので、見ていただければ幸いかと思います。
先ほどのミクシィの話ですけれども、1カ月くらい前に、そこでやり取りしている人たちと「タッチを語ろう・イン・東京」というのをしたんですね。要するに五人くらいで一緒に飲んだというだけの話なのですが(笑)、はじめましてとか言いながら、そこで、「私は保育園でタッチケアをやろうとしているんですけど、なかなかうまくいかなくて」という話だとか、「私は保育園の看護師なんですけど、いま保育士さんにお話をしているんです」という話だとか、「私は元看護師で、いまは1人のままなんですが、育児サークルでタッチケアを何とかしようと思っているんです」という話だとか、そういう人たちとやいのやいの言いながら楽しく飲んでいましたが、皆さんともそういう話を一緒にできる場が少し増えればいいな、楽しみだな、というふうに思っているところです。
前川 それでは、絵本の読み聞かせについてどうでしょうか。
— 先ほどご紹介された本の出版社を教えてください。
内海 すりすりももんちゃんというスーパー赤ちゃんは、『すりすりももんちゃん』とか、『ももんちゃんどすこ〜い』とか、『かくれんぼももんちゃん』とか、シリーズで童心社から出ています。『くまのこうちょうせんせい』は、いもとようこさんがつくられて、金の星社です。
それと、抱っこを扱った絵本ですがたくさんあります。私がよく抱っこを紹介するときに使用する、わかやまけんさんの『おんぶにだっこ』という本があります。それから『ふんふんなんだかいいにおい』というこぐま社から出ているロングセラーの絵本があります。それから、いま福音館が一生懸命出している「012絵本シリーズ」の『よくきたね』というのも、物理的な抱っこではなくて、自分の子どもが私のもとに「よく来たね」というのをいろいろな動物がやる。これは本当に1歳児、2歳児が、自分がよく来たねぇと言われているように嬉しそうに読む本なんですね。それを読み終わったあとに、何々ちゃ〜んと1人ずつ呼んであげて、「よく来たねえ」とやると、果てしなく楽しい時間が続きます。それから、こぐま社の『かみさまからのおくりもの』、これは赤ちゃんのいるお母さんたちにご紹介する本です。もうちょっと大きくて、気持ちの面の抱っこでは、PHPから出ている、内田麟太郎さんの『おかあさんになるってどんなこと』。
テーマをもって選ぶときは、本屋さんに行って選んでもいいし、インターネットで検索して、それを参考に実際の絵本を手に取ってご覧になってもいいと思います。
絵本のリストは『子どもに読み聞かせたい50冊の絵本』(ひとなる書房)とか、『絵本のあるくらし』(吉備人出版)とか、『小児科医が見つけたえほんエホン絵本』(医歯薬出版)という本も出ています。こういう本はたくさんあります。それから、グランママ社から出ている0から1歳までの『赤ちゃんに贈る絵本ガイドブック』、もうちょっと年長の3歳から5歳くらいまでの『子どもに贈る絵本ガイドブック』という小さな本もあります。それぞれの絵本の書店から、おすすめ絵本みたいなリストが小さいカタログで無料で出ていたりもしますので、そういうものから実践を通して選び出して、うちの保育園のおすめめリストみたいなものをつくられると楽しいと思います。
— ゼロ歳児への絵本の読み聞かせに対してどのようにお考えですか。
内海 楽しい時間が過ごせるなら、ゼロでも五歳でも17歳でも構わないと私は思っています。ある書物では、四カ月の子がもう既に絵本を喜ぶよというのがあるんですね。例えば1カ月、2カ月の子は、ゼロでも、日齢1週間目でも、身近のいつも世話をしてくれる人が、「あら、おむつ濡れたのねえ」と声をかけただけで、一時、ちょっと泣きやむわけです。そういうことのかかわりの中に絵本があります。赤ちゃんがどう見ているかわかりませんが、目の色の識別だとか、マルをマルとして認識しているのかどうかとか、そういうことはわからないけれども、大好きな人が何か自分にしてくれているということはわかるわけです。相手のあることですから、赤ちゃんに読み聞かせをして、その子が全然嬉しそうな顔をしなければやめればいい。ただ、お兄ちゃんが読んでいたそばに赤ちゃんがいて、一緒にウーアー言って楽しそうにしているという状況はたくさんあります。それから同じゼロでも、3カ月の子と、いまのゼロの終わりはほとんど1歳になっていますよね。8カ月くらいでも、おうちで常に楽しい読み聞かせをしている体験のある子は、私が保育園に行ってある子を膝に乗せて読み聞かせを始めると、対面で聞くということではなくて、ひょこっと膝に乗ってくるんですね。自分の好きな絵本を戸棚から持ってきて、「読んで」といってズラーッと並んで待っていますから、ゼロといえども絵本は大丈夫です。
ただ、月齢に合わせた離乳食がありますが、食事と同じように月齢とその子どもに合わせた好みのものをどうやって選んでいくかという、絵本のリストはたくさんあります。けれど、実際にやってみないことには誰にもわからないです。このクラスはこの絵本が好きなんだとか、この子はこの絵本が好きなんだということをどう把握していくかということは、関係の中で生まれてくるものです。
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