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第27回 母子健康協会シンポジウム 子どもが育つ保育
3.絵本の読み聞かせ 〜心の処方箋〜
吉村小児科院長・日本小児科医会常任理事 内海 裕美



意図的に、計画的に、真剣に


 自分たちがその絵本をとったときにどんなことに気づくか。それぞれの先生たちの「気づき」があって、1冊の絵本が百通りにもなる。それから子どもを相手にしていると、同じ絵本なのに、子どもとのかかわりの中でこんなに違うのかというようなとても楽しい世界が広がりますので、ぜひぜひ、保育の現場では、意図的に、計画的に、真剣に子どもに向き合った形で絵本をそろえて、ぜひ勉強していただきたいと思います。
 私は絵本にかかわって、新しいことをどんどん学んでいくというものすごく楽しい世界が広がったので、ぜひ子どもたちにも。聴診器を持って行ってわかることと、絵本を持って行ってわかることは全然違います。聴診器を持っていってわかることももちろんありますし、それは必要最低限、園医としてしなければいけないことですけれども、絵本を持っていって知ることのほうが、いまの子どもたちにとっては必要なのかなというふうに感じています。
 私は自転車で絵本を5、6冊持って保育園に行くのですが、卒園した子たちと途中で出会ったとき、「今日は何を読んであげるの?」と子どもたちから必ず声をかけられます。たぶん、聴診器だけ持っていったのではそういう声がけを子どもたちはしてくれなかったと思います。そういう子どもたちが思春期になって何か困ったときに、小説や音楽も宗だと思いますが、「あっ、あの絵本のあの言葉が僕を助けてくれた」とか、そういう思いがきっとあると思うんですね。年長さんになればなるほど、読みの深い絵本もあります。年長さんになると字を拾って読むようにもなりますけれども、ぜひ、読んで聞かせる絵本、それはかかわりをつくっていくということで、字が読めるからもう自分で読みなさいということではなくて、自分で読む本と読んでもらえる絵本。両方ともいくつになっても大切です。うちの息子は、小学校六年生まで読み聞かせをしていました。この本はママが読む本と決めているんです。『ナルニア王国物語』なんていうのは「ママが読んで」と。自分は『ハリー・ポッター』のこんな分厚いのを読んでいるんだけど、ナルニアは、毎晩毎晩、私が読んで聞かせていました。
 そういうことが、思春期に問題を起こすか、起こさないか。それから、何か困ったときにその子が踏みとどまることができるのか、違う方向へ行ってしまうのか。一つの大きな役割を果たすと私は思っています。ぜひぜひ、保育の現場で絵本を有用に使っていただきたいと思います。日本は絵本がたくさんある国です。これを活用しないのはもったいないと思いますので、それぞれの保育の中に織り込んでいただいて、保護者の方にもこういうことをお伝えしていただいて、ゆったりとした親子の時間を持つようにしていただけたらいいなと思います。(拍手)

前川 ありがとうございました。



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