母子健康協会 > ふたば > No.72/2008 > 季節と子どもの病気 > 3.救急よりみた子どもの傷病 > 小児救急医療現場で遭遇する主な子どもの傷病 3
第28回 母子健康協会シンポジウム 季節と子どもの病気
3.救急よりみた子どもの傷病
北九州市立八幡病院副院長・小児救急センター長 市川 光太郎 先生



3.内科的中枢性疾患 ― けいれん

 次は頭の病気、と言ったら変ですけれども、中枢性疾患と呼んでいますが、救急車を呼ぶ率で高熱に次いで多いのがけいれんです。けいれんは、熱があるときの有熱性けいれんと、熱のない無熱性けいれんに分かれます。現実的には有熱性けいれん、俗に言う熱性けいれんがほとんどですけれども、非常に多い。これは当然ながら、園でも経験なさる方、あるいは既にたくさん経験された方がおられると思います。
 熱性けいれんは家族歴が強いというところがありますので、お父さんあるいはお母さんに、園に預かるときに家族歴として聞いておられたほうがいいのではないかと思います。多くは1、2歳あるいは2、3歳が発症のピークです。熱性けいれんというのは熱が出始めて24時間以内にほとんど起こりますので…0歳児は36時間ぐらいたって起こる方もおられますけれども、多くは24時間以内です。逆に、熱が出て3日目でけいれんといったら、これは熱性けいれんではなくて、脳炎とかほかの病気を考えないといけないことになります。
 恐らく、朝来られたときには熱がない状態で、昼から熱が出て、家族に連絡して待っている間にけいれんが起こったと、そういうことが起こり得るかもしれません。そういうけいれんのときにはどこを観察していただくかということですけれども、まず、熱を測っていただくことが必要ですけれども、けいれんの時間、何分間続くのかということと、けいれんのタイプ、左右対称性にけいれんが起こっているのかどうか、目がどっちを向いていたか、顔が真っ青になったとか、そういうところを十分観察していただきたいと思います。
 けいれんが起こったというだけで、尋ねても、多くのお母さん、多くの保育園の先生が、「目は見てません」とかいう感じで返事が返ってくるということが多いですので、そういう点を見ていただく必要があります。また、けいれんは数分で止まって、もうよくなったんじゃない?とか半信半疑の方が多い。本当にけいれんがとまったのか、けいれん後の睡眠で眠ってしまったのかの判断は、「知っておくと便利なポイント」(表6)の二つ目に書いていますけれども、救急救命士もよく間違えてきます。「先生、もうけいれんは止まっています」と電話がかかってきて、着いたら、まだけいれんが続いてたり反復したりとか。救命士もまだ教育が足りないのですけれども、現実的には、瞳孔をぜひ見ていただいて、普通乳幼児の場合、瞳孔は4ミリ前後ですので、それぐらいだったらもう大丈夫。それが6ミリとか開いていたら、まだけいれんが起こっているかもしれない、あるいはけいれんが起こっているというふうに判断していただいて、迅速に病院に運ぶ。あるいは救急車を呼ぶということでも構わないと思いますけれども、そのようにしていただきたい。

  • 一般的には発熱の有無に関係なく、けいれんが5分以上持続する場合には救急受診(救急車要請も可)を行うべき
  • けいれんの持続があるか否かは瞳孔径で判断する。散瞳していれば、けいれんは持続していると判断する
  • 熱性けいれんは熱発24時間以内に起こることが殆どで、逆に熱発2日目以降にみられる有熱性けいれんは中枢神経感染症などを考えるべき
  • 髄膜炎において、身体所見での判断は低年齢ほど困難であるが、頭部〜頸部を動かすと嫌がるかどうかは重要な所見である
  • 髄膜炎などでは乳児では大泉門が膨隆することも少なくないので日頃から触っておく
  • 1歳未満での熱性けいれん初発の場合や親や兄弟に熱性けいれんの既往がある場合は反復しやすい

表6 知っておくと便利なポイント(内科的中枢性疾患)

 もし、けいれんのお薬の指示があって、座薬を使ってそれが効いたら、瞳孔は逆に二ミリとかいうふうに縮瞳します。そういうところを我々はよく見て、薬を使っても瞳孔が縮まないと、これは大変だという形で、救急の場では内心冷や汗、何か変な病気だったら困るとか、そういうことを考えることが多いですね。是非瞳孔を見ていただければと思います。現実的にけいれんが5分以上…それ以上観察するというのは至難のワザですので、一般のお母さん方にも言っていますけれども、5分たったら救急車を呼ばれてもいいのではないでしょうか。園でもそういう対応でいいのではなかろうかと思いますし、救急車が到着してけいれんが止まっていれば、それに越したことはないということで、割り切っていただいていいのではないかと思っています。
 それから、けいれんを起こす病気に髄膜炎という病気があります。先ほどからウイルスとかありましたけれども、エンテロウイルスという夏場に流行るウイルスは、ウイルス性、あるいは細菌ではないという意味で無菌性髄膜炎というのを起こします。右から左にうつる病気ではないんですけれども、その年その年で、エンテロウイルスの種類で、ある種類が流行ると髄膜炎が非常に多いということがあって、同じ園から何人も髄膜炎で入院するということが起こる場合があります。
 髄膜炎が右左にすぐうつるというわけではありませんので、それはあまり心配なさらなくていいんですけれども、私の経験上では、3歳〜5歳、6歳で、ちょっと熱があっても元気がいいからとかいって夏場に保育園、幼稚園に出される。そうすると子どもというのは暴れてしまって、不必要に体力を消耗して髄膜炎になるわけです。きちっとした数字はとっていませんけれども、圧倒的に言うことを聞かない男の子が多いですね(笑)。そういう印象を持っています。
 もちろん、三カ月未満でもそういうことが起こるのですけれども、なぜか0歳の後半とか、1歳の前半でウイルス性髄膜炎というのは非常に少ないです。1歳前後はウイルス性髄膜炎というのはあまり考えられなくていいと思いますけれども、その代わりにインフルエンザ菌という細菌による髄膜炎があります。いま、5歳以下の子ども人口10万人に、日本は大体7、8人に発生していると言われて、この春からようやくインフルエンザ菌のワクチンが市場に導入されます。ただ、任意接種ですので、しかも三種混合と同じように4回ほど打たないといけないということで、どれだけ打っていただけるかというのが心配ですけれども、我々救急をやっている人間でこの病気を見逃すと、非常に問題になる、と言っては変ですけれども、「なぜ?」というふうに家族から責められますし、早くワクチンが浸透してほしいし、九割、十割という形で打っていただければ、本当に我々救急の仕事は楽になると思っています。死亡する方もおられますし、かなり強い後遺症を残す方もおられます。
 インフルエンザ菌による髄膜炎というのは、韓国や米国はワクチンがとっくの昔に導入されていて、過去の病気と言われています。それぐらい日本は立ち遅れているので、もしそういう機会があれば、ぜひとも、皆さんからも家族へ「したほうがいい」とおっしゃっていただければと思います。当然、ほかの先進国では使われていますので、副作用的なこともあまり考えなくていいのではないかと思っています。
 そういう内科的な頭の病気というのがありますが、ときどき、けいれんが皆様の目の前で起こる。起こったときの対処方法というのは、けいれんですので筋肉が硬直しますから、いわゆる呼吸をする筋肉も硬直して呼吸ができにくくなるということで、衣類を緩める。しかも、けいれんのときには吐いたりしやすいですから、横向き、昏睡体位と言っていますけれども、右側臥位にして様子を見るという形をとっていただく。そしてバンドを緩めるとか、上着のボタンを外してあげる、風の通るところに寝かせてあげる、そういうことが必要になります。



母子健康協会 > ふたば > No.72/2008 > 季節と子どもの病気 > 3.救急よりみた子どもの傷病 > 小児救急医療現場で遭遇する主な子どもの傷病 3

事業内容のご紹介 協会の概要活動の概要設立の経緯協会のあゆみ健康優良幼児表彰の歴史
最近の活動のご紹介
小児医学研究への助成 機関誌「ふたば」の発行シンポジウムの開催 Link:Glico